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覇王リュミスの手記  作者: デブ猫
3/4

2.覇王の特製手ごねハンバーグと特製ミンチの人間詰

残酷な描写あり

「ペッタン、ペッタン、フフフフ。

 たくさ――――ーんのお肉でぺったんぺったん。

 つぶして、こねて、ぺったんぺったん♪」


ご機嫌な歌声が響くその場所は死臭で満たされていた。

少女の歌声は、引き起こした惨状とは不釣り合いに流れ、手のひらに収まるサイズのミンチが陽気なリズムを奏でていた。


「おねーさまの言ってた通り、人間界って家畜小屋ね。

 お肉がいっぱいいるんだもの。 フフフ」


その言葉に悪意は存在しない。

これはあくまで彼女が感じ取った人間界に対する第一印象でしかない。

彼女は純粋に、ただそう感じただけであった。







人間界の破壊というお馬鹿な目的を掲げて、いざ行動を起こしたリュミスであったが、当然の事ながら人間界までの移動手段を知る訳もなく、城にあった世界図でおおよその方角を割だし飛び立ったのであった。


勿論、こっそりとである。


こっそりと人間界に行って、こっそりと人間界を潰し、こっそりと戻って来る。


そしたらどうだ? 


フフフ、おねーさまは喜んでくれるよね。


リュミスの計画は完璧だった。

彼女の頭の中では既にエリスに頭を撫でてもらいドヤ顔を決める己の姿が出来上がっている。

後はそれを実現させるだけだった。


リュミスにはそれを実現させる自信がある。

魔王から受け継いだ絶対的な身体能力、そしてドラゴンとしての傲りが計画の完遂に明確なビジョンを与えていたのである。




と、そこまでは良かったのだが……


無計画に飛び出した結果、リュミスを襲ったのは途方もない距離の飛行とそれに伴う空腹であった。




どれくらいの距離を飛行してきただろうか…… もうリュミス自身にも分からない。

空腹はリュミスの幼い心を確実に削り取っていた。



引き返したい…… でも、今から引き返したところで……



既に魔界からも随分と離れた位置にいるらしく、町や村といったものは見当たらない。

それどころか、今飛んでいるのは延々と続く砂漠の上であった。



食べ物らしきものは見当たらない。 どうしたら……





お肉の匂いに気が付いたのは、そんな時だった。







そこは人間界の最果てにある最後の休息地。

嘗て勇者達が幾度となく訪れ、魔界に向けて旅の準備を行った場所。


現在では砦が築かれ、魔界からの侵攻をいち早く察知する為の重要拠点として、幾人かの兵が配備されていた。



が、今は…… 場にそぐわぬ美少女が鼻歌を響かせながら腕を振るう調理場と化している。

材料は……



言わなくても分かる事だろう。





「ペッタン、ペッタン♪

 …… これで良し! 後は焼いてー♡


 あ、そうだ! 忘れてた」



ご機嫌な声が、調理場の隅で震える兵の方へと向かう。

そこにはまだ生存を許された兵が震えていた。



「ねぇ、出番だよ♡」



驚くほど可憐な少女の手に、先程まで同僚だったモノの成れの果てが握られていた。



「ひぃーーーーーーーーー!」



兵は豚の様な悲鳴を上げて後ずさるが、少女がそれを許さない。



「だ―め。 これを食べて貰わないと」



彼女が何を言っているか分からない。 正気なのか……

いや、正気ならこんな惨状を引き起こさないだろう。



「さあ、 はやく」



分かるのは、逆らうという選択肢は既に無い。 という事。

何故なら、先程まで共に戦った友の成れの果てを見てしまっているから……



狂いそうだった。

狂ってしまいたかった。



兵は、徐に友だったモノを手ですくい上げると……




………

………………………

………………………………………………




「もう、 むりです…… これ以上は……」


兵は少女の特製ミンチを食べ続け、そして限界に達していた。

嘔吐感に耐えながら食べ続けた結果、兵は腹が破れそうな状態まで追い詰められていたのである。


その様子を傍で観察する少女。

彼女は優しく微笑むと「よくできました」と兵を優しく褒めた。


















「ギャー―――――――――――――――――――! ゴボゴボッゴッボ!

 アヅイ! た、すけ、ゴッボ!」



厨房に悲鳴が響く。


人が水の中でもがく音と共に、熱せられた湯が激しく泡立っていた。


不自然な形で宙に浮く水の…… いや、熱湯の中で、兵はもがき苦しみながら最後の叫びを上げている。



――― ジュルリ。


少女はそれを眺めながら舌なめずり、ここにリュミスの手料理が完成したのである。







リュミスは空腹を満たすと次を思い浮かべる。

少女にとって人間界とは、やはり姉の言う通り家畜小屋でしかなかったのだ。

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