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第三話 勇者は成長し、旅に出る

サトルの親離れ編です。


 サトルは魔物を背負ったまま森を歩き、ついに家の前まで到着したのだがここで今更ある問題に気づいた。


「そういえば内緒で外に出たんだった。こんなもの持って帰ってきたら言い訳できないよなぁ」


 サトルはここで捨ててしまおうかとも考えたが、どうせなら怒られるのを覚悟で自分が倒したと言ってしまおうと決意した。怒られたとしても8歳児に対しての罰など軽いものだ。それならばいくら弱い魔物といえど8歳で倒した事に対して褒めてくれるだろうとサトルは考えていた。実際はこの領地にいる冒険者を全て集めても倒せないほどの凶悪な魔物なのだが…


 とりあえず庭先に魔物を置き、玄関に向かうサトル。そしてサトルがドアを開けようとした瞬間、不意にドアが開け放たれた。


「サトル!こんなところにいたのね。一人で外に出るなんて危ないじゃない!」

「お母様申し訳ございません。訓練用の剣をお父様から貰い、少し舞い上がってしまいました」


 どうやら母のユリハは今日はたまたま自分に用があったようで部屋に向かったのだが、サトルがいなかった為軽くパニックになっていたようだ。サトルはこれからお説教が始まるだろうと思い、心の中でため息をついたその時


「きゃああああ!魔物が庭にいるわ!サトル、早く家に入りなさい!」


 突如母が悲鳴をあげた。サトルはこんなところに魔物が出てくるのかと驚きながら振り向く。しかしそこに居たのは勿論サトルが運んできた魔物の死骸だ。


「ああ、あれですか。お母様安心してください。あれは僕が倒した魔物です」

「えっ!?あ、あんな大きな魔物を!?本当なのサトル?」


 やはり8歳児が一人で魔物を討伐するのは凄いようだ。内心ドヤ顔をしつつサトルが頷く。すると2階から母の悲鳴を聞きつけたポマードが降りてきた。


「母様いきなり悲鳴をあげてどうしたんだい?」

「あら、ポマード。驚かせてしまってごめんなさいね。庭先にサトルが倒した魔物の死骸があったものだから…」

「へえ〜、もう魔物を狩ったのか。やるじゃないかサトル」


 ポマードは納得したように頷きながら庭先へと視線を動かす。サトルはやはり持って帰ってきてよかったと思っていたのだが


「うわあああああ!なんでここに森の主が!」


 本日2度目の悲鳴があがる。ポマードは悲鳴をあげながらも流れるように腰から剣を抜き構える。その姿はまさに騎士と呼ぶにふさわしかった。


「兄様落ち着いてください!あれこそが僕が倒した魔物ですよ。」

「ええ!あれをサトルが倒したってそんなバカな!あれ程の魔物は領地中の冒険者を出してようやく討伐できるかどうかというレベルなんだよ!」

「えっ…」


 ここにきてサトルはやっと、自分がとんでもない事をしたのに気づいた。


 あれが森の主!?そんなバカな。だってあんなに弱かったじゃないか…。これも勇者適正のせいなのか?と、とにかく誤魔化した方が面倒事にならなさそうだ。


 既にサトルの中で勇者適正はなんでもありになっていた。チート的な強さという意味では間違っていないのだが…


「い、いえ、兄様違うのです!実はあの魔物はもう弱っていてそれのトドメを刺しただけなのです」

「ああ、なるほど。そういう事だったのか。という事は森の主は世代交代でもしたのだろうね」

「多分そうなのでしょう。かなり弱っていましたがこのまま人里に迷い込むのは危険と思い討伐したのです」

「お手柄じゃないかサトル!貴族として素晴らしい働きだよ!」

「さすが私の自慢の息子ね。しかしこの魔物の死骸どうしましょうか…」

「元とはいえ森の主の死骸だ。毛皮や爪なんかから貴重な素材が取れるよ。一度父様に相談した方がいいだろうね」


 サトルはこの時妙に納得していた。サトルがやったゲームの中でモンスターが素材を落としそれをお金や武具に変えるゲームがあったからだ。お金も経験値も落とさないから内心不満だったサトルは是非ともその素材で自分の武具を作ってもらおうと心に決めるのであった。


 その日たまたま帰ってきた父と長男がまた悲鳴をあげ、村の中で変な噂が立つのだが、これもまた別のお話。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 俺が初めて魔物を狩ってから4年が経過した。今日は俺の12歳の誕生日。父から12歳になるまでは家から出てはならんと言われていたのだ。確かにいくら俺が強くても8歳児の一人旅は世間体が悪い。だから俺も家で鍛錬しつつ4年の歳月を待ったのだ。勿論鍛錬は全く効果を感じないのだが。


 俺はいつも通りの朝を迎え部屋の鏡の前で顔洗った。そしてこの顔を見るたび思うのだ。なぜ神様とやらは顔を変えてくれなかったのか。


 実は8歳の時から薄々気づいていた。だが前世の8歳の時の自分の顔を鮮明に覚えているわけもなく、たまたま似ているだけだと思い込んでいた。だが実際は全く同じ顔。髪の色が金髪に変わっただけだ。家族や召使いの人が何故か美男美女だらけなので、元の顔がより悲惨に感じる。そこまでブサイクというわけでもないのだか、やはりこの世界の人間には一段も二段も劣っている。


 サトルは神様とやらに悪態をつきつつ、部屋から食堂へと向かっていく。サトルは既に部屋の片付けを終わらしており、旅に出る準備はできていた。あとは両親が認めてくれるかどうかだけなのだ。


「お父様、おはようございます」

「ああ、サトル。おはよう」

「お父様、今日は私の誕生日。約束通り旅に出る許可を頂けないでしょうか」

「サトル…。本当に決心は変わらないのか?今でも世界を救いたいと思っているのか?」

「はい、お父様!私はこの力を民を守ることに使いたいのです!」

「そうかそうか。4年経てば考え方が変わるかと思っていたがそんな事は無かったようだな。サトル、たまには顔を出してくれよ?」


 なんだかんだ言ってかなり親バカな父エリル。あまりの親バカっぷりに若干苦笑いしつつサトルは返事をする。


「必ず戻ってまいります」


 そして母や召使いの人々に別れを告げたあとサトルは旅立った。サトルの胸には好奇心で溢れている。この4年間、度々森や近くの山に魔物を狩りに言ったのだが森の主ほど強い魔物はおらずサトルはうんざりしていた。しかし今日でそんな退屈な日々も終わる。こんな田舎には強い魔物は存在しないのだろうと勝手に思い込んでいるところがまさにサトルクオリティーなのだ。


 サトルはひたすらに歩く。目指すはこの地で一番近い王都。都会に行けば自分のレベル上げになる魔物がいると信じて…

引き続き読んでくださってありがとうございます!

感想書いていただき感謝感激雨霰!

次回からついにサトルの物語が動き出します!多分!

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