長谷川家 兄の場合
久し振りの投稿となります。
ここからは、「先生達と一緒」に出てくる人物達になります。
但し、本編でメインに出てるメンバーは外します。
今年もまた、この時期がやって来た。
中学生の頃までは特別意識していなかったのだが、高校に入ってその年のバレンタインでちょっとした出来事があって以来、俺は毎年バレンタインデーは憂鬱でしか無かった。
憂鬱になった原因とも言える高一の冬、俺はクラスの仲の良い友達といつも通りで居たのだが、その日は何時もと違ってバレンタインデーという事もあり皆殺気だっていた。
俺自身はあまり興味は無かったのだが、生憎と俺の容姿は女子からすればイケメンの部類に入るらしく色んな女の子からチョコを貰った。
「凄い数だな……」
「やっぱイケメンは俺達とは違うよな」
ふざけあいながらも、俺達は女子から貰ったチョコレートを鞄に仕舞い学校を後にした。
その帰り道、普段なら話す事も無いクラスの連中が、俺達の事を待ち構えていた。
「おい!長谷川ちょっと来いよ!」
「雄介、お前アイツらに何かしたのか?」
小声で俺の隣に居たヤツが話し掛けてきた。
「いや、何もしていない」
「コソコソと話してないで、こっちに来いよ!」
俺は仕方無くそいつらの方へと近付いた。
そして……
気付けば俺はボコボコに殴られていた。
殴られた原因は俺がバレンタインデーで目立っていたからだとか。そんな理由だけで、俺はコイツらに殴られたのが悔しかった。それと同時にバレンタインデーが苦手となり、俺は毎年この時期が来ると誰にも会わない様に逃げていた。
そんな高校三年間を過ごして、大学に入学し今まで付き合ってた連中とも離れ、俺は一人を満喫していた。
そんな俺の所にやって来たのが、今まで同じ学科だけど話す機会も無かった女性だった。
「あ、あの……私、貴方の事が好きです。付き合って下さい」
その女性は俺の前に立つと、告白してきたのだ。
俺は自分の事だと気付かずその場を去ろうとしたが、彼女の必死な顔を見たら逃げるわけにはいかなくて、そのままOKをしてしまった。
それからは、彼女と一緒に居る時間が長くなり過去の嫌な事も忘れ去っていた。
だけどやはり昔と変わらないのか、バレンタインデーになると俺は彼女以外の女性からもチョコレートを貰った。
ただ、やはり大人なのか皆何も言って来なかった。俺はそれで安心したのか彼女にもチョコレートを貰った事をつい話してしまったのだ。
彼女は何も言わなかったけど、顔を見たら今にも泣き出しそうで、その時になって俺は初めて彼女を悲しませた事に気付いた。
それからは、バレンタインデー以外でも女性から何かを貰う事はしなくなった。彼女を泣かせてしまうのなら、これ位は平気でやれた。だけど、俺にと持ってきてくれた女の子達を泣かせてしまっていたのには、胸が傷んだ。
彼女を泣かせたく無い気持ちもあるけど、俺の為に選んでくれた他の女の子達を泣かしてしまうのは、やはり良い気分はしない。
だから俺は、この時期は今でも憂鬱で苦手だった。
ここに来て、長谷川兄の名前が登場しました。
実はどんな名前にしようか迷ってしまい、結局ここでの披露となってしまいました。