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覇王リュミスの手記  作者: デブ猫
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0.信者は語る

覇王リュミス。


それは歴史書を紐解けば、必ず目にする事になる偉人の名だ。


彼女は武をもって全てを制し、今ある世界の基盤を築いたとされている女性だ。

人や魔族、ひいては多種多様な者達が今ある平和を享受しているのは彼女の功績と言っても過言ではない。


『知性ある全ての者は我が下に一つの種として平等だ』 これは彼女の言葉だ。

諸説あるが、種族の違いで差別を行わない彼女の姿勢は多くの人々を引き付け纏め上げた。

この言葉により纏まった我々は、多くの困難を乗り越え今を生きている。


彼女が居たからこそ、今ある世界が存在し、平穏な暮らしが続いているのだ。


いまだ国同士の些細な衝突は存在しているが、嘗ての様な種族毎に別れた凄惨な殺し合い、憎しみ合いはもう歴史の片隅に消え逝こうとしている。


これは彼女の功績であり、誰もが認める確かな偉業であった。



そんな彼女だからこそ、生前から続く行い全てが神聖視され、お隠れになられた後も多くの者に崇め奉られている。



何を隠そう、私もその一人。






いや、一人だった。








ここに手記がある。


これは彼女が…… 覇王リュミスが記したとされる遺物だ。 勿論、写しではあるのだが。



その内容が、昨今物議を醸しだしていた。


私の信仰が揺らいだのは、その為だった。






そこに記されていしたのは…… 手前勝手な少女のありのままの姿。



傲慢な少女の生き様。

傍若無人な振る舞い。

残虐な行いを楽しむ様子。

その最中に在りながら、胸を焦がす乙女の心中。


なんとも歪で、あまりにも異質な手記であった。




それは彼女に対し信仰を持つ者なら怒り狂い破り捨てる程の内容。

そこにはあの言葉についても記されていたのだ。



『知性ある全ての者は我が下に一つの種として平等だ』



彼女は確かにそう考えていた。



ただ、それはなんてことない唯の発言だった。

彼女にとっては、どうでも良かったのだ。

彼女にとっては、自分以外が等しくゴミに見えていただけの事。


そう記されていた。





ただ、例外はあった。


私は、それを知り酷く笑ってしまった。





そう、彼女は乙女だったのだ。



一人の少年に恋をし。

一人の少年を思い続けた乙女だったのだ。



その歪な恋心に、私は心惹かれていた。


神聖視していた筈の彼女が、とても身近な存在に思えてしまった。


とても酷い内容の筈なのに、何故か以前より彼女の事が好きになっていた。




だから、


私は信者……

いや、彼女の一ファンとして、この物語を多くの者に聞かせたい。




今ここに語ろう、少女の恋物語を!




始まりは……



少年と少女が出会う前。

それは彼女がまだ傲慢なドラゴンだった時の話だ。

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