第四話 魔術師は旅をする
コルモちゃん大活躍
王都をゾンロイの協力により誰にも見つからず王都を抜け出したサトル達。準備をしてあったとはいえ本当に二人を誰にも見られずに脱出させられる、ゾンロイの手際と権力の凄さに舌を巻く二人であった。
「本当に誰にも見られないなんて。王国組合長の肩書は伊達じゃないね」
「本当に驚きです~。口調が砕けてますからあんまり偉さを感じませんけど元英雄なんでしょうね~」
「コルモちゃんはゾンロイさんの武勇伝とか知ってる?」
「いえ、あんまり英雄の話を聞いたことが無いので分からないですね」
「そっかぁ。今度会った時に聞いてみたいね」
そんな他愛無い話をしながら街道を馬で走る二人。コルモも一日の練習で一応乗れる程度にはなったようだ。
「今向かってるのは帝都だけどコルモちゃん帝都について何か知ってる?」
「帝都は元々力があった王国貴族が皇帝となってできた国ですね~。先々代皇帝が王国から独立して国となった形ですね~」
「帝国の名に恥じない武力国家みたいだね」
「領土はそこまで大きくないですが専業騎士の方が多いので、武力ならば他国に引けを取らないようです~」
「そういえば他にはどんな国があるの?」
「この大陸にはあと共和国が一つあるだけですね~。他の大陸にはまだまだ一杯国があるらしいですけど」
「共和国?どんな国なの?」
サトルは王国や帝国はファンタジーものでよくあったので感覚的にわかるが、共和国はあまり見たことがなかったので分からなかった。歴史を多少勉強していれば知っているはずなのだがサトルは勉強が得意では無かったのだ。
「共和国は大商人たちが集まって作った国ですね。武力は強くないですけどこの大陸の経済の要になっている国です~」
「王族や皇帝みたいな人がいない国ってことか」
「そうですね~。1ヵ月に一回一定以上の財力がある商人が集まり、定例会議を行って国の大まかな方針を決めてるそうです」
「なるほどね。お金至上主義の国って事だね」
やはり民主主義の国は無いんだな。王族とか面倒だしそういう国があったらそこで永住してもいいんだけどなぁ。
割と堅苦しいことが苦手なサトルは大きな権力者が統治している国に長居したくなかったのだ。この世界では大きな権力者のいない地域など存在しないのだが…
話が一段落したのでちょっと急ぎ目で走る二人。王国の追手が来るまでに国境を越えなければこの計画はおじゃんなのだ。サトル達は王国兵に捕らえられるほど弱くはないのだが人間に危害を加えたくないので逃げるしかないのだ。
無心で馬を走らせる二人。太陽がそろそろ頂点というところでサトルが速度を落とす。コルモもそれに従って速度を落としサトルに質問をする。
「サトル君、どうして速度落としたんですか~?まだまだこのお馬さんはへばってませんよ?」
「今日へばるまで走らせると明日に響くからね。いい時間帯だしこの辺でお昼にしよう」
「それはいいんですけど~。サトル君に言われた通り調味料しか持ってきてませんよ?」
「だからここから一旦馬を下りて狩りをしよう。この辺はよく知らないけど多分取れると思うよ」
「その根拠は何なんですか!取れなかったら晩御飯も抜きなんだから頑張ってくださいよ!」
「任しといてよ!」
馬を下りて街道から外れ森の中を歩く二人。今回は残念ながらイノシシの痕跡を見つけることができなかったが野ウサギを見つけることができた。サトルは見つけるとちょっと早めに動きサクッと解体用のナイフで首を落とす。ついでに食べられる鳥もいたので石を軽く投げて撃ち落とす。運よく山菜も見つけることができた。
「サトル君の狩りを常識に当てはめて考えていた私がバカでしたね…ほんとその身体能力化け物ですよ~」
「これでもかなり抑えてやっているんだけどね。最初は抑え方が下手で大変だったよ」
狩りを始めたばかりの頃は力を抑えずに石を投げ、殴っていた。苦手な人が見たら即倒するほどのスプラッターな光景になっていたのだ。
「それだけあればお昼は大丈夫ですね~早速お昼にしましょうか!」
「コルモちゃんの料理楽しみだな~」
「あまりの美味しさに驚き倒れないでくださいね~」
割と近くに池があったのでそこで昼食を兼ねて休憩をすることにする。サトルが周囲の警戒と馬の世話を終えたころに料理が出来上がる。
「さあ出来ましたよ~。野鳥と山菜のサラダと野ウサギステーキです!」
「おお~めちゃくちゃ美味しそう!」
サラダは野鳥は茹でて山菜とあえて上からコルモちゃんの特製ドレッシングが掛かっている。野ウサギは豪快に焼いて上から塩コショウを振ってあるようだ。冷めないうちに食べないとな。
「いただきます。・・・美味しい!!」
「簡単に作れる奴だけですけどね~」
「いやいや!これを簡単に作れるなんてすごいよ!」
野鳥はドレッシングのおかげで臭みもなく山菜と合っている。この世界の一般的な調味料だけでこんなドレッシングが作れるのは驚きだ。野ウサギのステーキは確かに塩コショウだけだが火の通し方が完璧で噛めば噛むほど肉汁が口に溢れる。
「喜んでくれて良かったです~。このドレッシングは自信作だったんですよ~」
「ほんとこんなに美味しいならお店開けちゃうよ」
「もうサトル君言い過ぎですよ~」
こうしてサトルたちは満足な昼食を終え帝都に向けてまた出発したのであった。
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その日サトルたちはほぼ予定通りに帝都への道を進み、またサトルが同じように狩りをして夕食を終えた。夕食は昼のようなメニューにスープを加えた豪華な物だった。
「さて、今日はもう遅いしそろそろ休もうか」
「明日の為にもしっかり寝ないといけませんものね~」
「じゃあコルモちゃん先に寝ていいよ。見張りは僕がやるからさ」
「え?見張りなんてする必要ありませんよ~」
「そうなの?」
「ええ、この辺は魔物出ませんし、いても人間に襲うような魔物はいませんよ~」
前世の記憶から見張りが絶対必要だと思っていたサトルは拍子抜けだった。まあ見張りがしたいわけではないのでやらなくて済むのならいいのだが。
「何ぼーっとすてるんですか?早く寝ましょうよ~」
「う、うん。僕は何処で寝ればいいのかな?」
サトルは見張りが必要だと思っていたのでテントを一個しか買っていないのだ。勿論寝袋は2つ買っているが。
「テントが一個しかないんだから一緒に決まってるじゃないですか~」
その言葉を聞いてサトルは理解できず、またも機能が停止していた。数分後ようやく事態を理解したサトルは慌てふためく。
「ええ!い、一緒に寝るの!?」
「そうですよ~。パーティー組んでる冒険者なら普通ですよ~」
コルモの話によると人数が2,3人のパーティーでは男女が一緒に寝ることは普通なのだということだ。確かにわざわざ人数分のテントを買うのは無駄だし当然のことなのだが。未だに挙動がおかしいサトルはさらに質問する。
「で、でもいいの?コルモちゃんはそれで?」
「良いも何もテントが一つしかないからしょうがないじゃないですか~。それともサトル君は私と一緒に寝るのが嫌なんですか?」
「嫌じゃないけれど…」
「じゃあ決まりですね!明日も早いですしもう寝ちゃいましょう~」
こうしてサトルはコルモに押し切られ一緒のテントで寝ることになったのであった。勿論サトルはコルモの寝息が気になって眠れず一睡もできないし、コルモの甘い香りがするせいで大変なことになったのであった。
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次回更新は7月11日を予定しています。