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第五話 魔術師は帝都に着く

王様の出番が半分です

 朝日が昇り始めるころ、サトルとコルモは出発の準備をするためテントから出てきた。今日中に関所を通ってしまわなければ捕まってしまう可能性が高いのだ。睡眠時間も必要最低限にしなければならない。サトルは一睡もできてないが。


「サトル君おはようございます~。意外と寝袋でもぐっすり眠れますね~」

「そ、そうだね」

「あれ?サトル君目にクマが出来てませんか?」

「い、いや、どうにもベットじゃないと眠りづらくてね」

「結構その辺気になっちゃうタイプなんですね~。それで昨日ゴソゴソしてたんですね~」

「え!?お、起きてたの?」

「いえ、眠りが浅い時に偶々聞こえただけですよ~。何してたのかまでは分かりませんでしたけど~」

「よ、よかったぁ~」


 サトルは夜中に耐えきれなくなりこっそりと対処したのであった。サトルはチート的存在だが女性耐性は0に等しい。


「で、結局夜中何してたんですか?」

「さ、散歩だよ。眠れなかったから体動かそうと思ってさ」

「そうでしたか~。とりあえず時間もないですし朝ご飯食べて出発しましょう!」


 昨日の残りのスープを食べて二人は関所に向けて出発する。途中サトルが馬の上で睡魔に耐えきれず寝てしまい、落馬してコルモが大騒ぎしたりしたがほぼ予定通りに進むことができた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「まだ消息が分からんのか!」

「も、申し訳ございません!何分目撃者がおらず朝方宿屋から抜け出したことしかわかっておりません」


 玉座に座り大声で大臣を叱りつけているのは勿論現国王のラムスだ。まさか転生者が誰にも気づかれずに王都を抜け出せるとは誰も思っておらず、昨日から王宮は大パニックだ。


「あの転生者は英雄となり我が国の為に働いてもらわねばならんのだ!一刻も早く見つけ出せ!」

「もちろんでございます。現在早馬を各関所に向かわせ、冒険者の締め出しを行っております」

「ふむ、早馬ならば何日で関所に着く?」

「ほとんどの関所に1日強あれば到着いたします。いくら転生者とはいえ早馬より早く関所を超えることは不可能でしょう」

「ならよいのだが…よし下がって引き続き捜索を行え」

「ははぁ!」


 大臣は玉の間から出ていきラムスは一人となる。突然の事態に疲れているラムスは玉座にどっぷりと座り独り言を呟く。


「転生者か・・・これをうまく使えば今度こそわしはこの大陸の王になれる。何としてでも捕まえねばな…」


 ラムスは不敵な笑みを浮かべ今後の計画について思案し始めた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 夕方になりもう日が落ちるというところで関所を着いたサトル達。二人は安堵しながら関所の詰所にいる兵士の元に行く。


「すみません。通行証の発行お願いします」


 サトル達がなぜわざわざ関所を通って帝都を目指すのかというとこの通行証が必要だからだ。この通行証が無ければ密入国となり、帝都に入ることができないのだ。森や山などに入って見つからないように移動しないのはそのためであった。


「はいはい、身分証は何かお持ちですか?」

「これでお願いします。後ろの娘は私の従者です」


 サトル達は王国に追われる身の為もう王国発行の冒険者プレートは使えない。その為サトルの貴族の証明証を使って、コルモは従者を装うことにしたのだ。


「おや、貴族の方でしたか。従者と二人旅なんて珍しいですね」

「帝国の武器等に興味がありましてね。帝国で冒険者になろうと思ってるんです」

「冒険者志望の方でしたか。それで護衛の方がいらっしゃらないんですね。おっと無駄話が過ぎましたね。これが通行証です、どうぞ」

「ありがとうございます」


 こうして難なく関所を乗り越えたサトル達はもう追われる心配もないのでゆっくりと帝都を目指す。関所を通って三日後ついに念願の帝都に着いたのであった。旅の間サトルは毎晩コルモに悩まされ、嬉しいようなつらいような複雑な心境であった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何故見つからないのだ!」

「も、申し訳ございません!」


 数日前から王の間では怒号が飛び交っている。それもそのはず、絶対に捉えられると思っていた転生者が一向に見つからないのだ。何故大臣が関所に早馬が先に着くと思っていたかというと、転生者達が馬を持って逃げたと思っていなかったからだ。ただでさえ城門で囲まれていて脱出不可能な王都から、馬を連れて逃げれると思わないのはある意味当然なのだ。


「せめてどちらの方に逃げたのかわからんのか?」

「は、それがここ数日間で関所を通った冒険者は多く絞り込めておりません…」

「分かった。更に人員を増やし全力で事に当たれ!」

「ははぁ!」


 大臣が出ていくともう習慣と化した独り言が始まる。


「ちっ、使えんやつめ。このまま他国に言って英雄になったらどう責任を取るつもりなのだ…」


 大臣に対する恨み言を言っていると扉の奥から声がかかる。


「ラムス国王陛下!ゾンロイ王国冒険者組合長がおいでになられました!」

「よし、入れて良いぞ」


 ラムスが入室を許可すると扉が開きゾンロイが中に入ってくる。目にクマが出来たままであり、サトル達と分かれた時よりさらに疲れた顔をしている。


「かなり疲れた顔をしておるがどうかしたのか?」

「転生者の行方についてやることが山積みでして…見つけられずお恥ずかしい限りです」


 実際はその逆でサトル達の街での痕跡をもみ消したり、サトル達を目撃している冒険者の説得などを行っている。


「前も聞いたが本当にお前は転生者の名前を知らないのか?」

「はい、知りません。受付嬢のセレステは記憶改善の痕が見つかっていますし書類もすべて消滅しています。残ったのはドラゴンの死体だけですね。転生者は相当な力を持っているのは間違いありません」


 勿論これは大嘘だ。書類はすべて焼却処分し、セレステには頼み込んでそういうことにしてもらっている。


「ふむ、分かった。より一層力を入れ転生者を探すのだ」

「了解しました。国王陛下」


 ゾンロイも大臣と同じように王の間から出ていく。ゾンロイを見送った王は深く座り溜息を吐いた。


「ふん、あの男。あの手この手でわしの邪魔をしよって…」


 ラムスはお飾りの国王ではない。その智謀により王国の地位を盤石にしているのだ。そんな男にゾンロイの芝居は通用しない。しかし表面上はラムスの命令通りに動いているし、ゾンロイの証拠の消し方は完璧であった。


「わしは止まらんぞ、誰に邪魔をされようとも!どんな手を使ってでもこの大陸を手に入れてみせる!」


 そう言って邪悪な笑みを浮かべるラムス。そこにいるのは智謀に長け、国民から慕われている王ではなく一人の欲望に囚われた男であった。


 サトルもコルモも甘く見ていたのだ。自分たちの力がどれほどこの世界に影響を与えるものなのかを。その力を欲するために人一人を狂わせてしまうチート能力。転生者は世界を救う者であり狂わす者なのだ。


 いまだその事に気付かないサトル達は門へと進んでいく。新たな出会いと新たな厄介事の潜む帝都へと。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回更新は7月13日を予定しています。

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