第七話 勇者はこの世界の理を知る
今回は説明が主となっています。
テンプレ的な部分も多いので興味ない方は場面の切り替わりまで読み飛ばしてください。
サトル一行は現在、雑談しながら目標のゴブリン目撃地域へ向かっている。基本的にサトルが質問を受け、それに答える形だったためサトルも話しやすかった。
「そういえばサトル君は今レベルどれくらいなんですか~?」
「え?レベル?」
「あ、ステータスチェッカー使ったことないんだね。まあまだ王都みたいな都会以外はあまり普及してないからね」
そういわれてサトルはセレステとの会話を思い出した。ステータス欄があることに驚いたサトルは、どんな種類のステータスが見えるのか確認していなかったのだ。
「ステータスチェッカーってどんな種類の情報が見えるんだ?」
「そこは気になるよね。まずはレベル、これは近年発見された概念なんだけどその人の今の成長具合を数値化したものだね。さらにレベルは限界値に個人差があって、大体25レベルが普通だね」
「25レベルか、思ったよりすぐ限界に達しちゃいそうだね」
「いやいや、レベルが上がるのはホントに極稀なんだ。ベテラン冒険者が引退間際でやっとレベル25なんて話もよく聞くね」
「なるほどね。それでノリトたちは何レベルはどれくらいなの?」
「僕が6レベル。他の二人は5レベルだよ」
その言葉に衝撃を受けた。まさか自分より年上の3人がレベル一桁だとは思いもよらなかったからだ。そもそもレベル限界という言葉は初耳だ。俺が今までやってきたゲームではそのようなものは無かった。今までゲームのようだからあまり情報収集してこなかったが、色々と聞いておかないとマズいことになる。
サトルはそう決心すると情報収集に専念する。
「そのレベル限界ってのはやはり種族によって違うのかい?」
「そうだね。あまり詳しくは知らないけど、人間族はレベル限界が高いみたいだね。逆に獣人族やエルフ族は寿命が長かったり、元々のステータスが高い分レベル限界が低いみたいだよ」
「獣人族やエルフ族ってやっぱりいるのか!」
「王国ではあんまり見ないけどお隣の帝国では結構いるみたいだよ」
帝国…また知らない言葉だ。そういえばこの世界の地理状況全然詳しくないな。
「だからやっぱり、人間にとって一番脅威なのが魔族だね。身体能力も魔力も人間族より高いのにレベル限界が同じかそれ以上なんだから」
「そんなに魔族って強いのか!それじゃあ何で人間族は今まで生き延びていられたんだ?」
たしか魔族は人間族の領地を狙っているはずだ。だから俺がこの異世界に転生させられたのだし。
「それは勿論人口の違いだろうね。人間族一人一人が魔族に劣っていたとしても、人数差が2倍、3倍あるんだ」
「確かにそれじゃあ迂闊に手は出せないよな」
戦闘において数は力だ。それは戦争でも同じ、全面戦争となったら魔族に勝ち目はないだろう。
「そうやって安心できる状況じゃなくなってきているらしいぜ。噂によると現魔王はレベル限界に達していて、レベル限界は50だそうだ」
「レベル50!人間族の2倍じゃないか!」
「しかも魔王配下の四天王はレベル40の強者揃い。まさに人間族滅亡の危機だな」
恐ろしい話を聞いてしまった。魔王が強いのは当然だがまさかそこまでオーバースペックだとは。勇者の俺が本当に勝てる相手なのだろうか。
「暗い話はこれくらいにして、ステータスチェッカーの話に戻りましょうよ~」
コルモはフワフワとした口調で強引に話を戻した。暗い話はあまり好きではないのだろう。好きな人の方が少ないとは思うが。
「それもそうだね。レベル以外には戦闘に重要な項目を数値化したものが見えるんだ。筋力50、素早さ20みたいにね」
「その数値はレベルが上がると上がるのか?」
「いや、その逆だね。数値を鍛えていくとおのずとレベルが上がるんだ」
言われてみればそっちの方が普通だな。レベルが上がるとステータスが一気に上がるのって現実で考えればおかしいもんな。
「最後にその人の素質が固有名詞で見えるんだ。ステータスチェッカーは寧ろこれが一番重要だね」
「素質?」
「色々と種類があって、その人がどんな戦闘スタイルが合っているのかが分かるんだ。例えば僕は、筋力アップ[C]、素早さアップ[D]、剣術取得[B]を持っているんだ」
「ちなみに後ろのやつはランクって事だよね?」
「そうだよ。冒険者と同じでEが最低、Sが最高なんだけどAですら希少だからSなんてこの世界にいないんじゃないかな」
「なるほどね。それで前衛の剣士で素早さを生かした片手剣なんだね」
「大正解!」
中々面白い世界だな。自分の素質が見えるなんて前世では考えられないことだ。俺の前世での素質も見てみたい気がするが、それは無理な話だな。
「で、俺の素質が素早さアップ[C]、命中補正[D]、夜目、回復魔法[E]持ちだな」
「夜目ってのは?ランクもないみたいだけど」
「これは単純に夜でもある程度明るく見えるんだ。これみたいにランクがないものも素質の中にはあるんだぜ」
何かスキルみたいだな。俺は勇者なんだし、勇者特有のスキルでも付いているんだろうか。俄然ステータスチェッカー使ってみたくなったな。
「最後は私ですね~。私は魔力アップ[C]、炎属性の加護[B]、風属性の加護[D]を持ってるんです!」
「完全に魔法使いって感じだね。でも、属性の加護って具体的にどんな能力なの?」
「属性の加護がないと、その属性の魔法が使えないんですよ。更にその属性の攻撃に対して、耐性がつくんです。なので剣士の人でも持ってる人も多いですね~」
「確かに加護が高かったら相手の魔法もあんまり怖くないからね」
「しかしサトル君はどんな素質を持ってるのかなぁ。そんな武器を軽々と持ってるし、もしかしたら筋力アップ[A]を持ってるかもね」
「ああ、その可能性は高いな。少なくとも筋力アップ[B]はないとその武器は持てないだろうしな」
「なるほど!確かにそれはありそうだね」
サトルはここにきてやっと自分の能力の高さが勇者適正のせいでないと気づいた。
なるほどな。今まで俺が常人よりちょっと筋力があるのと、ちょっと足が速いのがおかしいと思っていたんだが素質とやらのせいだったんだな。多分筋力アップ[A]と素早さアップ[A]でもついているんだろう。神様とやらが転生の際に付けたのだろうか。圧倒的な展開なんてつまらないのになぁ。
こうしてサトルは内心神様に文句を言いつつ、パーティーメンバーと共に街道を歩いていく。その先にいる凶悪な存在に気づかずに…
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それは街道の近くの森、ゴブリン目撃情報があった場所だ。そこには1000を超える、ゴブリン軍団とでも呼んだ方がいいほどの数のゴブリンがいた。ゴブリンたちはその場で身動き一つせずに視線は一つに集中している。そこには1000を超えるゴブリンたちが恐怖する存在がいた。
「それでは今から、人間の国を攻め落とす。うぬらに異を唱える者はおらんな?」
ゴブリンたちは一匹たりとも動かず平伏している。ゴブリンはしゃべることはできないが言葉を理解できるし、本能的に逆らってはいけない相手がわかるのだ。
「われは退屈なのだ。山の中に籠っているのも飽きてしまった。うぬらの国落としが、われの余興になるよう全力でことに当たれ」
そう、この存在にとってゴブリン軍団を使い人間に攻めるのは余興なのだ。1000匹のゴブリンも、一国に住む人間たちもこの存在にとっては駒でしかない。それほどまでにこの存在は強いのだ。
「さあ行けゴブリンどもよ、うぬらの力で人間を震え上がらせるのだ」
その声に反応してゴブリン軍団が一斉に雄たけびを上げる。そして隊列を維持しながらゴブリン軍団は王国方向、すなわちサトル達の元へ行軍を開始した。
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