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覇王リュミスの手記  作者: デブ猫
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1.覇王と美しき姉君

覇王をの物語を口にするなら…… やはり、彼女自身について語るべきだろう。



覇王…… 当時は次期魔王候補筆頭か。

魔王グラニケスとその側室であるドラゴンとの間に生まれた少女。 魔王の第二子。

生れながらにして種の頂点。

当然の事だが、魔界における魔人という枠組みの中で最上位に当たる一等級魔人であった。


魔人等級…… 今ではもう口にする者もいない絶対のカースト。 


あれは呪だ。 だからこそ絶大な効力を持ち、魔族を縛り上げていた。



まあ、後に覇王が壊してしまうんだが…… それも、おいおい語っていこう。



今は覇王の――― 失礼。 リュミスの話だ。


この方が感情移入しやすいだろう。






リュミスは傲慢な幼少期を過ごしていた。

魔王と正妻の間に生まれた第一子を押しのけ、彼女こそが次期魔王と目されているのだ。

魔王たる父には過保護なまでの愛を注がれ、誰も逆らう者のいない…… そんな環境。


成るべくして成ったというべき性格は、残念な事に矯正してくれる者が不在であった。


勿論の事、友などいない。


不興を買えば何をされるか分からない。

そもそもが王族(1等級魔人)である為、恐れ多くて関わる事が出来ない。

家臣として仕える者はいたが、友人が出来る筈も無かった。


当時、リュミスと近い年齢で口を聞けたのは、彼女に姉のみ。

正妻の子、エリスだけであった。





「リュミス、 貴方、 人間界を知っていて?」

「なにそれ? おねーさま」


「下等で野蛮な種が住む世界よ」

「えーーーーー こわいよー おねーさま」


「ええ、そうね。 リュミス、貴方には過酷な世界よ。

 私はお父様に連れられて何度か足を運んだ事があるのだけど……」

「あぶないよー おねーさまになにかあったらわたし……」


「フフフ、大丈夫よ。お父様が傍にいたわ。

 それに勇者不在の人間界なんてとるに足らない。

 言ってしまえば大きな家畜小屋よ…… 臭くてかなわないわね」


悪戯っぽく笑う姉エリスの姿にリュミスは、満面の笑みを浮かべる。

それと同時に姉を不快にさせた人間界が憎く思えた。


「おねーさま…… わたし、人間界をつぶすわ」

「?」


エリスはこの言葉をまともに取り受けなかった。

リュミスが歪に表情を歪めていたのだが…… 可愛い妹の百面相を微笑ましく眺めていたのである。





えー、これはリュミスとリュミスの姉エリスとの日常の一コマ。

言動がちょっとアレであるが、実に微笑ましく、実に和む一コマである。


実際、当時の姉妹関係は良好でリュミスはサキュバスの血を引く美しい姉を慕い、姉はそんな妹を少なからず愛おしく思っていた。



え? とくに傲慢なところが見当たらない?


まあ、そうですね。 年相応にやんちゃなお姫様。

それが、当時のリュミスその人でしたから。



ただ、彼女は覇王の器…… 行動力が、我々とは違っていた。


人知れず、人間界へと向かったのだ。

それだけの力が、彼女には既に備わっていた。




……

…………


彼女がもう少し非力であれば…… 話は変わっていた事だろう。


その先に待つ地獄を見ずに済んだのかもしれない。 いや、その話は止そう。


何せ、それも少年との出会いを劇的なものに変えた一つの要因なのだから。

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