第一話 魔術師は魔法を教える
ついに第2章です!
かなり動揺していたコルモを何とか落ち着かせたサトル。あのままコルモが叫んでいるとサトルにも変な噂が流れそうだったので、全力で落ち着かせたのであった。
「す、すみませんサトル君。取り乱してしまいました…」
「いや、あんなもの見たら誰でもそうなるよ」
「そうですよね!でもあんな素質初めて見ました~。自分以外に影響のある素質なんて聞いたこともありません」
「まあこれも神様の仕業だろうなぁ」
「でも、冷静に考えれば嬉しいです!これでサトル君について行っても迷惑にならない程度には戦えそうです〜」
「別に魔王と戦うわけじゃないからそんなに戦うこともないと思うけどね」
「それはどうでしょうかね~」
「どういうこと?」
「いえ、気づいてないならいいんですけど」
コルモはこの時点で気づいていたのだ。このような桁外れの力を持っていて厄介ごとに巻き込まれるに決まっていると。
「そういえば、コルモちゃんの元々の素質が消えていたけどどうしてだろう?上書きされるのかな?」
「前例がないから何とも言えないですけど、サトル君の素質が上位互換だから消えてしまった気がしますね~。素質の説明には”素質を付与する”って書いてありましたから~」
確かにそう書いてあったなと思いだすサトル。ここでサトルは大きな疑問が生まれた。
「こんな前例がない素質なのになんで説明が見えるんだろう?」
「それはですね~。ステータスチェッカーは魔法を封じ込めてある石板なんですが、その魔法が神力魔法だからですよ~」
「神力魔法?魔法に種類ってあるのかい?」
「そもそもサトル君は魔法についてどれくらい知っているんですか?」
「そういえばあるって事しか知らないね」
サトルは今まで剣術についてしか関心が無かったため、魔法について勉強してこなかった。RPG等だとレベルが上がれば魔法を覚えるが、この世界では勉強しなければならない。魔導所を買うか師匠を探さなくてならないが、田舎の貴族領にいい人材がいなかったのも一つの要因だが。
「では私が特別に魔法について教えてあげましょう~!」
「お願いします、先生!」
「いや、先生だなんてそんな…」
コルモはどうやら自分の得意分野を説明できるのが嬉しいらしく張り切っている。
「とりあえずは魔法の原理ですね。魔法はこの世界に存在する精霊たちの力を借り、自分の魔力を使用して発動する技です。基本は四大精霊の力を借りますね~」
「なるほどね、四大精霊って何がいるの?」
「炎の精霊サラマンダー、風の精霊シルフ、水の精霊ウンディーネ、土の精霊グノームですね~」
「そういえば戦闘中に名前呼んでたね」
「あれは詠唱ですね。基本的に詠唱が必要ですが慣れてくると無詠唱放てるようになるらしいです~」
「あれって詠唱さえ同じなら誰で使えるの?」
「もちろん素質の加護が必要になりますが、基本は詠唱が同じなら誰でも使えますよ~」
「そうなんだ!じゃあちょっとやってみていい?」
魔法は勇者がガンガン使うイメージが無かったため積極的に勉強してこなかったが、使えるのなら使ってみたいサトルであった。
「ちょ、ちょっと待ってください!部屋壊す気ですか!」
「あ、確かにそうだね。部屋でも使える魔法無いかな?」
「ええ、ありますよ~。では私に続いて唱えてくださいね」
「分かった」
そういってコルモは人差し指を上に突き立てて詠唱し始める。
「炎の精霊サラマンダーよ、我に力を与えたまえ。ファイヤ―ボール!」
唱え終わると同時に、コモルの人差し指の指先に炎の球が浮かび上がる。
「これが炎属性の初級魔法です。さあサトル君、やってみてください!」
「うん、いくよ…」
サトルは一度深呼吸をするとコルモと同じように詠唱を始める。
「炎の精霊サラマンダーよ、我に力を与えたまえ。ファイヤ―ボール!」
コルモと同じように指先に炎の球が生まれる。
「サトル君、成功ですね!」
「いや、成功できてよかったよ。でもこれって人によって威力とか同じなの?」
「見た目は同じですけど加護の素質のランクが高いと炎の密度が上がったりするそうですね~」
「じゃあ魔力ってステータスはどう関係してくるの?」
「あれは魔法を撃てる回数みたいですね。高いと大量に使えて低いと一回しか使えないみたいな感じだそうです~」
なるほど、ゲームでいうところのMPみたいなものか。しかし威力がそこまで火力が変わらないんじゃ、あの名台詞は言えないなぁ。
サトルは某RPGの漫画での魔王の台詞を思い出していた。実はサトルはその部分以外読んでいないのだが…
「で、この炎の球どうすればいいの?」
「消えろって思えば消えますよ~。ほら」
そうコルモが言うと言葉の通り炎の球が一瞬で消え去った。サトルも同じように心の中で消えろと念じる。するとコルモと同じように炎の球が消え去った。
「あ、消えたね」
「成功ですね~。これが属性魔法です!」
「魔法って凄い簡単に火を操れるね」
「簡単といっても素質が無いとそもそも使えませんけどね」
「それもそうだね」
「で、残りが無属性魔法と神力魔法です。無属性魔法の代表的な物は魔力付与と衝撃波があります~」
「魔力付与ってノリトが使っていたやつだよね?」
「それですね!魔力を刃先に集めて威力を高めてるんです。衝撃波は魔力そのものをぶつける魔法ですね」
「無属性って事は誰でも使えるの?」
「もちろんですよ。素質が無い戦士の人がよく使いますね。ただ属性魔法に比べて威力が乏しいのが難点です~」
「やっぱりそうなんだね」
まあ戦士が使う緊急的な物なのだろう。魔力付与は便利そうだから使ってみたいけどな。
「で、肝心の神力魔法なんですがこれはその名の通り、神様に力を借りて行う魔法だそうです。なので素質のことも分かるんでしょうね~」
「そういうことなんだね、しかし魔法は凄いね」
「ええ、弓矢しか遠距離攻撃手段が無かった時代からしてみれば革命的ですよね~」
「そんな時代あったんだ。それじゃあ魔法ってどうやって見つけられたのかな?」
「詳しくは知らないですけど…聞いた話では大賢者様が神様から託されたとか聞きました~」
「大賢者ねぇ…」
神様というフレーズと大賢者。これもまた前世の世界からきた人間なのだろうか?情報が無いから何とも言えないが…
「まあとにかくある時期から爆発的に広まったみたいですね~」
「そうなんだね。コルモちゃん、色々教えてくれてありがとう!」
「いいんですよ、仲間じゃないですか~」
「そうだったね。これからもよろしくね、コルモちゃん」
「こちらこそです~」
こうしてコルモの魔法講義が終わりその日はもう遅いので解散となった。明日の朝冒険者組合の前で待ち合わせする約束をして。
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王国の冒険者組合長、ゾンロイはドラゴンの件を報告しに王城へ来ていた。ゾンロイはふとため息を漏らす。
「はぁ…王宮に来るのは胃が痛いな。やはり俺は堅苦しい場は嫌いだぜ」
ゾンロイは王宮に来る度に胃を痛めていたが、今回はいつもより酷い。その理由は勿論
「王族は信用するだろうか。昨日冒険者になったばかりの12歳の少年が一人でドラゴンを両断したなどと…」
報告する内容がおかしいのだ。常識的に考えればありえない。だがドラゴンの死体をこの目で見たのだから信じるしかないのだ。そんなことを考えていると謁見間に通される。そこに居たのはやけにうれしそうな王の姿だった。
「よく来たな、ゾンロイよ。では早く聞かせてくれ。その冒険者、いや転生者のことを」
今回も読んでいただきありがとうございました!
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次回更新は7月5日を予定しています。