第十一話 勇者は隠居を決意する
第1章最終回です!
コルモが諦めたことでBランク冒険者が決定したサトル達。だがまだ、肝心な話が終わっていなかった。
「さて、君達のランクは決まった事だし最後に一番大事な話をしようか」
「一番大事な話?」
「そう、君達の報酬金についてだな」
え、お金が貰えるのか!金欠だったしありがたい事だな。これでまたあの宿に泊まれるぞ。
サトルは心の中では初めての収入に喜んでいたが、勇者は冷静沈着なのがいいと思っているので冷静なフリをしていた。
「そういえばその話はまだでしたね」
「今回のドラゴン討伐は、組合からの緊急依頼として処理させてもらう。そこである問題が発生するのだがね」
「問題ですか?」
緊急依頼とするのに何か規則でもあったっけと、セレステとの会話を思い出すが特に思い当たらない。何が問題なのだろうと考えているとゾンロイが疑問に答える。
「君に対する正当な報酬が分からないのだよ。なにせ冒険者組合が出来てから一度も、ドラゴン討伐依頼は出していない。前例がないのは困ったものだな」
「なるほど…」
確かにそれは難しい問題だ。ここで決まった金額が後にドラゴンを討伐した際の目安になってしまうのだから。
サトルは数分考えた後、いい事を思いつきゾンロイに聞いてみることにした。
「それじゃあ、今まで一番高難易度だった依頼は何だったのですか?それを基準に考えたらいいかと」
「ふむ、それがやはり妥当だろうな。今までに一番難易度の高いと思われる依頼は魔王軍四天王の撃退だな」
「四天王の撃退!そんな偉業を成した人がいるんですね!」
「もちろん君達みたいに少人数ではなく、組合の冒険者ほぼ全員が戦ったがね。それでも追い返すのが限界だったよ」
「それでも十分凄いと思いますよ」
「まあその話は置いといて、その時国から全員に対して100金貨が支払われた。今回は討伐、さらにドラゴンだという事を考慮すると今回は200金貨が妥当だろう」
「2、200金貨!?」
今日のコルモちゃんは驚いてばかりだ。いつものおっとりとした感じがどこかに行ってしまっている。
「て事は私100金貨ですか?そんなに頂けません!第一私何もやってないですし…」
「その話は何度もしただろ。君もランクが上がるんだから報酬を渡さなければおかしいだろう」
「そうなんですけど…」
「ま、そういうわけだ。今日は流石にそんな大金ないからな。明日にでも取りに来てくれ」
「分かりました」
やっと話が終わり緊張がほぐれるサトル。幾らサトルでも流石に真面目な場で威圧感のあるおっさんと話すのは疲れるのだ。席を立とうとするとゾンロイがおもむろに話し出す。
「おっとすまない忘れていた。確かゴブリンも君達は退治していたね。それの報酬金は今日渡そう」
「そういえばゴブリンも居ましたね」
「ゴブリンの普通の討伐報酬は、1匹2銀貨だ。詳しい数が分かっていないが約1000匹、4人パーティで割るから君達への報酬は5金貨だ。受け取ってくれ」
「ありがとうございます!」
こうして5金貨を手に入れたサトルはホクホク顔で組合を出て行った。1階にはさっきの一部始終を見ていた冒険者がいるので、無駄な混乱を避けるべく裏口を通って帰る事になった。
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サトルは現在、コルモと一緒に商業地区に向かって歩いている。5金貨手に入れたサトルは早速ある物を買いに来たのだ。
「サトル君、これって今どこに向かってるんですか〜?」
「実は前から気になってたステータス見ようと思ってね。ステータスチェッカーを買おうかなって」
「わざわざ買うんですか〜?お店行けば有料で見せてもらえるのに?」
確かにステータスを見たいだけなら店で測れば安上がりだ。だがサトルは、ステータスを他人に見られたくなかった。もしかしたら変な物が見えてしまうからもしれない。それが他人にバレるのは絶対に避けたかったのだ。だがそれをコルモに言うわけにもいかず、ありきたりな回答をしておく。
「手元にあった方がレベルアップが分かりやすくていいかなって思ってね」
「確かに手元にあった方が便利ですけどね〜。それにしても今日はサトル君に驚かされてばかりでした。ゴブリン達を一振りで倒していっちゃうし、ドラゴン倒しちゃうし、5分くらいで街に着いちゃうし…何だか一生分驚いた気分ですよ」
「いやいや、これくらい普通だって」
「サトル君の普通って何なんですか!しかも私までBランク冒険者にされちゃうし〜」
そう言われてサトルは、自分がどれくらいのランクに辿り着いたのか知らないことに気づいた。
「よく知らないんだけどBランク冒険者ってどれくらい凄いの?」
「そうですね〜。才能がある人とない人の差がBランクとCランクって言われてますね」
「つまり凡人の壁を乗り越えたってことか」
「そうなりますね。Aはさらに才能がある人、Sランクはまさに英雄ですね〜」
「なんか最後ざっくりとしてるね」
「だって私Aランク以上なんてみたことありませんよ。一応Aランクパーティーは現在王都に1チームいるらしいですけどね~」
「なるほどね」
確かにサトルは未だAランクパーティーを見ていない。もっとも王国に来て2日目なのだが。
「で、サトル君はどのお店に向かってるんですか~?ステータスチェッカー売ってる店は色々ありますけど」
「いや、どこにも向かってないよ。第一店の場所知らないし」
「すっごい適当ですね~。まあ商業地区にとりあえず行くのは正しいですけど。サトル君はどんなステータスチェッカーが欲しいんですか?」
「ステータスチェッカーって違いあるのかい?」
「はい、それはもうピンキリですよ。一番安い奴はレベルだけ見えるタイプですね。これは持ってる人多いですよ~。高い奴は素質の説明まで見えるらしいです~」
「それじゃあ一番いい奴が欲しいなぁ」
サトルが気になっているのは自分の素質だ。勇者適正とやらが果たしてどのような効果を及ぼしているのか、それが知りたいのだ。
「じゃあ一番有名なお店に行きましょう!きっとお目当ての物がありますよ~」
こうしてサトルはコルモに連れられて一番有名な店へといった。お目当ての素質の説明まで見えるステータスチェッカーが4金貨で売っていたため即決で購入した。ちなみにこれ以上高いものは宝石が付いていたりして装飾が凝っているものである。貴族などが好んで買うそうだ。
「良いものがあってよかったですね~」
「持ってるお金で買えてよかったよ。早速使ってみたいけどまずコルモちゃんが使ってみてくれない?」
「え、使っていいんですか?」
「うん、どんなふうに見えるのか気になるからね」
これもサトルがまず一般人だとどのように表示されるのか確認しておきたかったからだ。
「じゃあお先に使わせていただきます!えいっ」
可愛い掛け声とともに石板のようなステータスチェッカーに手をかざす。すると石板が輝きだし、文字が浮かび上がった。
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レベル: 6/28
筋力 :8
体力 :17
耐久力:13
素早さ:12
魔力 :28+魔力アップ[C]
素質 :魔力アップ[C]、炎属性の加護[B]、風属性の加護[D]
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「あれ?レベル上がってませんか、これ?それに魔力がかなり上がってる…」
「上がってるね」
「なんでこんなに簡単に上がってるんでしょうか…?」
どうやらノリトが言っていた通り上がりにくい物らしいのだが、あっさりとコルモはレベルが上がっていた。
「ドラゴンと戦ったんだからじゃないのかな?」
「私はドラゴンに何もしてませんよ!」
確かにそうなのだが何なのだろうか。まあ答えは出てこないしステータスの値について聞かないと。
「コルモちゃん、このステータスの値ってどれくらいが普通なの?」
「全ての数値が、平均的な鍛えていない成人男性を10として考えてあるみたいですね」
「なるほど、分かりやすいね」
そう考えてみると筋力は流石に成人男性に負けてるけど、それ以外では勝ってるんだな。
「英雄の方々はこれが全て100を超えてるらしいですよ~」
「100!それまた次元が違うね」
「ですから英雄なんでしょうね~。それよりも早くサトル君のステータス見ましょうよ!どれくらい筋力があればその武器持てるんでしょうかね」
「…よし、いくよ」
サトルは覚悟を決めてステータスチェッカーに手をかざす。先ほどのように輝きだし文字が浮かび上がる。そこにはとんでもない数値が浮かび上がっていた。
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レベル: 99/99
筋力 :999+全能力アップ[S]
体力 :999+全能力アップ[S]
耐久力:999+全能力アップ[S]
素早さ:999+全能力アップ[S]
魔力 :999+全能力アップ[S]
素質 :全能力アップ[S]、全属性の加護[S]、勇者の加護
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「・・・・」
「・・・・」
「これ不良品ですかね?」
「不良品ってあるのか?」
「聞いたことないです…」
「・・・・」
「・・・・」
「せっかく異世界来たのになんだよこのクソゲー!」
サトルの絶叫が王国中に響き渡る。だがその叫びの意味を正しく理解できたものは誰一人いなかった。
今回も読んでいただきありがとうございました!
タイトル回収まで長かったですね。
よろしければブックマーク、感想お待ちしております!
大変申し訳ないのですが、書き溜めが無くなってきたので隔日更新に変えさせていただきます。
次回は7月1日の更新を予定しています。