君島 由紀 の場合
バレンタインは過ぎましたが、この話しは続きます。
クラスの生徒に“私の事を表すとしたら?”と聞けば、返ってくる答えは“真面目”“委員長”“堅物”など殆んど当たっているので否定はしないのだけどね。
今日は2月13日、明日は土曜日で学校は休み、そしてバレンタインデーでもある。
私が通う学校は女子校である故に、女の子同士でのチョコの交換は当たり前だった。
そんな中、私の机の上にもチョコレートが置かれていた。
「‥‥‥今年もまた」
高校に入ってから二度目のバレンタインだが、去年は学校へ行くと、机の上にはチョコレートが幾つか置いてあった。そして今年も‥‥‥
誰がくれたのか分からないチョコレート、気持ちは有り難いのだがお礼が出来ない。
そんなモヤモヤとした気分のまま一日が終わり、私は帰る準備をしていた。
その時、視線の端に入ったのは、私の斜め前の席である藤沢さんの姿。
数日前、同じクラスの緑川さんに呼ばれたらしく、彼女と一年生の子が何やら話をしていると聞いたが部外者である私はそのまま帰宅した。
翌日学校へ行くと、藤沢さんの姿はあったが何か思い詰めた様な雰囲気で気になったが、声を掛ける事無く今日まで過ごしてきた。
「藤沢さん、ちょっといいかしら?」
彼女は驚いた顔をしていたけれど、二つ返事でOKを出した。
「数日前に緑川さんに呼ばれたと聞いたけど、何かあったの?」
「‥‥‥委員長は知らないの?」
「え?何が‥‥‥?」
何の事なのか全く分からない。
「委員長て、真面目な割りにはこう言うのには疎いのね。私は緑川さんに告白して振られただけよ」
「そう‥‥‥なんだ‥‥‥」
聞いてはいけない事を聞いてしまった様な気分で、私はとても居たたまれなかった。
「気にしなくても良いわよ。それより委員長、委員長って誰か好きな人とか居るの?」
「好きな人!?」
藤沢さんの質問にびっくりしたが、好きな人ね‥‥‥
「真面目で堅物な委員長には好きな人なんて居ないわよね」
「ちょっと! それどういう、というか私にも好きな人は居たわよ。ただ、振られてしまったけど」
「え?あ、居たの? 振られたって告白したって事だよね?委員長って真面目だから、恋愛には疎いと思ってた」
「あのね、私だって一人の女の子だもん、恋愛くらいするわよ。それよりも、貴女達が私の事を委員長て呼ぶから堅物に見えるのよ」
「え?委員長は委員長でしょ。て、あぁ! 委員長は生徒会の役員でもあるのよね」
「‥‥‥違うわよ、委員長じゃなくて名前で呼びなさいって言っているのよ」
「‥‥‥君嶋さん」
言われ慣れてない相手に名前を呼ばれるのは、こんなにも恥ずかしい事だなんて知らなかった!
というか、今更ながら藤沢さんってかなり綺麗な顔をしているのね。その‥‥‥む、胸も大きくてスタイルも良いわね。
「名前呼ばれただけで、何顔を赤くしているのよ」
「あ、赤くしてないわよ」
「君嶋さんってツンデレなの?」
「な!?」
彼女にとっては、からかってるだけなんだろうが私には十分刺激的だった。
「可愛い~」
ふふっ と笑う彼女の方がよっぽど可愛いと思う。というか、私どうかしてるわね。クラスメイトというだけなのに、こんなにも動揺して‥‥‥というか、顔近い!‥‥‥え?
唇に温かい物を感じた。
「ねぇ、私達付き合わない?」
「え?どういう」
イタズラを思い付いた様な顔をしている彼女。でも、それも面白そうね。
「もう一度言うわ、私と付き合わない?」
「良いわよ」
今度は驚いた顔をしている。
「え?良いの?」
「良いも悪いも貴女が誘ったんじゃない」
「そうだけど‥‥‥」
「私は貴女の事、かなり気に入っているわよ」
お返しとばかりに、今度は私から彼女にキスをした。
「ふふ、これから宜しくね紫乃」
「え?ええー!」
まさかバレンタインの前日に彼女が出来るなんて思わなかったけどね。
この回で、Sweet Heartのメンバーは終わりです。次は何れにしようかな(^^)




