第八話 魔術師はチートを実感する
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サトルが敵前逃亡をした翌朝、二人はゴブリンなどを狩るため近くの森に向かっていた。朝ご飯はこれから狩りをするためほどほどにしたため、まだ日が昇りきっていない。今日は一日中狩りをしてどれくらい稼げるのかを試すつもりであった。
「このパーティで狩りするのは初めてですけど、陣形とかってどうするんですか~?」
「陣形かぁ…特に考えたことなかったなぁ」
サトルはチート能力を持っているがチームでの戦闘経験はほとんど無いに等しい。狩りは基本一人でやっていたし、ノリトたちとの戦闘もサトルが一人で好き勝手やっていたのだ。
「まあ二人なのでそこまで気にする必要ないと思いますけどね~」
「それもそうだね。まあ戦士と魔術師だし、僕が前に出てコルモちゃんは後ろからって感じでいいかな」
「了解です~!」
かなり適当にチームの陣形を決めた二人は森の奥地へと進んでいく。今回は目撃情報が無いので街道沿いの森に棲んでいる魔物が狙いだ。人間を狙いに来るゴブリンの数は少数派といえども降りてくる頻度は多い。ゴブリンの人口はそれほど多いのだ。
「そういえばオークについて何にも知らないんだけど、どんな魔物なの?」
「オークもゴブリンと同じく人型の魔物ですね~。ゴブリンと違って数は少ないですが、人間より遥かに筋力が強いですしある程度仲間と会話が出来るそうです~。ゴブリンと違って人を襲う習性がある人間にとって厄介な魔物ですね」
「会話が出来るって事は知能が高いの?」
「ゴブリンと違って武器なんかも使いこなせるみたいです~」
そういえばこないだのゴブリンたちは木の棒や素手で戦ってたな。あれは知能が低いからなのか。
ゴブリン軍団との戦いを思いだすサトル。戦いといってもサトルが一方的に虐殺していただけだが。
「人間の落していった剣や斧なんかを使うオークは多いみたいですよ~。流石に弓や魔法までは使えない見たいですけど」
「なるほどね。じゃあゴブリンとは比べ物にならないくらい強いんじゃない?」
「そりゃそうですよ!一体くらいならEランクの冒険者でもパーティーで倒せますけど、オークの群れにはDランク冒険者パーティーでも厳しいみたいですね~」
まあ考えてみれば当たり前の話だよな。冒険者よりも筋力があって武器もある程度使えるとなると近距離では脅威の存在だろうからな。
「じゃあ遠距離攻撃はどれくらい効くの?」
「個体差があるみたいですけど…弓矢は安物の短弓だとあまり効果が無いみたいですね~。オークの硬い皮と筋肉を貫通するのは難しいみたいです~。勿論魔法はしっかり効きますよ!」
「魔法ってやっぱり凄いなぁ。しかし魔法って便利だね。弓みたいに持ち運ばなくて済むし」
「ホントは杖とかを持ってると魔力とか増強できるんですが…ちょっと高くて買えなかったんですよね」
「やっぱり魔術師の武器は杖なんだね」
久しぶりにゲームのことを思いだすサトル。ゲームでも魔法使いの定番の武器は杖だった。
「別に杖じゃなくてもいいんですよ~?結局魔力増強のために必要なのは魔術刻印ですからね~」
「じゃあ剣とか弓とかでもいいんだ」
「持ってる人もいるみたいですね。ただ魔術師の人が剣術覚えるのは大変ですし、自衛のためにも近接武器を持ちたいんですよね~。それで扱いやすい杖を持つのが普通なんです~」
「そういう理由なんだね」
確かに杖なら魔物をすぐに殴りつけれるし、歩いているときは支えになるから一石二鳥なのだろう。ゲームも割と現実的な設定なんだな。
前世のゲームに感心しつつ歩いていくサトル。既に森の奥地まで来ており、周りは木で覆われており視界が開けていない。少し空けたところに二人が入ると突如オークたちがサトル達を囲むように現れた。
「グゥア!グゥア!」「ギャギャギャ!」
「オ、オークの待ち伏せです!」
「どうやら人間が来るのを待ってたみたいだね」
サトルは持ち前の視力と聴力で狩りをしていたので、相手が気配消したりすると気付くことができないのだ。コルモとの会話に集中していて周りの警戒をしていなかったせいでもあるのだが。
「5匹もいますよ!というかこの場合どうやって陣形をとればいいんですか!?」
「確かに囲まれたときのことは考えてなかったね。それじゃあお互いの背中を守る感じでいこうか」
「了解です!」
この会話をしている間にもオーク達はじわじわと距離を詰めてきている。一気に襲ってこないのはこちらの戦力が未知数だからであろう。
「とりあえず魔法撃ってみてよ。どれくらいの威力があるのか見てみたいし」
「そうですね!ではサトル君の化け物能力、試させていただきます~!」
そういってコルモは両手をオークに向けて突き出す。そうして詠唱を始めた。
「炎の精霊サラマンダーよ、我に力を与えたまえ。ファイヤ―ボール!」
どうやら今回は元から得意な炎属性を選択したようだ。風属性のウインドカッターだと切断する魔法なのでオークに対して効果が薄い可能性が高いからであろう。
コルモの両手の間から生まれた火の球は真っすぐオークに飛んでいく。オークは魔法を避けようとするが間に合わず左肩に着弾する。
「グアアアアアアアアアア!」
着弾と同時にオークの全身を炎が包み込みオークの悲痛な叫びが森に木霊する。数秒後オークの骨を少し残して燃やし尽くした。
「ファイヤーボールって結構火力あるんだね」
「いやいやいやいや!普通はこんなに凄くありませんよ!?だってファイヤーボールって初級呪文ですもん」
「初級呪文だとやっぱり威力低いの?」
「勿論そうですよ~。オークには4,5発当てないと倒せないはずなのに…」
あまりに突然のことだったためオークの仲間も呆然としていたが、正気を取り戻し一気に襲い掛かってきた、早く近づかないと危ないと悟ったのであろう。
「前の三匹は僕が相手するから後ろの残り一匹頼んでいい?」
「は、はい!任せてください!」
サトルは剣を背中から抜き構えて、コルモも先ほどのように両手を構え詠唱を始める。
「風の精霊シルフよ、我に力を与えたまえ。ウインドカッター!」
コルモの両手から放たれた不可視の刃はオークを切り裂き真っ二つにした。そのまま勢いが止まることなく飛んでいき大きな木も2、3本切り裂く。
「そぉい!そぉい!」
サトルの気の抜けた掛け声とともに剣が横薙ぎに振られ3匹のオークが上下に切断される。こうしてオークの奇襲を受けたサトル達であったが、一瞬にして返り討ちにしたのであった。
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オークの死体が4体もあるので街に引き返しているサトル達。討伐報酬だけなら耳で十分なのだがオーク肉は食べれるため割と高く売れるのだ。ちなみに味は豚と牛の中間のような味らしい。少年が体重が100kg近くあるオーク4体を紐で縛って引きずっている姿は異様だった。
「しかし驚きました~。属性適正[S]ってこんなに凄いんですね~」
「初級呪文であれだけあるならもっと強い呪文なら相当だろうね」
「ですね~。それに魔法の操作もできましたよ~」
「魔法の操作?」
「実は適正の高い人だと放った後の魔法の軌道操作したり、いつでも消したりできるんです~。[A]クラスじゃないとできないので私も聞いただけなんですけど、今日試したら出来ちゃいました~!」
「それは便利だね!あ、だからオークの骨が残ったのか」
「そうですよ~。あのままだと討伐を証明できる部位が消えちゃいそうだったので途中で試してみたんです~!」
多分切断された木が2、3本で済んだのもそれのおかげなんだろうなと思うサトル。コルモの戦闘能力は桁違いにまで上がっていたのであった。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
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次回更新は7月19日を予定しています。