第十話 勇者はBランクとなる
王国へと帰ります!
コルモちゃんの出番がかなり増えてきましたね!
ドラゴンを倒した後、サトルとコルモは王国へ向けて急いで帰って行った。コルモは大丈夫だと言ったが、魔力を使い果たした影響で倦怠感に襲われており走れる状況ではなかった。急いで帰らなければならないが戦闘能力が無くなっているコルモを置いていくわけにもいかず、再びコルモをお姫様抱っこしながらの移動をしている。この姿を見られると恥ずかしいとコルモが言うので仕方なく、街道ではなく森の中を疾走するサトル。それでも行きに30分以上掛かった道を5分で帰ったのだから、サトルの化け物具合がよく分かる。
城門の前が近づいてきてコルモを降ろすサトル。コルモはあまりの恥ずかしさに目を瞑っていたため、突然降ろされたことに困惑する。
「サトル君?まだ着いてないのにどうして降ろして…ええ!なんでもう城門が見えるんですか!?」
「そりゃ勿論、王国に着いたからだよ。ここからはもう歩けるよね?」
「う、うん。もう大丈夫だけど…サトル君、もしかして転移呪文でも使えるの?」
「いや、魔法は習ってないから魔力の使い方知らないんだよね」
サトルは転移呪文もあるんだなと思いつつ、コルモと城門の門番まで向かう。今は緊急事態だから勿論列に並んだりはしない。
「おい、そこの冒険者!ちゃんと列に並んでくれ!」
「すみません、緊急事態なんです。ここにノリト君達が来ましたよね?事態について何か聞きましたか?」
「ああ、お前らノリトのパーティーメンバーか。数分前に来て緊急事態だから通してくれと言われて通したぞ」
冒険者はそもそもプレートで身分が証明できている。ただ他の者と差が出来ないよう並んでいるだけなのだ。勿論ランクが上がれば顔パスになるが…。だが冒険者は緊急事態に遭遇する確率が高い職業だ。なので例外として列に並ばず、通してもらえるようにすることができるようになっているのだ。
「よし、それならば通っていいぞ」
「ありがとうございます!」
こうしてサトルたちは門を超え、急いで冒険者組合に向かったのであった。
冒険者組合は外から分かるほど騒がしかった。一応サトルの知っている範囲ではドラゴンはここ数十年人間の前に姿を見せておらず、敵対行動も数百年の間取っていない。ところが今回は明確に人間に対して敵意を示したのだ。ドラゴンが敵対した理由はただの暇つぶしなのだが、それを知る者はもうこの世にいない。
サトルはあまりの喧騒に一瞬、中に入るのを躊躇ったが意を決して中に入る。すると冒険者組合中の視線がサトルに集中した。そして喧騒の中心にいたノリトがサトルを見て驚愕の表情浮かべる。
「サ、サトル君!生きていたのか!それにコルモちゃんも!どうやってあの状況から!?」
「いやぁ、あのドラゴンそんなに強くなかったからコルモちゃんと協力して倒せましたんだよ」
室内は静寂に包まれる。サトルは自分が何を言ってしまったのか気づいていない。
「「「「「「「そんなわけあるか!!」」」」」」」
冒険者組合にいた全員から突っ込まれたサトル。そのあとノリトが代表してサトルに問いかける。
「本当にドラゴンに勝ったのか?ここで無理に意地を張らなくていいんだぞ?」
どうやらノリトはサトルが嘘をついていると思っているようだ。どう説明していいのかと考えていると、3階から無精髭を生やした見るからに戦士という体つきをした男が降りてきた。
「ゾ、ゾンロイ組合長!」
ノリトがまたも驚愕の表情を浮かべる。どうやらこの冒険者組合の長のようだ。
「ふむ、サトル君?といったかな。その話詳しく聞きたいのだが着いてきてもらっていいかい?」
「はい、もちろんです」
「では、後ろの子も一緒についてきてくれたまえ」
こうしてサトルとコルモは応接室に通されたのであった。サトルとしても最高責任者に話してしまえば後が楽だと思っていたので渡りに船であった。応接室では紅茶が出され、急いでいたため十分に水分補給していなかったサトルは一気に飲み干した。コルモもゆっくりと飲んではいるが、相当のどが渇いていたのかそのまま飲み干した。二人が落ち着いたのを見計らって、ゾンロイが話し始める。
「さて、知ってはいると思うが一応自己紹介をしておこう。ここの長をやっているゾンロイという者だ」
「僕は先日冒険者になったサトルといいます。彼女はパーティーメンバーのコルモちゃんです」
サトルが軽く会釈し、それに釣られてコルモも会釈する。
「では単刀直入に聞こう。ドラゴンを討伐したのは本当か?」
「はい、僕がコルモちゃんと一緒に倒しました」
ちなみにさっきからやたらサトルが一人でないことをアピールしているのは、今更一人で倒すのが変かもと思ったからである。一人が二人になったところで、ドラゴン討伐があり得ないのは変わらないのだが…
「ふむ、それは本当か?パーティーメンバーと結託して嘘をついているのでは?」
「いえ、違います。死体が残っているので確認してもらってもいいですよ」
「ほほう、ならばその場所を教えてくれるかな?部下に確認にさせてくるとしよう」
「いいですよ」
こうしてサトルはドラゴンを討伐した場所を大体で教えた。ゾンロイが部下に指示して馬を走らせ約12分後、青ざめた部下が応接室の扉を叩いた。
「失礼します!報告によるとサトル様の示した地点にて、レッドドラゴンと思われるドラゴンの死体が両断された状態で発見されました!」
「そうか…ご苦労、下がっていいぞ」
ゾンロイの部下は深く一礼すると部屋を退出していった。
「サトル君、疑ってすまなかった。この国の英雄を疑うような真似をして恥ずかしいばかりだ」
ゾンロイはそういうと深々と頭を下げる。もう少しでテーブルに額がついてしまいそうだ。
「謝らないでください、ゾンロイ組合長。誰だってこんな少年がドラゴンを倒したっていったら疑いますよ」
「そう言ってもらえるとありがたい」
「でも一つ誤解してますよ。あのドラゴンは多分かなり弱い個体なのでしょう。だから僕でも倒せたんです」
「う~む、記録上は弱い個体など存在してしていないし、いくら弱くてもドラゴンなのだが…まあ張本人がそういうのならばそうなのであろう」
ゾンロイは大人であった。物分かりがいい人で安堵するサトル。コルモは終始サトルの横で固まっている。こういう場所に慣れていないのだろう。サトルは慣れているわけではないが精神年齢は高いので乗り切れている。
「さて、弱いとはいえドラゴンを倒し国を救ったのだ。君と彼女のランクを今すぐにでもSランクにしたいのだがいきなりSランクというのは難しい。すまないがBランクでとりあえずはどうだろうか?」
「ええ、それで僕は大丈夫ですよ」
「ええ!ちょ、ちょっと待ってください!わ、わたしもですか!?」
「勿論だ。サトル君は、君と一緒にドラゴンを倒したのだからな」
「いや、それはサトル君が勝手に言っているだけで!実際は!」
「まあまあ、そう焦るな。これは対外的にも必要なことなのだ。流石にいくらドラゴンが弱かったとしてもやはり一人で倒したというのはあまりに非現実的すぎる。まだ二人なら言い訳になるだろう」
どうやらゾンロイはサトルが一人でドラゴンを倒したのに気付いているようだ。だからこの判断は妥当だとサトルも思うので口出しはしない。
「でも、まだレベル一桁の私がBランクだなんて!」
「今からでも強くなっていくのは遅くないだろう。それに君の隣には、ドラゴンを倒して平然としている男がいるじゃないか」
「それは、確かにそうですけど…」
このあともコルモは反論をしていくがどれも決定打にならない。最後はコルモも諦めたようだ。こうしてサトルは冒険者になって二日目にしてBランク冒険者となったのであった。
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