君嶋 楓の場合
今日は2月14日、バレンタインデー。
数週間前からデパートなどではこの日に向けて、チョコレート合戦が繰り広げられていた。
そんな私も、今年はある人にプレゼントしようと思っていた。
「毎年思うけど、好きな人にチョコ贈るのは勇気がいるはずなんだけど‥‥‥うちの学校には関係無いのかもね‥‥‥」
「何か言った?」
「ん?いや、何も言ってないよ」
中学生の時からとはいえ、玲が学校のファンの子達から貰う量はハンパ無かった。
私は中学から一緒に居るけど、彼女の事だからひょっとして小学生の時から既にいっぱいチョコを貰っていたのかもしれない。
学校では王子様扱いされ、ファングラブまで出来てしまうほどの人気者。バレンタインは毎年、多くの子からチョコレートや小物など貰っていた。
『この分だと、去年や一昨年も大量だったのだろうな』
私は高校一年生の秋から二年間、交換留学として海外で暮らしていた為、バレンタインデーの時は玲にチョコレートをあげた事が無かった。
でも、今年は彼女にチョコレートをあげようと決意していた。
その理由は、恋人同士ならやっぱりあげるよね。
「ねぇ楓、このチョコ食べるの手伝ってくれないかな?私一人じゃ、この量は食べきれないから」
「‥‥‥うん」
『何だろうこの気持ち、もし私が玲にチョコレートあげても食べてくれないのかな?』
ずっとバレンタインデーに渡した事が無かったから、物凄く不安になってる。好きな人にプレゼントするのって、ドキドキして不安で緊張するものなんだ。
それ以前に、こんなにも緊張するのは玲に告白した時以来だ。
「あのね‥‥‥玲、私も‥‥‥その‥‥‥チョコレート作ったきたんだ。貰ってくれるかな?」
玲の驚いた顔が此方を見ている。
やっぱり、沢山貰ったから、私があげるのは良くなかったのかな。
「楓、私の為に作ってくれたんだよね?嬉しいよ、有り難う」
「喜んでくれて、その――良かった」
「ファンの子から貰うのも嬉しいけど、やっぱり楓から貰うのが一番嬉しいよ」
玲は私からのチョコレートを受け取り、そのまま封を開け食べ出した。
「楓、有り難う」
そう言って玲はそっと私を抱き締めると、両腕を首の後ろに回してキスをしてくれた。