蒼の章5
「ごめんなさい、どうしても此処に来たくて。」
彼はきっと本当に心配してくれていたのであろう。その様子が目に浮かぶので、きっちりと謝らなければならない。
そこは本当に申し訳なく思う。
彼もそんな自分をじっとしばらく見つめ、やがて口を開いた。
「・・・まぁ、気持ちは分かるからな。」
そう言ってから、彼は私の側まで歩いてくる。そして側までたどり着くと、体をこちらに向けた。
「ティアもあの祭り嫌いだもんな。俺だってあれは嫌いだ。
あいつら、俺らがまだ成人してないのを良いことに好き勝手にしてるからな。今頃は酒盛りでもしてるところだろうな。」
彼はふっーっとため息をついてから、目の前に広がる蒼い空と海を暫く黙って見つめる。
「ここから見る空や海は、いつでも綺麗だな。」
そう言うと彼は歯を見せて明るく笑った。
いつ見ても彼の笑顔は、元気がでる。それは昔から不思議に思う。それは私だけでなく、村のみんなも言っている。
彼の笑顔をみるだけで、やる気がわいてくる、元気が出てくる、心が朗らかになる、などなど、みんなにプラスの影響を与えるのだ。
「この空と海でティアの元気が出るなら構わないさ。ただし、だ!」
「次は俺にもひと声かけてから、来ることな!」
彼の申し出に対してコクりと頷く。
自分が頷いたのを確認すると、彼は目線を移し、隣で事の成り立ちを見守る黒髪の人物を見た。
「で、その人は一体??」