第二話 勇者は森の主を狩る
今回も話はほとんど動いてません。
誰かスムーズに話を進める方法教えてください…
ようやく剣を手に入れた俺は早速素振りをやってみる事にした。袈裟斬りと言われるオーソドックスな斬り方だ。勿論剣術の先生などいないのでただ単に上から下に斬り降ろしてるだけなのだが。
しばらくの間それっぽい構えをして剣を振り続けていたが問題が発生した。
「剣の重さを感じないから練習にならないんじゃないかこれ…」
現在サトルは剣を持っても何も重さを感じていない。食事用のナイフを持ってるようなものなのだ。つまり筋肉に負荷が掛からず練習にならない。また切っ先のコントロールなど細かいところが全く意識できていないのだ。
「はぁ、こんなんじゃただ腕を振ってるだけだな。少しは筋トレになるかもしれんが、剣術の練習にはなっていないな…」
勇者適正のせいだと思い込んでいるサトル。若干自分の境遇に苛立ちつつ、どうすればいいのかサトルは悩んでいた。
「今更剣を変えてくれとは言えないし、だからと言って素振りしてたんじゃいつまで経っても強くなれない。父や兄達に剣術を教えてもらうのが一番良いんだろうがそんな時間はなさそうだしな…」
父はまたも用事があるらしく、領地内を飛び回っている。長男のルーカスもそれについて行って、領地経営について学んでいるようだ。ポマードは騎士学校の受験準備のため日夜地理学や歴史学など、騎士としての一般教養を学んでいる真っ最中だ。というわけで、現在この家には部屋にこもりきりのポマードと母、2名の召使しかいない。しかしここでサトルはあることに気づく。
「そうか、今家にはほとんど誰もいないんだから外に出てもばれないな。村の近くの森に入れば小さい動物や魔物もいるだろうし、魔物を狩ればレベル上げになるだろう!」
あくまでもこの世界をゲームの延長線上と考えているサトルは魔物を倒すことでレベルアップできると信じていた。なので危険など考えず散歩にでも行くように森に出かけたのであった。
服をいつも来ているものではなく、動きやすいものにしてサトルは剣を片手森へ来ていた。村の付近にある森なので危険は少なく、スライムなどの危険度がかなり低い魔物やイノシシがいる程度だった。勿論8歳児がきて危険でないはずがないのだが…。
「う〜む、そういえばゲームはランダムエンカウントだったからなぁ。どうやって魔物に会えばいいんだ?」
完全に思考がゲーム脳のサトル。当たり前だが歩いているだけでは野生動物は発見できない。この森の魔物は植物や野生動物を主食としているためわざわざ人間の前に出てきたりはしないのだ。
「まあ、悩んでいても答えが分かるわけでもないし。適当にうろつくか」
そうこうしているうちにどんどん森の中心部に向かっていくサトル。実はこの世界では魔物がいる場所は大抵主が存在する。人間社会のヒエラルキーのように魔物にも階級が存在し、そこの場所での一番強い魔物が主として君臨するのだ。そして基本的に人間は主を刺激しない。主を殺してしまうとヒエラルキーが崩壊し、その場所の秩序が崩壊してしまうからだ。この世界の人類が魔物に蹂躙されていないのは、主による制御があってこそなのだ。
しかしそんな事を全く知らないサトルは進んでいく。森の主のテリトリーを犯しているとも気づかずに…
「だいぶ森の奥まで来たが、全然魔物にも動物にも会わないな。さっきまではウサギとか鳥とかは結構いたんだけど」
森の奥に進む最中、サトルは数匹のウサギや鳥には遭遇していた。しかし剣しか持っていないサトルは鳥は狩ることができず、ウサギはサトルに気づくとすぐ逃げてしまうため狩ることが出来ていなかった。実はサトルはウサギの何十倍もの速さで走ることができるのだか、本人は全く気づいていない。
そしてついにサトルは森の主の巣についてしまった。森の中で唯一の泉の近くの洞窟で、水分をいつでも取れるまさに森の主にふさわしい場所であった。
「お、こんなところに泉があるな。ここらで一旦休憩していくか。全然疲れてないけど休憩は大事だし」
勿論これもステータスのスタミナがカンストしているからである。サトルはすでに1週間歩き続けても平気な体を有しているのだ。
のんびりと泉の水で喉を潤し、木を背にゆったりとするサトル。だが既に森の主は、テリトリーを犯す者に気づいておりサトルの後ろから迫っていた。
「グゥルアアアアアアアア!」
「な、なんだいったい!?」
突如としてサトルの後ろから現れた魔物、それはクマに近い魔物だった。確かにクマに近いのだが完全に二足歩行をしており、体が巨大で一回りも二回りもでかい。腕も丸太のように太く、手には凶悪な鋭い爪が付いていた。
そして咆哮が終わると同時に木ごとサトルを切り裂こうと腕を振るってくる。常人が見ればまさに暴風の如き暴力。この光景を見ていれば誰もが8歳の少年の死を幻視するだろう。
しかしサトルにはこの瞬間はこう見えていた。
「ついに魔物が現れたな!しかしこの魔物は何故ゆっくり腕を振るっているのだろう…?」
戦闘状態になったことでサトルの反射神経は極限まで高まり、まるでスローモーションのように世界が見えるようになっていた。勿論本人は気づいていない。
「とりあえず当たったら痛そうだし避けとくか。やっと本格的な戦闘だ、ワクワクするな!」
サトルは驚くべき速さで木から離れ、剣を構える。直後、木に魔物の腕が襲いかかり紙のように崩し粉々にしていく。
「うわぁ!さすが魔物だな。遅くても威力はまさに化け物級だ」
そして魔物は腕を振り切り、呆気なく少年を殺したことに満足する。魔物はいくら時間を与えようとも、人間の反応できない速度で攻撃したのだ。既に殺したと思い込んでおり戦闘状態は解除している。
「それじゃあこっちから行かせてもらうぜ!」
サトルは敵がどのような行動をするかなど考えず、ただ全力で剣を振るった。その攻撃は魔物の不意を完全につき剣は魔物の左腕を狙う。
「ギャアアアアアアアア!」
「うっうわぁ!剣が折れた!」
そのあまりの速さと力が乗った一撃に、魔物の腕はボロボロに破壊される!しかしそんな力を剣が耐えれるはずもなく、ポッキリと折れてしまった。
魔物は生まれて初めて感じる激痛に顔をしかめる。魔物はこの森の主、生まれてこのかた魔物に傷をつけれる存在などいなかったのだ。
その時サトルも激しく動揺していた。なにせゲームでは装備が戦闘中に壊れることなどなかった。このことでサトル思い知らされたのだ。この世界はいくらファンタジー世界といえどゲームとは違うことに。
「クソ!剣が壊れたらどうすればいいんだ!逃げたらいいかもしれないけどこの魔物相当弱ってるし、ここで倒しておきたいよな」
その時ふとサトルは思い出す。やってきたゲームの中で存在した武闘家という職業を。
「剣がダメなら殴るしかないな!とりあえず腹に一撃!」
サトルは覚悟を決めて魔物に突進する。魔物は自分を初めて傷つけた相手を警戒し、その場で動いていない。そして助走をつけたパンチが魔物に炸裂する!
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
魔物は反撃しようといつでも右手で迎撃できる体勢で待ち構えていたのだが、サトルの踏み込みがあまりにも速く反応できない!
どっかーん!
漫画のような音が炸裂し魔物が飛んでいく。そのまま木にぶつかりピクリとも動かなくなった。
「…あれ、思ってた感じと違うな。パンチで吹っ飛ぶなんて漫画だけかと思ってたわ。てか、これでこいつ死んじまったのか?この辺の魔物は聞いてた通り弱いんだな」
サトルはこの魔物が俗にいう雑魚モンスターだと錯覚している。普通に考えれば木を粉々にする魔物がうじゃうじゃいる訳がないのだか、あまりに呆気なく倒してしまった為正常な思考が出来ていなかった。
「やはりゲームみたいにお金や薬草みたいなのはドロップしないんだな。さて、この魔物の死骸どうすればいいんだ?クマみたいだし持って帰れば食べれるのかな?」
サトルはそう考えるとそのまま魔物の死骸に近寄り背負ってみる。
「これまた重さ感じないな…。勇者適正はこういう時は便利だなぁ。今から母の料理が楽しみだ」
勿論サトルの筋肉だけで魔物を支えているのだが本人は気にせず自宅へと帰っていく。8歳児が自分の何倍もの大きさの魔物を背負っている違和感に気づかないまま。
その日狩りの為に森に入った村人が、森の主を村の近くで見てしまい大騒ぎになるのだがそれはまた別のお話。
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