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崖から落ちた

本当は16時くらいに投稿したかったのに、ニコニコでヨシヒコが無料だったから夢中で見ていたら日付が変わってたでござる。

冒険者


 モンスターを倒して肉や素材を採取する猟師であり、未開の地に足を踏み入れる探索者でもあり、そして遺跡を調査する発掘者の総称

 様々な冒険者がいるが、どんな冒険者にも共通する所がある。

 彼らが常に死と隣り合わせで冒険をしているという所だ。

 そんな人間達の集まりだからこそ、彼らは冒険者と呼ばれるのかもしれない。


・・・


 目が隠れるほどに伸びた黒髪のせいで視界が塞がってイライラする。

 思い切って髪を切ろうとも思ったが、俺の手持ちの刃物は戦闘用の短剣しかないし、髪は願掛けで伸ばしているので、あまり髪は切りたくない。

 それに身を守る唯一の武器で髪を切るってのも何か嫌だしな。


 「あの時ハイウルフが襲ってこなければ、こんな事にはなってなかったんだ」


 俺はグチグチと文句を言いながら、髪を後ろで纏めた。

 ちょっとしたミスで遭難して早5日が過ぎた。気に入っていた皮の鎧はボロボロになってしまったし、服も少し匂う。持ってきていた携帯食は3日前に無くなってしまって、武器である短剣も必要最低限の整備しかできていないためガタがきていた。


 新人冒険者である俺にとって、この状況は地獄としか言いようがない。

 俺の名前はカウル。最近冒険者になったばかりの10歳で、迷いの森に迷い込んでしまった哀れな子羊だ。


 薬草採取の為に迷いの森を探索していただけなのに、どれだけ運が無かったらこんな事になってしまうのか。

 迷いの森は広大だけど、入り口付近だったら大したモンスターも出ないし、迷いの森と言うわりには危なくなったら直ぐに森から出ることができる狩場だ。

 モンスターは滅多なことがない限り縄張りにしている迷いの森からは出ないし、奥の方に行かなければ迷う事すら稀な場所のはずなのに。

 出てくるモンスターだって森の魔素がないと直ぐに死んでしまうような低級モンスターばかりなので、戦闘訓練にもちょうど良い、正しく初心者用の狩場だ。


 少なくとも俺はギルドの職員からそうやって説明されたし、周囲の先輩冒険者もそう言っていた。本当は仲間を募ってパーティを組んだ方が良いらしいが、自分の実力を試すためにソロで行く人もいるとの事だ。


 この時受けていた薬草採取の依頼は初心者用のクエストで、薬草を採れば採っただけ買い取ってもらえる出来高制のクエストだ。薬草は迷いの森の入り口付近に沢山生えているので、薬草採取をする合間に戦闘訓練でもしようと思ってたんだ。

 

 「冒険者になったばかりの人はこの依頼で薬草の生えている場所や採り方を覚えるの。自分で薬草が採れるっていう事はそれだけで生存能力を上げる事にも繋がるから、受けておいて損はないわ」


 これはギルド受付嬢の言葉だ。

 

 「そうだぜ。携帯食が無くなって、獲物も取れなかった場合に腹の足しにもできるしな。薬草と毒草の見分けがつけば腹をこわすことも無くなる」


 全身鎧の先輩冒険者も心当たりがあるようでウンウンと頷いていた。

 まぁ、彼女や先輩冒険者達の言葉に嘘はないのだろう。

 迷いの森の入り口付近は普段なら本当に安全なのだ。モンスターだって昆虫種のキャタピラーやモルフィア、軟体種のスライムくらいしか出ないみたいだし。

 

 俺が運悪くハイウルフに出会ってパニックになったのが悪いのだ。

 ハイウルフに奇襲された俺は必死に逃げて、森の奥に入ってしまって、何だかんだあって崖から落ちた。

 なぜ俺はあの時森の外の方に逃げなかったのだろう。まぁ、ハイウルフがそのように誘導したんだろうけど。

 崖からは落ちたものの、落ちた先が湖だったおかげで大した怪我も無かったし、何よりハイウルフから逃げられたのはラッキーだった。


 俺が落ちた湖には何故かモンスターが近寄ってこない、まるでおとぎ話に出てくる聖域みたいな場所だった。

 湖の水はキレイでおいしいし、魚も多いので取り合えず飢える心配がないのもありがたい。趣味が釣りで本当に良かったと思う。小型の釣り竿をバックに入れていて本当に良かった。


 生きるのに問題がないといっても、流石に何時までもここにいる気は無い。

 多分だけどここは人の手が入っていない未開の地だ。迷いの森にこんな湖があるなんて話なんて聞いたことがないし、木々の隙間から見えるモンスター達も見た事がないやつらばかりだ。

 普通のサイズより何倍も大きなマッドボアに赤いハイウルフ、頭に角を付けた3mはあるだろう緑肌の巨人………ここには見た事がないモンスターが溢れている。


 正直どのモンスターが相手でも勝てる気がしない。マッドボアは突進で大木を薙ぎ倒していたし、赤いハイウルフは普通のハイウルフよりも素早い動きでマッドボアを狩っていた。巨人はそんな彼等2匹を担いで歩いていた。


 湖にモンスターが近づいてこないのは本当にラッキーだと思う。何でかは分からないが。

 だけど、このままじゃダメだ。本当にここが安全な場所とは分かっていないんだし、何よりそろそろ地面で寝るのがしんどい。


 何とかしてここから脱出しないと。

 

・・・

 

 遭難6日目に突入した。

 今日は湖周辺から少し出てみることにする。

 モンスター達に気付かれないように細心の注意を払って行動したけど、あっさり緑肌の巨人に見つかった。

 巨人はゴブリンと同じ緑色の肌だが、人間の子供くらいの身長のゴブリンと違って3mくらいの長身と鍛え抜かれた肉体を持っている。俺なんかじゃ直ぐに殺されてしまうだろう。


 だけど、そうはならなかった。

 死ぬ覚悟を決めて震えている俺に巨人が話しかけてきた。


 「何をやっているんだ?」

 「えっと、遭難してます」


 巨人は意外な事に人語を話していた。

 彼の名前はマッフルという名前で、種族はオーガというらしい。

 マッフルは気さくで良いヤツだった。どれくらい良いヤツかというと

 

 「マッフルさんはここら辺に住んでいるんですか?」

 「マッフルで良い。敬語はあまり好きじゃないんだ」


 こんな感じに明らかに格下の俺とも平等に接しようとしてくるくらい良いヤツだった。マッフルにはこの森を縄張りにしているモンスターの種類も教えてもらった。


 赤いウルフはレッドウルフ、デカいマッドボアはガイアスという名前のモンスターらしい。しばらく話した後、お近づきの印にガイアスのお肉を貰った。

 明日も会う約束をして別れることになった。待ち合わせはあの湖だ。マッフルはあの湖に近づきたくないみたいだったけど、俺が土地勘がなく、湖周辺以外は良く分からないと言うと、しぶしぶ納得してくれた。

 あの湖に近づけないという訳でもないみたいだし、あの湖には何かあるのだろうか?


・・・


 遭難7日目


 マッフルの狩りを手伝った。

 今度、村にも招待してくれると言われたが、なんか怖い。

 村に着いたら他のオーガに囲まれて喰われたりしないだろうか? 不安だ。

 狩りに参加したことによって倒したガイアスの魔素が少し俺にも入ったらしく身体能力が上がった気がする。

 手伝いのお礼にガイアスの肉を分けてもらった。殆ど役に立ってないのにありがたい。


 遭難8日目


 マッフルに俺が湖で寝泊まりしていると教えたら驚かれた。

 何でもあそこはこの森の主が好んで使う水飲み場らしい。だからここら辺のモンスターは怖がって近づかないのだとか。

 因みに森の主は古龍なんだそうだ。今は他の古龍の所に出向いているみたいで居ないみたいだけどいつ帰って来るか分からない。別に湖は古龍の持ち物ってわけじゃないけど、湖は古龍の縄張りになっているので近づかない方が良いそうだ。

 他に安全に眠れるところを知らなくて困ってたらマッフルの家に居候させてもらえることになった。他のオーガが怖いけど仕方がない。多分他に生き残る道はないだろうから。


 遭難10日目


 「え、じゃあ人間の住んでいる所に出るためには最低でも5日は掛かるの?」

 「そうだな。俺の足でもそれ位は掛かると思う」


 驚愕の事実をマッフルに告げられた。

 マッフルの足で5日という事は、俺じゃあ何日掛かるか分かった物じゃない。

 俺はどうしたらいいか分からなくなった。俺だけじゃあ迷ってモンスターに食われてお終いになるのが目に見えている。

 もうこの際オーガの皆は良い奴等だし、この際ここに永住するのも良いかもしれない。戦闘訓練とかも見てもらえるし、下手な町より全然住みやすいんだよな。


 「お前は人間だが、行くところがないのなら正式に村の一員に迎えてやっても良いと村長は言っていたぞ。勿論それなりに仕事はしてもらうことになるが」

 「そんな事言われると迷っちゃうな」

 「冗談ではないから、考えてみると良い」


 ここはとてもいい場所だけど、やっぱり俺は人間だし、1度は街に帰りたいと思ってる。それに色々な場所を見てみたいから俺は冒険者になったんだ。ここで留まっているってのはちょっと違うと思う。

 

 「本当にどうしようかな」


 俺の力だけじゃここから出れる気がしない。この村に住まわせてもらえるならそれが1番のはずだ。

 そう答えは出ているはずなのに、俺はそれが言えなかった。





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