蒼の章4
「ここはとても気持ちがいい場所だな。空気も美味しく、海も空も澄んでいる。噂通りの安定した豊かな国のようだしな。」
そういい終えると彼はその場で立ち上がった。
すると、彼が立ち上がった瞬間に、ふわりと少し強めの風が吹き、彼の黒い髪がサラサラと揺れる。
立ち上がった背は170センチはあるだろう。
自分から見ると、少し見上げる形になる。
整った顔が茶色の瞳をより際立たせ、黒髪が力強さを思わせる。
その黒髪があまりにも漆黒で、見とれてしまう。
この、近隣にはこのまで美しい髪のものはいないだろう。
「なぁーー」
そう、彼が言葉を繋げようとしたとき、どこからか人の声が聞こえた。
「ーーァー」
それは次第に大きな声になっていく。
「ティーアーーー」
今度ははっきりと聞こえる。
まだ幼さの残る少年の声。それはよく知っているものの声だった。
「ティアーー!どこだー?!」
「あっ!みつけた!!」
振り向くと、木の反対側、つまり先程まで自分が座っていた場所の先に茶色の髪の少年が立っていた。
自分とあまり年が変わらない少年は、少し息をきらしている。
体力が自慢の彼が息をきらしていると言うことは、相当広い範囲を行動したのだろう。
額にはうっすらと汗がにじんでいる。
「ティア!よかった!!ここにいたんだな。いなくなったから、心配したんだぞ?」
そういいながら、少年は此方へと少し登りになっている丘を歩いて上がってくる。