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AIと探索者ギルド

 ワープ先は半円状の岩のドームであった。

 天井には光を放つ水晶のようなものが生えていて明るい。そういえばさっきの部屋にもあったな。

 広さはさっきの倍くらいはあるだろうか。

 周りを見回すと僕のほかにもワープしてくる人や逆にワープしていく人が見える。

 

 ドームを輪切りにしているのは巨大な石積みの壁だった。中央には門が開いていて出入りする人たちがいる。

 出入りしているのはプレイヤーアイコンだ。門のところにはNPCアイコンの門番が立っていた。


「すみません、ここはどこでしょうか?」

『ん?この先は狭間の街だ。君は迷い人かな?』


 声をかけてみたら問いかけたことにちゃんと返事があった。


『マスター、私に尋ねればよいのでは?』


 アイはわかっているのか。いいじゃないか、MMORPGなんだから気分だよ。

 それでも門番さんは案内をしてくれた。


『迷い人なら狭間の街で探索者登録をするといい。身分証明になるし門外や街中にある迷宮に挑むなら必要なことだ。探索者ギルドはこの道をまっすぐ行ったところだよ。』

「はい、親切にありがとうございます。」


 礼を言って街に向かう。


「なかなかロールプレイをわかっている設定のNPCだったね。」

『このゲームはモンスター以外のNPCすべてがAI操作ですからあれくらいはあたりまえです。マスターはこのゲームのコンセプトを知らないのですか?』

「えっ、知らない・・・」


 呆れたアイによると、このソウル・ディメンション・オンラインはサーバーだけの運営でなく多数のAIパッケージたちの余剰能力をかき集めて運営されているのだという。

 そんな無茶ができるのは高い計算能力と大きな記憶容量、AIの素をパッケージングしたAIパッケージという安価な制御装置が普及していることと、このゲームの運営元アクセルが大量にAIを使用している大企業の子会社だからだ。

 アクセルはその利点を生かしAIにMMORPGの世界の構築を任せたのだ。

 そのためNPCの中の人、ダンジョンの運営者、果ては物価の制御まですべてAIが操作しているのだという。


「それでただの門番でも自由に話しかけられるんだね。」

『はい。どうせ聞くなら門外の迷宮のヒントでも探ってみればよかったのです。』

「・・・そうだね、次に行ったときには聞いてみるよ。」


 自由すぎて難易度高いよ。



 そんなこんなで探索者ギルド目指して歩いていく。

 アイに開いてもらった簡易マップや周囲を見るとこの街は巨大な岩のドーム型の形状をしている。

 天井にはやはり巨大な光る水晶が垂れ下がっていて街を照らしていて、その水晶に向かって街の中心に塔が建ち東西南北の門外迷宮につながる大門から各方面の中央通りがつながる形状になっている。


「ところでさっきの迷い人というのはどんな設定?」

『プレイヤーは別の世界からこの次元の狭間に迷い込んだ存在だそうです。そのため迷い人は中央塔の迷宮を攻略し元の世界を目指すのですが、それには力が足りないので各種迷宮を攻略して力を付けるのです。』


 気になった単語をアイさんに聞いてみる。が、この後探索者ギルドのNPCでも聞かされた。


 探索者ギルドでの探索者登録はすぐに済んだ。

 クエストの受け方や各迷宮の場所も教えてもらえたし探索者登録は必須じゃないかな?なんでチュートリアルになかったんだか。

 

『以上が探索者の諸注意です。最後に探索者の指輪をお渡しします。これを付けていれば迷宮からこちらにワープすることができます。』


 ポーン 

 

 レシピ:探索者の指輪を受け取りました。

 迷宮の石Lv1を受け取りました。


 渡しますっていうのにレシピと素材なのか。でも作る。


 探索者の指輪Lv1 探索者の証。アイテムスキル:ギルドワープ。装備制限:魔力Lv1


 ちなみにほかのレシピに迷宮の石を入れてみようとしたけどダメでした。


「さて、迷宮へ行く前になにかクエスト受けたほうがいいかな。」

『クエストですか?いわゆる汎用クエストなどはないですよ。NPCと付き合っていればそのうち討伐系や採集系の頼まれ事としてクエストが発生するようです。』


 ないのか・・・ちくしょう!

 どうにもかみ合わないやるせなさを抱えつつ、ギルドで勧められた南門の迷宮を目指し来た道を戻る。

 道中のNPC露天でアイさんに勧められた初級ポーションを購入する。

 5個で300ソウルでした、高い!

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