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AIとはじめてのボス戦

 周囲に通常モンスターがいないことを確認しつつマップを見るが、特にエリアが変わったということもなくただ迷宮の一画という程度だった。

 が、明確に違う点があった。そこには自分とPTメンバーであるブレイズさん以外にマーカーがあったのだ。

 通常モンスターや採集ポイントは基本的にマップには表示されない。

 ということは、この赤いマーカーがボス出現場所ってことか。

 見回すのではなくマップを見ないと場所がわからないのでは迷い込むこともあるだろう。


「ボス戦闘だが、さすがのアキト君でも一撃で倒せたりはしないだろう。よって私がバトルスキルで行動を阻害する。アキト君は避けながらバトルスキルで削ってくれ。」

「それだけでいいんですか?」

「うむ、ボスと言っても最低レベルの迷宮だ、乱戦などにならなければ問題なかろう。」


 まだ少し不安だけど、がんばってみようか。

 僕らは戦闘場所を確認し合い、ボスに挑む。



 マップ上のボスマーカーに近づくと、どこからともなく狼の遠吠えが聞こえてきた。

 そして草を擦る音が近づいてくる。

 どの方向から・・・・・・右か!

 振り向くと同時に灰色の狼が飛び掛ってきた。

 慌てて飛び退くと同時に剣を振る。

 バトルスキルは使っていない、回避の邪魔になるからだ。

 切っ先が狼の足にかすり、小さなライトエフェクトが飛ぶ。

 狼のHPバーがわずかに削れるが、動きに変わりはないようだ。

 ダメージを与え合うだけでは動きが阻害できないのはこういう状況ではやりにくいものだ。前のゲームのように鍔迫り合いができればいいのに。


「ハァッ!!」


 着地と同時に方向転換した狼にブレイズさんがナイフで切りかかる。

 切っ先に砂埃のようなエフェクトが見えるからあれはたぶん土属性のバトルスキルだろう。

 ブレイズさんのナイフが狼の顎を捉える。

 体勢を立て直しきれていなかった狼はよろめく。

 その間に僕は体勢を戻し、スラッシュを発動させる。

 赤い炎のエフェクトを放ち、システムによって動かされた僕の剣は狼の首から胸を切り裂く。

 その一撃は狼のHPを一気に2割ほど削る。あと4回当てれば倒せそうか。

 しかし2発目を放つ余裕はなさそうだ。狼はもう体勢を戻してくる。

 僕はまた剣をかすらせつつ回避行動に移る。


 うまくパターンにはまったようで、3回ほど同じことを繰り返すし最後にスラッシュを連続発動させて止めを刺す。

 瀕死になったら行動パターンが変わったりするかと思ったけど特になかった。

 草原迷宮Lv1は迷宮のチュートリアルみたいなものかもしれない。Lv2とかになったときが怖いな。


 ポーン 狼の毛皮Lv1 2個を獲得した。

     狼の牙Lv2 を獲得した。

     成長の珠Lv2 を獲得した。


 さすがにボス、ドロップ品が多いようだ。

 どれがいいものなのかよくわからないな。ブレイズさんに見てもらおう。


「ブレイズさんはどんなものをドロップしたのですか?僕はこんな感じですけどどう使っていいかわからなくて。」

「あぁ、私はこんなものだ。アキト君のは・・・・・・おぉ、Lv2素材が出たのだね。運がいいよ、それを使えばLv2装備が作成できる。ただ対応するレシピを買わなくてはならないからSPがあれば、だがね。それと成長の珠は各迷宮の初回クリア特典だ。それを使えばステータスひとつのレベルを珠のレベルにできる。」

「これを使えばレベルアップするんですね。どのステータスでもいいんですか?」

「どれでもいい。だが上がるステータスが一つということでデメリットもある。たとえば筋力だけがあがり器用が上がらないと武器がうまく扱えなかったりする。属性を上げたらその属性のバトルスキルのコストが大きく上がる。だからといって複数揃えてからレベルをあげようとは考えないことだがな。」

「なぜです?」

「死んでロストしても同じ迷宮からは二度と手に入らないからさ。」


 そんなところにもデスペナルティの恐怖があるとは。

 とっととレベルを上げて修行しよう。


「わかりました。すぐ使うようにします。」

「まあ街に戻ってからでいいだろう。探索者の指輪はもっているかね?」

「あ、そうですね。もってます。・・・アイテムのスキルはどこから使うのでしょう?」

「ハッハ、アイテムスキルは装備メニューからさ。では戻ろうか。」


 言われて、装備メニューを確認するとアイテムスキルの表示があった。

 さっき槍装備したときに気づけよ、僕・・・


 探索者の指輪Lv1のスキル:ギルドワープは消費SP100だった。結構消費が大きいが今回の迷宮で500SPも増えていたので気にしないことにする。


 こうして初めてのPTは十分な成果を上げて終了した。

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