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如月 沙耶の場合

誰かにチョコレートを渡すのは、中学生以来の事だった。


「ふぅ、出来た」


今、私の目の前にあるのは、綺麗にデコレーションされたチョコレートケーキ。しかもホールサイズ。

どうしてチョコレートケーキを作ったかって?

それは勿論、彼女にあげる為。

こんなにも頑張って作ったのは久し振りだった。


「喜んでくれるかな」




2月14日、バレンタイン当日。

今日は土曜日なので、学校もお休みだ。

だから私は、昨日頑張って作ったケーキを持って彼女の家に遊びに行く。



ピンポーン!


「はーい、今開けますね」


中から聞こえてきたのは、彼女‥‥‥西園寺 美香の声。


「いらっしゃい」


「お邪魔します」


何度か遊びに来ているけれど、相変わらず慣れない。

だって、彼女の実家は日本有数の西園寺財閥、そこの一人娘だからだ。


「これ、今日バレンタインだから作ってきたの」


「わぁ、有り難う。嬉しいよ」


彼女に喜んで貰えて良かった、やっぱり好きな人にあげるのなら、喜んで欲しいよね。


「それでは私からは、これよ」


リビングに通されて、そこにあるテーブルの上には色採りどりの料理が用意されていた。


「うわ、凄いね。これって美香が作ってくれたの?」


「そうですよ、沙耶と二人で食べようと思いましてね、冷めないうちに食べましょう」


「「 いただきます 」」


美香が作ってくれる料理は、どれも美味しくていくらでも食べれてしまう。


「ご馳走さまでした」


「お粗末さまです」


美香は食べ終えた食器を片付け、食後の紅茶を出してくれた。

何時も通り普通に紅茶を飲もうとしたら、何か気になる物が‥‥‥

じーと良く見たら、テーブルの中央に飾られた花びらの中に光る物があった。

私はそっと光る物を花びらから取り出してみた。それはとてもシンプルだけど、キラキラと光っている指輪だった。


「美香、これって‥‥‥?」


「私から沙耶へのバレンタインプレゼントですわ」


「え?バレンタインプレゼント‥‥‥それって‥‥‥」


「そうよ、沙耶。私は貴女の事が好きよ、これから先もずっと一緒に居てね」


私は嬉しくて泣いていた。


「私も、美香の事好きだよ」


私は指輪を左手薬指に嵌めて、美香と抱き合ったのだった。




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