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第十二話 魔術師は過去を明かす

遂にコルモちゃんの過去が明らかに!

 サトル達がインプ軍隊を殲滅し終えたところでようやく後続の魔族達が到着した。たかが冒険者3人組がインプ軍団を殲滅できるとは露ほどとも思っておらず普通の行軍スピードで来たのがサトル達にとっては幸運だった。


 サトル達は全員武器を構えて油断なく魔族達と対峙している。魔族達の中から一人が前に進み出ておもむろに喋り始める。どうやら魔族達のリーダーのようだ。


「やい人間ども!よくも俺たちのインプ共を皆殺しにしてくれたな!死をもって償ってもらうぜ!」


 そう一方的に告げるとリーダーが号令を出し魔族達がサトル達に突撃を開始する。サトルとセリーエは素早くコルモの前に出てコルモを守る陣形となった。


「コルモちゃん、魔法の詠唱よろしく!近づいてきた敵は僕たちに任せて!」

「私たちに任せてくれ!ここはネズミ一匹通さんぞ!」

「了解しました!」


 コルモが詠唱に入るとともに魔族が3人サトル達に襲い掛かってくる。自然とサトルが二人を受け持ち、セリーエが一人と対峙することになった。


 セリーエが一人の魔族に対して斬りかかる。右手のカタナを大振りの袈裟切りを仕掛ける。しかし魔族の男は獣人族であるセリーエの剣を難なく受け止める。だが次の瞬間魔族の首が飛ぶ。右手は囮で本命は左手だったのだ。二刀流の強みを生かした豪快な攻めに魔族は一人また一人と屠られていった。


 一方サトルはいつもと何ら変わりなかった。剣を横薙ぎに振るう。それだけだった。それだけで魔族は為す術なく倒されていく。逃げることは速度的に不可能、剣で受け止めれば剣ごと叩き切られる。サトルの前では回避も防御も無意味なのだ。


 セリーエとサトルの活躍によりコルモのところには攻撃が来なかったため、詠唱が終わりコルモの魔法が炸裂する。


「くらえ~!」


 若干気の抜けたコルモの声に合わせて杖の先からソードストームが放たれた。サトル達の頭上を飛び越え後続の魔族達に刃の竜巻が襲い掛かる。これで後続が全滅かと思われたその時、相手の魔族達負けじと魔法を放つ。


「「「「「ストーンバリア!!!!!」」」」」


 突如空中に現れた石の壁が竜巻から魔族達を守る。コルモの放ったソードストームの圧倒的切断力の前に石の壁がどんどん削られていくが、複数人で唱えた数十枚もの石の壁を破壊することはできなかった。


「あの強大な魔法を防ぎきるとは!流石は魔族といったところだな」

「う~む、まさに数の力だね」


 いくらコルモがサトルの素質によりチート化していても、中級範囲魔法では人数の差を打ち破ることは難しかった。勿論それは中級魔法であればの話だが。


「どうやらソードストームではダメみたいですね~。なら切り札を使います!」

「切り札!?そんなのあったのコルモちゃん!」

「何だかよく分からんが頼んだぞコルモ!」

「詠唱時間が掛かるので時間稼ぎお願いします~」

「了解!」「任された!」


 今度はサトル達から突撃し、魔族を蹴散らしていく。魔族も力の差に気づいているため多対一になるように移動しながら戦ってくるが、セリーエは華麗に位置をコントロールし一人ずつ確実に屠っている。勿論サトルには多対一であろうがなかろうが関係ない事であった。


 コルモが人間の言葉ではない何かを数十秒呟き続けてついに準備が整う。二人はそのタイミングを見計らってコルモの元まで駆け戻る。魔法に巻き込まれないようにするためだ。


「風の精霊シルフと炎の精霊サラマンダーよ!我に真の力を授けたまえ!ファイヤストーム!」


 最後の詠唱が終わると同時にコルモの杖の先から強大な炎の竜巻が現れる。慌てて魔族が防御を張るがそれも無意味。炎の竜巻はあざ笑うかのように防御を軽々と突破し魔族を蹂躙する。その光景はまさに地獄の業火であった。


「…何だか凄い魔法だけどコルモちゃんこんな魔法使えたんだね」

「何だか凄いなんて代物じゃないぞこの魔法は…属性の複合魔法が使えるということはまさかあの…?」

「まあバレちゃいますよね~。セリーエさんのお察しの通り私はマドルの出身です」

「マドル?」

「サトル君は知らないのか。マドルとは人間族の中で古くから精霊たちとの交信を行ってきた部族なんだ。人間族の中で唯一属性の複合魔法が使える部族でもあるんだよ」


 サトルには今一精霊との交信や属性の複合魔法の凄さが分からなかった。だがどうやら唯一で凄い部族のようだとだけ感じていた。


「しかしマドルは3年前に魔王軍に侵略され絶滅したはずでは…?」

「確かに私の村の皆は魔王軍に殺されました…しかし私だけ運よく帝国に行っていて生き延びたんです」


 鈍感なサトルでもこの時やっと気づいた。コルモが時々見せる仲間の死に対する異常な恐怖はそれが原因なのだと。だが未だに何故自分の旅に着いてきたのかは分からなかった。


「ようやくコルモが強力な魔法を使えて連発出来るか分かったよ。マドルの人が一緒だというのならこの戦いも勝ったも同然だね」

「私が異常に強いのはマドルだからではなくサトル君のせいなんですけどね~」


 そうコルモが言い終わると同時に魔法が終わる。炎の竜巻が蹂躙をしたそこには大量の魔族の死骸と一人のフードを被った人が立っていた。


「な、なんだと!?あの魔法の中平然と立っていたのか!?」

「私の最大魔法が通じないなんて…」


 自分の魔法に絶対の自信があったコルモは青ざめ、セリーエは警戒心を最大限まで引き上げる。少しの静寂の後おもむろにフードの人間が喋りだす。


「ふふふ、まさかマドル共に生き残りがいたとはね。そしてブシドーの使い手の獅子族。更には"転生者"とは。私は運が良いやら悪いのやら」

「そんな戯言はどうでもいい!お前は何者だ!」


 セリーエの言葉を聞きフードをとる男。フードの中から出てきた顔は牙も角もなく普通の人間だった。しかしコルモがその顔を見た瞬間悲鳴を上げる。


「ど、どうしたのコルモちゃん!?」

「あ、あいつです!私の家族を!故郷を奪った奴は!」

「おやおや、お嬢さんは私のことを知っていたようだね。一応自己紹介させてもらおう。魔王軍四天王の一人"無限のフダル"だ。どうぞお見知りおきを」


 その男はそういうと優雅にお辞儀をする。その顔からはサトル達と対峙していても余裕が透けて見えていた。


「まさかこんなところで四天王と出会うとはね。私の悪運もここまでか…」

「そんなに四天王って強いの?レベル40なんでしょ?」

「レベル40は十分高いですよ…それに四天王はサトル君みたいに選ばれし素質を持っているらしいです…」

「そういうことだ"転生者"。軍が半壊したところで任務は失敗だし逃走しても良かったんだがね、君たちをここで始末しないと魔王軍に多大なダメージを与えるだろう。すまないがここで死んでもらうよ」


 そう言ってファイティングポーズをとるフダル。どうやら肉弾戦が得意なようだ。


「サ、サトル君逃げましょう!あいつには絶対に勝てないです!」

「逃げたとして逃げ切れるの?」

「ううう…それは…」

「サトルとコルモ。私が決闘に誘ってしまったばっかりにこんなことになってしまった。今度こそ私がここで時間を稼ぐ。君たちは帝都に逃げるんだ」


 どうやら四天王はサトルの想像を遥かに上回る強さのようだ。だがだからといってセリーエを見捨てて逃げる気にはならなかった。サトルは既にセリーエを仲間だと思っていたからだ。


「確かにあいつは強いかもしれない。でも僕たちが力を合わせれば何とかなるかもしれないじゃないか!」

「サトル君・・・」「サトル・・・」


 二人は押し黙り考える。そして二人は一つの答えを出した。


「もはや私の命は先ほどのインプの時に捨てたものだ。サトルに全てを委ねよう」

「私忘れてました。もう仲間は失いたくないって!私セリーエさんを守るため戦います!」


 二人の固い意志を感じたサトルは背中を任せてフダルと対峙する


「賢明な判断ですね。帝都に逃げたところで私はあなた方三人を確実に殺します。三人の方がまだ勝機があるでしょうね。いくら"転生者"が強かろうと私にも素質がある。この勝負勝たせていただきます」


 そう言って不敵に笑うフダル。こうして勇者たちと魔王四天王の戦いは幕を開けたのであった。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!

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次回更新は7月29日を予定しています

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