第六話 武士は堪能する
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無事護衛依頼を受けることに成功したサトル達は、明日からの旅に備えて準備を行うため市場に来ていた。
「市場に来たけれども一体何を買うの?」
「そういえばサトルさんはこのような依頼を受けたことがないんでしたね」
「この前Dランクになったばっかりなので人から依頼を受けるのも初めてですね~」
「そうでしたね。まずは護衛依頼中の食料でしょうか。飲料水も含めて自己負担が基本ですので」
「3日分の食料と飲料水か。結構な荷物になっちゃうね」
「私たち冒険者の荷物を入れる為の馬車を1台用意してくれているのでそこに乗せる形になると思います」
「食料ってどんなものを買うんですか~?」
「干し肉、堅パン、即席スープの素が一般的ですね。保存できるものとなると極端に少なくなるので…」
サトルは今まで旅の途中で狩りを行っていたので美味しい新鮮な肉を食べることが出来ていた。今更旅の途中で干し肉、堅パンみたいなあまり美味しくなさそうな物を食べる気には全くならなかった。
「うーん、昼休憩とかの時にちょろっと抜け出したりできないかな?」
「昼休憩の時はある程度自由な行動は認められていると思いますが…それがどうかしましたか?」
「それじゃあ狩りして適当な動物狩って食べようよ。そっちの方が美味しい食事が出来るからさ」
「か、狩りですか?多分昼休憩は30分程度だと思うのですが…」
「セリーエさん、サトル君の能力のこと忘れたんですか~?それくらいちゃちゃっとサトル君はやっちゃいますよ~」
「確かにモノノフ様お力があればできるかもしれませんね!サトルさんの能力を低く見過ぎていました…大変申し訳ございません!!」
「いや、いいんだよそんなに謝らなくて…じゃあ食料は狩りで確保することにして、飲料水だけ買っていこうか」
話し合いの結果サトル達は旅の準備を飲料水を買うのみになった。普通の冒険者ではあり得ない行動ではあったが、サトルの人の枠を超えた移動速度と狩りのセンスがあれば十分可能な計画なのだ。
「さて飲料水も買ったしこの後どうしようか?」
「出発は明日ですから一日暇になってしまいましたね~」
「討伐依頼でもこなしておきますか?」
確かに現在サトルの持っているお金はお世辞にも多いとは言えない金額であった。今日泊まる宿代すら危うい状況なのだ。
「お金もないし討伐依頼こなしに行くしかなさそうだね」
「お金…あっ!サトルさん申し訳ありません、言うのが遅れてしまいました」
「何のこと?」
「さっき冒険者組合に行ったときに私に昨日の魔王軍の撃退報酬が出たんです。魔王軍は名目上私が倒したことになっていますが、本当は全てサトルさんのお力。撃退報酬はサトルさんがお受け取り下さい」
「まあお金の管理は僕がしてるしありがたく頂戴するよ。パーティーメンバー全員で使うけどね」
サトルはそう言ってセリーエから革袋を受け取る。中には金貨30枚が入っていた。
「こ、こんなに貰えるんだね…」
「サトルさんは魔王軍を撃退したんですから当然です!」
「まあ言われてみればそうですけどポンとこれだけの報酬を出せるのは驚きですね~」
冒険者組合が1日で金貨30枚を報酬として用意できるのは驚きであった。それだけ王国と違って冒険者業が盛んであるということなのだろう。
「折角お金に余裕もできたし何か帝都のお店でも行こうか?」
「じゃあ私久しぶりにお菓子屋さん行きたいです~!」
「それいいね!セリーエさんもお菓子は好き?」
「はい!帝都の菓子屋には行ったことが無いので楽しみです!」
「じゃあ今日は帝都のお菓子屋巡りだね!」
やはりどこの世界でも女の人はお菓子が好きなのだろう。二人は上機嫌で頷いた。その後コルモの案内の元帝都の有名なお菓子屋をまわりにまわった。サトルは3軒目でギブアップしたがコルモとセリーエは5件目もペロッと食べてしまった。
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お菓子屋をまわった翌朝、サトル達は依頼人に指定された集合場所へと来ていた。集合場所には荷馬車が5台あり荷物を続々と中に入れている最中であった。他の冒険者も既に2パーティー来ており、サトル達が最後のようだった。
サトル達が来たことに気づいた依頼人が近寄ってくる。セリーエを格安で雇えたため上機嫌でサトル達に話しかけてきた。
「セリーエさん、おはようございます。今回は私どもの依頼を受けてくださってありがとうございます」
「おはようございます。丁度あちらの方面に用事があったので私たちも好都合でした」
「なるほど、そうでしたか。今日から三日間よろしくお願いしますね」
依頼人は一通りの会話をすますと忙しそうにまた馬車の方に戻っていく。色々と部下への指示が必要なようだった、それを見届けたサトル達は他の冒険者パーティーの場所へと歩みを進める。隊列を決めたり戦闘中の連携を高めたりと他のパーティーとのコミュニケーションは大切なのだ。
まず近くにいたスキンヘッドで大男のいかにも冒険者という男の人に話しかける。
「おはようございます。今回の護衛依頼を一緒に受けさせていただくサトルです。後ろにいるのがパーティーメンバーのコルモちゃんとセリーエさんです」
「おう、よろしくな。しかしまさかあのセリーエがパーティーを組むとはな。しかも格下でド新人の2人組と組むとはね」
「まあその辺は色々あるんですよ。貴方のパーティーメンバーは何処にいるんですか?」
「俺のパーティーメンバーはあと二人いるんだが…何かお前らが来た途端どっかに行っちまったぜ」
「何処に行ったんでしょうかね?」
サトルと大男が不思議がっていると最後のパーティーが近寄って話しかけてきた。
「はーい。坊や達が最後のパーティーね?」
「はい。今回の依頼をご一緒させていただきます」
「よろしくね坊や達。あらセリーエ、こんなところに来て坊や達のお守りかしら?」
「お守りなどではない!私たちはれっきとしたパーティーメンバーだ!」
「冗談よ、冗談。色々と聞きたいことがあるけれどそろそろ出発ね。隊列についてパパッと決めちゃいましょう」
ケラケラと笑いながらセリーエをからかうお姉さん冒険者。不真面目な印象を受けるが仕事はしっかりとやようだ。
「俺たち3番隊はその名の通り一番最後に帝都から出発する商隊だ。一番盗賊に襲われやすい隊だぜ。一番危険な仕事だな」
「とはいえ私たちには英雄様がついてるわ。いくら盗賊でも英雄様がいる隊を狙わないでしょうね」
商隊は3隊に分かれて地方都市まで商品を運ぶ。それぞれ3パーティーの冒険者が付いて護衛するようだ。3隊が分かれて行動しているため、狙われやすいのは先頭か一番後ろになるのだがセリーエの顔を見て襲ってくる盗賊はこの近辺にはいないだろう。
「私たちは隊列どこでもいいわよ」
「んじゃ、俺たちが先陣。姉ちゃんたちが真ん中でボウズ達にしんがり務めてもらおうか」
「僕たちはそれでいいです」
「じゃあ決まりね。それじゃあパーティーメンバーと相談するからこれで」
「俺も二人探してくるわ。全くあいつらどこ行ったんだか…」
こうして商隊を護衛する陣形が決まり各々持ち場に着きだす。サトル達は一番後ろに行き、サトルとコルモは馬に乗りセリーエは馬車で待機する形となった。
他の2隊が出発して15分が経ったころついに3番隊も出発となる。サトルの初めての護衛依頼が始まった瞬間であった。
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次回更新は8月19日を予定しています