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征服順調? 動画から

 なんかおもしろい動画ないかなぁと、テキトーに探していたら、こんなのを見つけた。

 『まおーちゃんねる』

 なんだろう、これ? ちょっと見てみようかな。

 『どーもッス。全世界の勇者御一行様、ちゃんと魔王城目指して旅してるッスか?』

 映し出されたこの金髪の男性、どっかで見たような……

 「何見てんの? あ、魔王じゃん。」

 「魔王?」

 「2カ月くらい前かな? 魔王城で勇者と戦ってるの、近くで取材してたどっかのテレビ局が偶然撮影したのが話題になったじゃん。」

 「ああ、あの時の。」

 「やっぱカッコイイー! カッコいいっていうか、かわいいよね。髪の毛とかふわふわしてて、童顔で、魔王って言われなければ、アイドルグループのメンバー?みたいな。」

 「ぱっと見、そうだね。実際、君に言われるまでそうかなぁって思ってたし。魔王っぽい感じ、あまりないよね。しゃべり方もその辺にいる若者っぽいっていうか、軽いっていうか。」

 「そうそう。チャラいおにーちゃんみたいな感じだよね。で、なに配信してんの? 魔王。」

 「今再生したばっかだからよくわからないけど。」

 『城近辺はおろか、城から2つ3つ離れた町や村からも、勇者情報入ってこないんスよねー。もしかして、オレ様の城、知られてなさ過ぎ?』

 「魔王の城って、あの、観光地化されてるトコ?」

 「バトルの後、引っ越すって言ってたから、あの城とは違うんじゃない?」

 「引っ越す、って、どこに越したのかな? アパートとか?」 

 「『今度となりに引っ越してきました、魔王です。』的な? ないない! あり得ない!」

 「じゃあ、貸家?」

 「魔王だよ? ちゃんとそれっぽい空き城に越したんじゃない?」

 「空き城……」

 『場所わかんなかったら、ぐぐーるさんに聞くといいッス。便利ッスね、ぐぐーるさん。お、クチコミとかもあるッスね。えーと、『さすが本物の魔王城! 迫力満点です。』話聞かないんスけど、近くまで誰か来てたんスかね。一般の方なら魔王せんべいで、勇者御一行なら、城が誇る最凶の仕掛けと城内でしか現れない最強のモンスター達が丁重に『おもてなし』するッスよ。』

 心の底まで凍りつくような冷ややかな光を瞳の奥に宿し、不敵な笑みを浮かべる魔王。

 「キャーッ! このカオ、マジ好き過ぎーっ! これ見ると、やっぱ魔王ってカンジするよねーっ!」

 「僕はゾクッとするだけなんだけど……」

 「それがいいんじゃん!」

 「……そういうモンなんだ。」

 『えーと、その他には……『時々ホンモノの魔王が来るらしいです。』ん? 来るも何も常駐ッスよ? オレ様。『魔王庵の食事、美味しい! ツアー客だけじゃなく、一般客も利用できます。』『城近くのお土産屋さんが充実。』『魔王庵のウエイターさん、マジ、イケメン! メガネ男子は正義!』あ、これ全部、以前の魔王城のことッスね。今の魔王城は……えっ? 登録しないとダメなんスか? じゃあ、エンカウントしたモンスターに聞いてみ? ウチのコ達、優しいから、魔王城までの道順教えてくれるッス。たぶん。』

 「優しいモンスターって何!?」

 「初期モンスターって割とかわいいじゃん? そういうのじゃない?」

 『あ、でも、人間の言葉がわかんないコもいるから無理ッスね。ま、頑張って探してねー。外観は、以前の魔王城と同じだから、わかりやすいと思うッス。』

 「そういえば、となりの国で、一夜にして城が建ったとかいううわさ話聞いたけど、もしかしてそれが新しい魔王城なのかなぁ?」

 「かもね。最近、ちょいごつい感じのモンスター、この辺でも見かけるようになったし。」

 『魔王城みかけたよー、ってヒトは、勇者御一行に情報提供してあげてねー。』

 「自分で提供しようよ、新住所! ぐぐーるさんに登録してよ!」

 「まあ、村人A、町人B、ただのしかばねCから情報得て、魔王城目指すのも、冒険者達の醍醐味なんじゃないの? よくわかんないけど。」

 「ただのしかばねC……」

 『2代目魔王城出来てからまだ1、2カ月くらいッスか? だから、勇者御一行来るにはまだ早いかもッスけど、にしても暇。あまりに暇過ぎてこの度、猫飼い始めましたー!』

 魔王はカメラを持ち上げ、ソファの上にいる猫を映し始めた。

 「魔王が猫ぉー?」

 ソファの上には、元気に遊んでいる子猫が2匹、誰かの膝の上でぐっすりお休み中の子猫が1匹。

 「やぁん、3匹とも超かわいいじゃん!」

 「いやいや、かわいいとかじゃなくて、いや、猫はかわいいけど、魔王が猫飼うとか……ええっ?」

 『こっちには、ママさん猫もいるッスよー。』

 おそらく女性のものと思われる細い腕の中には、大人の猫が1匹。

 『どうッスか? 美人さんッしょ?』

 「マジ美猫ーっ!」

 「あ、うん、びねこ……びねこって言うの!?」

 『城の庭で弱ってたのを保護したッス。諸事情で、城内、猫NGだったんスけど、なんやかんやでクリアになったので、晴れて家族としてお迎えしたッス。』

 「4匹とも保護したんだぁ。魔王やさしい~。」

 「……魔王だよね?」

 『ちゃんとお医者さんにも診てもらったッス。みんな特に問題なしって言われて、一安心ッス。』

 「ちゃんと診てもらったんだー。えらいね-。」

 「……動物病院に行ったんだ、魔王が。」

 『もう少ししたら、ワクチン打ちに来なさいって。お年頃になったら、手術も考えなさいって言われたッス。頑張ってお金貯めないとッスねー。お医者さん以外にも、毎日のごはん代とか、トイレ砂とかの消耗品の出費とか、動物を飼う時は、そういうコトもちゃんと考えないとダメなんスねー。』

 「そうそう。動物って、割とお金かかるんだよねー。」

 「……貯めないといけないほど、金銭的に余裕ないんだ、魔王なのに。」

 魔王いわく、ママさん猫を映していたカメラは、それを抱いていた女性の姿も映るように、猫から少し遠ざかる。

 『猫シッターさんッス。猫飼い初心者のオレ様だけじゃお世話しきれないッスからね。こちらがイチコさん。』

 魔王に紹介された女性が優雅に微笑む。

 『こんにちは。イチコです。』

 「うわ、綺麗な人だねー。」

 「シルバーのサラサラロングヘア、めっちゃイイっ!」

 「男女関係なく、綺麗な人好きだよね、君って。」

 「スッピンだよ、絶対! 超色白~い! カオちっちゃーい! まつげ長っ!」

 「画面越しでよくまぁそこまでわかるね。」

 「背ぇ高くてスラッとしてるけどちゃんと胸あるし、腰細くて、足も長ーい!」

 「……ホント、よく見てらっしゃいますね。」

 「メガネめっちゃ似合うっ! メガネ女子万歳っ!」

 「…………引くくらいの好反応、ありがとう。」

 カメラがソファのほうに振られ、膝に子猫を乗せた男性を映し出す。

 『で、こっちがユウさん。』

 『……何撮ってんだよ。』

 「ヤバっ! 魔王とは全く別のタイプだけど、この人もイケてる! 黒髪でいい感じの無造作ウルフ、ヤバくない? ワイルドだけど、シュッとしてて、愛想なさそうだけど、そのぶっきらぼうな感じがイイみたいな?」

 「すっごく機嫌悪そうな上に、魔王にタメ口だったよ、この人……」

 『あー、そんな怖いカオしちゃダメッスよ。全世界に配信されてんスから。』

 『全世界に配信? ヒトが寝てる間に、何始めたんだよ?』

 『何って、言っておいたじゃないッスか! ニャンズの名前を皆さんから募集するために、動画撮ろう、って。』

 『マジでやる気だったのかよ? じゃあ、猫だけ撮れば良くね?』

 『そのつもりだったッスけど、誰かさんがニャンズルームで猫浸ねこびたって、しかもそのままソファで寝ちゃって、オマケにその膝でコニャンもぐっすりなんスから、仕方ないじゃないッスか!』

 魔王がカメラをどこかに置いたらしく、部屋の様子が見えるようになった。

 相変わらずソファの上で遊ぶ2匹の子猫。

 何やらもめている魔王とユウさんとかいう男性。

 その喧騒の中でも、ユウさんの膝で眠り続ける子猫。

 それらを微笑みながら静観していたイチコさんが母猫をソファに下ろし、口を開いた。

 『まあまあ、いいじゃないですか、ユウさん。撮られたからといって、減る物でもありませんし。』

 『……まあ、そうだけど、って、誰? この人。』

 『いつまで寝ぼけてる気ッスか! ユウさんと同じ、猫シッターのイチコさんじゃないッスか!』

 『猫シッター? イチコさん? あ、なんだ、イッコマ……むぐっ!?』

 なぜが突然、ユウさんの口を手のひらで塞ぐ魔王。

 『イ・チ・コ・さ・ん、イチコさんッス。OKッスか、ユウさん?』

 口を抑えられたまま、コクコクうなずくユウさん。

 それを確認し、魔王はユウさんから離れた。

 「このユウさんって人、ホントにシッターさんかな? 言動が他の2人と噛み合ってないような……魔王にもタメ口だし。」

 「そう? 魔王の言う通り、寝ぼけてるだけなんじゃん?」

 『ところで、ユウさんって誰?』

 「ユウさんって誰?って……自分のこと、誰とか言いだしたよ、この人! 寝ぼけてるってレベルじゃないでしょ、これ?」

 『もうっ! どこまで残念仕様なんスかっ!』

 『残念言うなっ! そもそも、お前のネーミングセンスが残念過ぎるから、ややこしいコトになってんじゃねぇかっ!』

 「わわわ、魔王をお前呼ばわりって。何者だよ、ユウさん……」

 『残念なヒトに残念って言われるのは心外ッス!』

 『心外も何も事実だろうがっ!』

 『オレ様は一生懸命考えてるッス! 名前考えるのって、結構難しいんスよ? オレ様のコト、どうこう言うくらいッスから、さぞかしセンスあふれまくりな名付けができるんでしょうね、ユウさんは!』  

 『はぁ? お前の猫だろ? なんで俺が名前付けなきゃなんねぇんだよ。』

 『オレ様が考える名前を全否定するなら、お手本見せろって言ってんスよ!』

 『あーっ、面倒くせぇなぁ! 魔王が飼ってる猫、魔猫まねことかにしとけよっ!』

 『…………』

 「…………」

 画面の中と外、一斉にシーンとなる。

 そりゃまあ、ねぇ。

 魔王がどんな名前を考えて、ボツにされたか知らないけど、魔猫はないよ、魔猫は……

 『……悪くないッスね、魔猫。』

 「へっ?」

 「うん、割といいじゃん、魔猫。」

 「はいぃ?」

 まさかの肯定派が画面の中と、僕のとなりに。

 『いや……いやいや、ないだろ、魔猫は!』

 だよねぇ、ユウさん!

 あなたが言い出した名前だけど。

 『え、かわいいじゃないッスか、まねこ。』

 「え、かわいいじゃん、まねこ。」

 ほぼ同時に!

 なにこのシンクロ率!?

 『ね、イチコさん、悪くないッスよね、まねこ。』

 『魔王さんがそれで良いのでしたら、異存はありませんよ。』

 『ちょ、イッ……イチコさん! コイツに流されないでちゃんと考えてくれよ! どう考えてもダメだろ、まねこなんて名前!』

 『そうですねぇ……』

 ユウさんと違って、魔王に従順そうなイチコさんだけど、かわいい猫達のためにも、全力で阻止してくださいっ!

 『1つ問題点をあげますと、まだ1匹分ですよね? あと3匹の名前はどうなさるんですか?』

 いや、問題点はそこじゃない気がするけど、魔王が考え直すきっかけになれば……

 『せっかくですから、4匹に統一感がある名前なんてどうでしょう?』

 ナイスな誘導です、イチコさん!

 『あー、なるほど-。さすがイチコさんッス。』

 ユウさんもホッとしたようなカオをしている。

 「えーっ、いいと思うけどなー、まねこ。」

 定着する前に、別の名前つけたげて!

 『あ、思いついたッス。『まねこ、みねこ、むねこ、めねこ、もねこ』統一感バッチリッス!』

 アカーンっ!

 『バッチリじゃねぇよっ! おい、マジやめろよ、そんな名前!』

 『えっ? ダメなんスか? ユウさんが言い出したんスよ?』

 『そうだけど! そこは、『なんスか、その名前? やっぱり皆さんから考えてもらうッス』って流れだろう!?』

 『公募もいいッスけど、自分達で決められたら、それはそれでいいじゃないッスか。ね、イチコさん。』

 『魔王さんがそれで良いのでしたら、異存は……』

 『唱えてくれよ、『異』を!』

 『そうですねぇ……問題点をあげますと、5匹分の名前になってしまったところでしょうか?』

 『どうでもいいって、そこはっ!』

 「どうでもいいよ、そこはっ!」

 今度は僕がユウさんとシンクロしてしまった。

 『んー、じゃあもう1匹見つけてくるッス。』

 『あ、それはいい考えですね、魔王さん!』

 『数のほうを合わせるなっ! 名前をどうにかしろって! まねこ、みねこって、メスはまだいいけど、オスもいるん……』

 そこで突然画面が真っ暗になった。

 「……えっ? パソコン壊れた?」

 「いや、魔王のカメラがバッテリー切れなんだと思う。」

 「名前どうなったんだろー。めっちゃ気になるーっ! 今のってライブだったの?」

 「んー、たぶん。」

 これ以前の動画も、これ以降の動画も見当たらない。

 「更新して、名前発表とかしてくんないかなぁ。ただただ、魔王城の日常を配信してくれるだけでもいいんだけど。猫に魔王にイチコさんにユウさん、魔王軍団に癒されたい! 目の保養しまくりたい!」

 「魔王軍団に癒されるとかって……」

 魔王って、そういう存在だっけ?

 魔王はともかく……

 パソコンを閉じ、以前から考えていたことを口にしてみる。

 「魔王軍団は無理だけどさ……」

 「ん? なに、どーしたの?」

 「猫ならお迎えしてもいいかな、って思ったんだけど。」

 「えっ?」

 「動物の保護施設とか、里親募集とか、譲渡会のチラシとか見る度に、僕も飼ってあげられないかなぁって思ったりして。でも、僕が1匹2匹引き取ったところで何の役にも立たないよなとか思ったら、やっぱやめとこうかな、の繰り返しで……」

 「役に立つとか、考えなきゃダメなの?」

 「えっ?」

 「何の役にも立たないなら飼っちゃダメなワケ? ちゃんと世話できるかなとか、最後まで責任もてるかなとかは考えないとだけど、ペット飼うことで誰かの役に立とうとか考える必要なくない?」

 「……確かに。」 

 「でしょ? 責任もって飼えるなら、シンプルに、飼いたい!でいいじゃん。わたしも、猫と一緒に暮らしたいなっ!」

 圧倒的なパワーを持つその明るい笑顔に、迷いが吹き飛ぶ。

 「行ってみよっか、保護施設。」

 「行くーっ! よしっ、行こう! 早く早くー!」

 「ちょ、ちょっと待って! えっ、今から? 場所調べないと無理だよ。」

 「ぐぐーるさんに聞くッス!」

 「にしたって、今すぐには……」

 「待っててねー、まねこ、みねこ、むねこ、めねこ、もねこ-!」

 「5匹は絶対無理だよ! あと、その名前もダメだから……って、ちょっと待ってってっ!」



 「ただいまー。あれ? 魔王いねぇの?」

 「お帰りなさい、勇者さん。魔王さんはニャンズルームに。」

 「ああ、エサの時間か。」

 「魔王さんに何かご用ですか?」

 「んー、アイツに、っていうか……」

 バイトから帰った勇者は、リュックの中から封筒の束を取り出した。

 「わっ、何ですか、それ?」

 「ニャンズのごはん終了ー……あ、帰ってたッスか。お疲れッス。」

 4匹の猫と共に、魔王が食堂にやって来た。

 「お、なんスか、その大量の封筒。ファンレター? さすが魔王庵のイケメンウエイター!」

 「違ぇよ。よく見ろ。」

 勇者は、封筒をテーブルの上に並べた。

 封筒の宛名には、

 「『魔王様』『イチコ様』『ユウ様』『魔王城一同様』?」

 「最近、あっちの城にこういう手紙が届くようになったんだってさ。手紙の他にも……」

 リュックの中から、キャットフードや、猫の遊び道具などを次々と取り出す勇者。

 「これは……あの動画の影響ですかね?」

 「たぶん。こっちの住所わかんねーから、向こうに送ってんだろうな。向こうの管理者が困ってたから、誰もいないうちに回収してきた。」

 「さすが勇者! ヒトんちのものを勝手に持ち去るのはお手のものッスね。」

 「空き巣みたいに言うなっ!」

 「色々いただいて、何だか申し訳ないですね。」

 「ほらほら-、いろんなおもちゃもらったッスよー。」

 ど定番のじゃらしを子猫達の前でパタパタさせる魔王。

 それを夢中で追いかける子猫達。

 「これはなんスかね? ビニールシートみたいな……床に置いてスイッチを入れると……あ、シートの下で何かクルクルしてるッス! それをニャンズが追いかけるんスね。なるほど-。」

 子猫達もさることながら、母猫も興味を示している。

 「楽しそうでいいですね。」

 「猫以上に魔王がな。」

 猫達と一緒になって遊んでいる魔王を横目に、勇者とイッコマエは椅子に座り、封筒の山に手を伸ばした。

 「『一見、知的美人なのに、天然入ったイチコさん、すごくかわいいです!』えっ、天然ですか? 私。」

 「んー、まぁ時々? 『ユウさんのツッコミと自分のボケで、1度漫才がしたいです。一緒にお笑いで天下取りませんか?』何の勧誘だよっ!」

 「『魔王様かわいい! 動物病院ににゃんこ達を連れて行ったところを想像して、ニヤけちゃいました。』」

 「『魔王様とユウさんのやり取りをハラハラして見てました。魔王様相手にあんなに喧嘩腰なユウさんって何者ですか?』」

 「『まおちゃん見ました~! にゃんこ達、可愛すぎて、キュン死しそうでした(*^o^*)』」

 「『まおーちゃんねるを見て、なんだかほっこりしました。4匹のお世話は大変だと思いますが、イチコさん、ユウさんと協力して頑張ってください。』」

 「『まおーちゃんねるに影響され、譲渡会でにゃんこに会って来ました。1匹だけですが、我が家にお迎えすることにしました。名前はもちろん『まねこ』です(笑)』」

 「『無性に猫を飼いたくなり、保護施設に行ってみました。あいにく、猫はおらず、帰ろうとしましたが、1匹の犬に心奪われ、そのコを連れて帰りました。今ではなくてはならない存在です。このコとの出会いを与えてくれたまおーちゃんねるに感謝です。』」

 「『動物大好きなんですが、アレルギーがあって飼えません(>_<)なので、動物動画いろいろ見てます。まおーちゃんねるはかわいいにゃんこに加えて、魔王城の皆さんが見れてサイコーです! また配信してください!』」

 「『映像が途中で終わってしまい、猫達の名前がどうなったのか、ずーっと気になっています。新しい動画を是非!』」

 「『名前が気になります! あのまま決定ですか?』」

 「『まねこ達は元気ですか? また皆さんの様子が知りたいです。』だとさ、魔王。」

 「2人とも見て見て! ほら、このおもちゃ、コニャン達に大人気ッスよ!」

 「聞いとけよ、こっちの話!」

 「あれ? 動画撮ってるんですか?」

 「撮ってるッスよ。内緒でお世話してた頃からずーっと撮ってるッス。」

 撮影を続けたまま、魔王は指先で床に魔法陣を描き、陣の中に現れた物をイッコマエに渡す。

 「SDカード、ですか?」

 「パソコンで見れると思うッス。」

 さらに召喚したパソコンを勇者に渡す。

 「それをそのまま配信しても、編集してから使ってもいいんじゃないッスか?」

 「聞いてたのかよ。」

 「頑張って漫才で天下取るッスよ、ユウさん。」

 「取らねぇよ! てか、すっげぇ最初から聞いてんじゃねぇか!」

 「誰も、聞いてないとは一言も言ってないッス。」

 「─────っだーッ!!」

 「あ、キレたッス。」

 母猫と共に、パソコンを覗き込んで、動画のチェックをするイッコマエ。

 「ニャーニャー」

 「ええ、そうですね。これらも徐々にアップしていけばいいと思いますが……」

 「……イッコマエさん、今、猫と会話……」

 「ニャ、ニャーニャー」

 「そうですよね。まずはいただいた物のお礼と、あなた達の名前を正式に発表したほうがいいですね。」

 「いや、あの、なんで猫と話せんの!?」 

 「そうッスね! じゃあさっそく……」

 「お前も少しは気にしろよっ!」

 「動画撮影の前に、私達も夕食にしましょう。」

 「はーいッス。」

 「……うん、魔族だもんな。なんでもアリだよな。」

 「あれ? イッコマエさんって、猫の言葉わかるんスか? うらやましいッス。」

 「いまさらかよっ!」



 「あ、まおーちゃんねる、更新されてる! てか、今やってるトコ?」

 ブンブンと音が聞こえそうな勢いの手招きで呼ばれ、パソコンの前へ。

 『お久しぶりッス! なんか、予想以上の反響にびっくりしてるッス! 旧魔王城のほうにたくさんのお手紙や、ニャンズへのプレゼント送ってくれて、ありがとうッス!』

 『ありがとうございます。』

 『あざっす。』

 『ニャー』

 『旧魔王城付近のモンスターから連絡もらって、ちょこっとお邪魔してきたッス。誰もいなかったから、無断で持って来てゴメンッス。空き巣が入ったワケじゃないッスから、お巡りさん呼ばなくて大丈夫ッスよ。』

 旧魔王城に送られてきた物を映しながら魔王が言う。

 『見ての通り、ニャンズも大喜びッス。』

 思い思いのおもちゃで遊ぶ子猫達のかわいらしい姿が映し出される。

 『前回、ニャンズの病院代貯めないと、っての、本気発言じゃなくて、言葉の綾?みたいなつもりだったんスけど、あら、魔王ってば、お金に困ってる?って心配させちゃったみたいで、ニャンズのごはんやおもちゃをたくさんもらったッス。とってもありがたいッスけど、オレ様んトコは大丈夫ッスから、どうぞお気遣いなく~。』

 『ご心配をおかけいたしまして、申し訳ありませんでした。』

 『この前、ニャンズの名前が決まる前に終わっちゃって、ゴメンでした。あれから、ユウさんの鬼のようなダメ出しを受けながら、頑張って名前つけたッスよ。』

 『人聞きの悪ぃ言い方すんなっ!』

 『訂正するッス。ユウさんとイチコさんと相談しながら、ニャンズの名前決定したッス。ではでは1匹ずつ。えっとー……』

 『おい、バッテリー切れマーク出てねぇか?』

 『えっ? あ、ヤバいッス! イチコさん、充電器! そこにあるやつッス!』

 『これですか?』

 『それ、スマホのヤツじゃね?』

 『あれ? ホントだ。ちゃんと置いておいたんスけどねぇ、その辺にポイッと。』

 『ポイッと、って、放置って言うんだよ、そういうのはっ!』

 『こちらは?』

 『パソコンのやつッスね。』

 『そういえば、パソコンのバッテリーも少なくなっていましたよ。ちょっと行ってき……』

 『後で! イッコ……イチコさん、それは後でいいから! 魔王、これか?』

 『それは携帯ゲーム機のやつッス。』

 『これですか?』

 『それは電動ドライバーのッス。』

 『似たようなヤツが山ほどあって、どれだかわかんねぇよ!』

 『イチコさん、カメラよろしくッス。えっとー……これは前使ってたケータイのヤツで、こっちは初代ケータイので、これはすでに本体が壊れてる小型テレビので、これは、何のヤツだかわからないけど、一応取っておいたヤツでー……』

 『いらなくなった物を後生大事にしておく習慣、マジどうにかしろよっ!』

 『その話は後で聞くッス! あ、あった! これッ……』


 全てを絶望で覆い尽くす深淵なる魔界の闇


 衝撃のラストに全世界が総ツッコミ


 「充電────ッ!!!」



 まおーちゃんねる、魔王より一足先に、しかも着実に、世界征服進行中。

 

 

 


 

 

 

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