1/7
蒼の章
どこまでも、どこまでも青い空が広がっている。
それは確かに海へと続いているのだが、海と空の境界はここからは見ることが出来ない。
透き通った空は、透き通った海といずれかの場所で交わり、目下に広がる青一面の景色を作り出す。
崖の上にあるこの場所からは、浜辺は見えず空と海だけが見える。
心地よい風が頬と髪を撫でていき、足元の草花がそよそよと揺れては止まり、揺れては止まるを繰り返す。
その草花の先には一本の大樹がそびえ立っている。
枝は大きく伸び、木葉の隙間からは光が差し込み、地面の草花を明るく照らしている。
時折、高く柔らかな声の鳥が「ピィーピィー」と鳴くことで、時間の経過がわかるが、それ以外にこの場に時の移り変わりを示すものは存在しない。
まるで、この心地よい空間が継続されるかのようで、そんな感覚になるこの場所によく私は来ていた。
この場所はずっと変わらない。ずっと、なんとなくそう思っていた。
いつも一人でこの場所に来ては、空のような海のような蒼色を眺めていた。
だが、今日は違った。