蒼の章2
カラリと乾いた、それでいて気持ちのよい、日も高く上っているころ、いつものように私は崖のうえに立つ樹木の根本に腰かけるつもりだった。
が、今日はその定位置には誰かが座っていた。
この辺りでは見かけない顔。
座っている人物は、方膝を立てて、その膝に顔を埋めるようにしている。
どうやら、眠っているらしい。
白い肌に、黒く短い髪がよく似合っている。
時折強く吹く風にサラサラと髪がなびく。
年は14、5才くらいだろうか?
少年とも青年とも言いがたい、その端境期に見える。
樹木は大木なため、彼は木陰となる部分で眠っている。時折心地よく吹く風が、木葉を揺らし、隙間からは光の柱が差し込んでくる。
暫く眺めてみるも、一行に起きる気配はない。
この樹木に腰掛けながら、海と空を眺めるのが日課であったが、、、。
ひとまず彼が眠りから覚めるのを待つしかないだろう。
樹木に向かって右手にまわり、丁度裏側の部分に腰を掛けた。
大樹は海側より反対のこの部分も木陰で覆っている。
その木陰から、なだらかに下る草原を眺める。
サワサワと風にのって草木が揺れる。
人もおらず、動物もいない。
ただ、草木が揺れ、風が吹き、時折、鳥が鳴くのみだった。
静かで穏やかな時間。
「うーん、、、」
どれくらいの時間がたったのだろうか、背中側のすこし離れた場所から、人のかすかな声が聞こえた。