高梨 七海 & 北原 心優 の場合 ②
生徒会室のドアの前に立って居たのは、同じクラスで軽音楽部の子だった。
「財部さん、どうかしたの?」
「えっと……その……」
「取り敢えず、中入ろうか」
私は財部さんを生徒会室の中へと招き入れる。
「適当に座ってて、今飲み物淹れてくるから」
「あ、有り難う、ございます」
「私、お邪魔かな?」
「え?あ……き、北原さん、あの……その、居て貰っても構わないです」
「ほら、苛めないの。はい、コーヒーで良かった?」
「は、はい!有り難うございます」
「苛めてないよ……やっぱり私帰るから。それじゃ、ごゆっくり〜」
そう言い残して心優は生徒会室を出て行く。
「それで?財部さんは何の用ですか?」
「あ、あの……これ……受け取って下さい」
差し出されたのは、綺麗にラッピングされた小さな箱。うん、この時期と言えばバレンタインチョコだよね。
彼女とこうやって面と向かって話すのは体育祭以来かもしれない、体育祭の時の借り物競争で彼女が私の所に来たのは、何となく予想がついた。以前、彼女から告白された事もあったからだ。
あの時は曖昧な返事をしてしまったが、今日こうして私の前に来たという事はやはりちゃんとした返事が欲しいからだろうか?
「あ、無理にとは言いません。ダメならダメと言ってくれても良いです」
最後は消え入りそうな声で言ってたけど、本当は受け取って欲しいのだろうなと頭の中で考える。
彼女自身も俯いてて、体も震えている。それでも必死に私へと想いを伝えようとしていた。
私は一息つくと彼女に向かって……
「有り難うございます、これは受け取っていきますね。でも、返事はもう少し待って貰っても良いですか?」
卑怯な事をしているのは分かっている、受け取るだけ受け取って返事は後日と言っているわけなのだから。
それでも彼女は頷いてくれて……
「はい、何時までも待ちます。受け取ってくれて有り難うございます、それでは失礼します」
私に背中を向けると生徒会室を出て行った。
何時か……彼女に対して答えを見付け返事をしなくては、このままズルズル引きずるのは彼女にも私自身も良くないから。
夕陽が沈む景色を眺めながら、下校時刻が迫ってる事に気付き私は生徒会室を出て、鍵を掛けてから学校を後にした。
今回は七海をメインにしました。
次回は心優をメインに……その後は他の子に変わります。