第七話 武士達は撃退する
初の人間との戦いです
サトル達は帝都を後にし順調に帝国の地方都市へと向かっていた。馬での旅は初めてではないため快適に旅を続けるサトル達。サトル達と会話するためセリーエは馬車から顔を出しながらであった。会話の内容は自然と目的地である獅子人族の里の話となった。
「獅子人族の里ってどんな感じなの?」
「どんな感じといわれると答えるのが難しいですが…普通の田舎の村と同じような規模の里ですね」
「じゃあ田舎の村と違う特徴教えてよ」
「私も気になります~」
「色々と違うところがありますが一番大きいところですと衣服でしょうか」
「衣服?セリーエさんは普通の服着ているけど違うんだ」
セリーエは現在一般的な洋服を身にまとっている。他の服と違う点は尻尾のための穴が開いているところくらいだ。
「里では皆キモノという服を着ています。モノノフ様が考案した服ですね」
「あ~、なるほどね」
やっぱりというべきか獅子人族の里は色濃く日本の文化が根付いているようだ。自分の里に来た英雄が考案したものを拒む者はいないだろう。
「なんで帝都では来ていないんですか~?」
「帝都で来てしまうと目立ってしまうので着るに着れないんです。帝都で獣人族は珍しくありませんが獅子人族はほとんどいないので悪目立ちしてしまうんです」
「街中で目立つのは嫌だったの?冒険者としてなら名前を売れる点でいいと思うんだけど」
冒険者はランクも大切ではあるが知名度も重要になる職業である。名前を覚えてもらうことで指名依頼も受けやすくなるからだ。わざと奇抜な格好をする事で知名度を上げている者もいるらしい。
「前にも話しましたが私は冒険者として成功するために帝都に来たのではなく、あくまで剣術修行が目的だったのです。あまり目立って面倒事に巻き込まれるのは不本意だったので」
「そういえば目的はそうだったね」
「でも私セリーエさんのキモノを着ている姿見てみたいです~!」
「じゃあ里に着いたら久しぶりに着てみますね」
「里の楽しみが増えたね」
雑談に花を咲かせ続けているサトル達。完全に商隊の護衛依頼だということを忘れて旅行気分であった。
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商隊は予定地点まで順調に進み昼休憩に入っていた。商隊たちと冒険者パーティーが昼食の準備を進める中、サトルは予定通り狩りに行っていた。コルモとセリーエは火をつけたりと昼食の調理の準備をしていた。
サトルが森に入って数分後、大量の魚を抱えて戻ってくる。サトルは魚を取ったこと事が今までなかったが、川では泳いでいる魚を掴むだけで良かったので簡単に捕ることが出来ていた。
「お待たせ。近くに川があったから今日は川魚捕ってきたよ」
「サトルさんがここを出発してまだ5分も経ってないんですが…」
「こういうときが一番人間を超えてるのを実感しますね~」
「まあそこはどうだっていいじゃない。魚があればどんな料理が作れる?」
「そうですね~私の故郷では海の魚しか食べなかったのであまり料理は知らないです~」
「ふむ、ではここはシンプルに塩焼きはどうでしょうか?」
「それいいね!じゃあそうしよう!」
サトル自身川魚の料理をを塩焼き以外知らなかったので今日は塩焼きにして食べることにした。帝都の宿屋などで食べた料理と違って複雑なスパイスなどはかかっていないが、豪快な川魚の塩焼きはワイルドで美味しかった。ちなみに近くにいた商隊の御者の人が余りにも物欲しそうな顔で見てくるので振る舞った。
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商隊は順調に進んでいた。未だどの隊も族に襲われることもなくペースも予定通りである。そして今回の護衛依頼で一番の難所と思われる崖に囲まれた道を3番隊は進んでいた。
両側を崖に囲まれているため前後を封じられるだけで逃げ場がなくなってしまう地形。普通ならばこのような道は避けるべきであったが地方都市に向かう道で馬車が通れる道がここしかないのだ。
3番隊一同は緊張しながら道を進んでいく。しかしどこかで襲ってこないだろうと高を括っていた。それがセリーエが護衛に着いているからである。なるべく目立たないようにしていたとはいえ、その実力は帝都中に広がっている。盗賊たちは危険な冒険者と鉢合わせしないよう有名な冒険者の要旨は把握しているはずだ。つまりセリーエを一度見ればたちまち逃げていくに違いないと思っていたのである。
しかし一同のその考えは裏切られることとなる。商隊が道の中間点にさしかかったあたりで500人をゆうに超えるの盗賊が現れてのだった。
「何だと!?あいつら帝都のセリーエを見てもなお攻めてきやがるぞ!」
「相当の腕ききの盗賊団ということかしら…全員配置につけ!」
他の冒険者パーティーが慌てて陣形を整えている中、サトル達には緊張感がまるでなかった。
「本当に商隊に襲い掛かる盗賊たちっているんだね」
「この辺はまだまだ帝都の近くですから高額商品を積んだ商隊がよく通るんですしょうね~」
「他人から物を奪って生活する外道共を成敗してくれます!」
サトル達は馬から降りて戦闘の準備を整える。セリーエも馬車から降り立つと|ブドウトウ《武道刀」とオリゴトウを抜き払い盗賊たちに向けて構えた。盗賊達が一斉にこちらに駆けだすとサトル達も動きだす。
「よいしょっと」
まずはサトルが先陣を切りバスターソードの刃がついていない部分を使って豪快に盗賊たちを殴る。サトル本人としては殺人がしたくなかったのだがサトルの筋力を使って鉄の塊で殴られて生き残れるものは存在しなかった。仕方が無いのでまだ手加減できるすでに切り替えて戦うサトルであった。
「消えろ!俗物共め!」
セリーエも飛び出していき二刀でバッサバッサと盗賊を斬り倒していく。盗賊の中には一人もセリーエの太刀筋を見ることが出来る者はおらず盗賊たちが死んでいった。
「行きますよ~ソードストーム!」
盗賊の後方に向けて放ったコルモの魔法が炸裂し、盗賊たちの後続を蹂躙する。今回はただの生身の人間であるため属性複合魔法ではなくソードストームを使っていた。
前からは巨大な剣を軽々振り回したかと思えば、素手で人間をふっ飛ばしていく少年と鬼神のごとく迫ってくる獅子人族。後方からはあり得ないほど凶悪な範囲魔法とまさに八方ふさがりな盗賊たち。後続から襲ってきていた盗賊が全滅するのにかかった時間はカップラーメンが出来上がる時間と同じであった。
「かなりあっさり勝っちゃったね」
「まあ人数差で押し切ることしか考えていない賊です。力量差は明白かと」
「楽な依頼でよかったです~」
「あれ?まだ前方のパーティーは戦っているね」
「おや、そのようですね。2パーティーが行きましたのでもうとっくに終わっていると思っていたのですが…」
「他の人たちの戦闘能力を私たち基準で考えるのはやめましょうよ~」
最近チートに馴れてしまったのと魔王四天王と戦った影響で感覚がマヒしているサトル達。コルモに言われて思い直すと前方の冒険者パーティーを手伝うために走り出した。
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全ての盗賊たちを殲滅することに成功した冒険者パーティー達。途中からセリーエの助けが入ったとはいえ2パーティーで約300人程度の盗賊たちを返り討ちにしたのは快挙であった、
「しっかし何でセリーエがいる俺たちの隊に襲撃してきたのやら。人数差で勝てると思ったのかね」
「確かにそこが不思議なのよね…別段強い盗賊でもなかったし」
2パーティーのリーダーが不思議がっている中サトルが答えを言う。
「セリーエさんが馬に乗れないから馬車に乗っていたので見えなかったのでは」
「・・・・それじゃ護衛依頼の意味ないだろ!」
こうして熟練冒険者に怒られたセリーエは馬車の上に座ることで牽制することになったのであった。
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次回更新は8月21日を予定しています