AIと森の熊
一旦落ちて食事、風呂、トイレを済ませる。
数時間プレイするための準備は大事だ。ソロが途中で落ちるのは厳しいからね。
残りTGは1100ほどと十分。SPは1800ほどある。
意気揚々と森林迷宮Lv1に入ったのだけど、ふと考える。
6人PTで2人デスペナを受けたというボスの強さ。
PT人数で広さの変わる迷宮、どうやらボスの強さも人数次第ではあるそうでソロで挑めばそんなに強くはないと思う。
それでもPTを組むメリットはやはり隙がカバーできることで、ソロでの隙はやっぱり怖い。
そこで切り札のバトルスキルを作ったらどうかと思った。
というわけで必殺技を作成する。
スキル名称:ダブルスラッシュ_
使用武器:ショートソード
使用ステータス:耐久 ▽ コスト75/75
適用属性:土 ▽ +火▽ コストアップ
消費SP:120 ▽コストアップ △コストダウン
威力補正:125% ▽コストダウン△コストアップ
効果時間:100% ▽コストダウン△コストアップ
どうだろう。
使用ステータスはコストが高い敏捷や器用を使いたかったのだけど別のスキルに使っていたから選択できなかった。使用頻度が少ない予定なのでSP増加で妥協した。
適用属性は増やすと弱点を突きやすい、かつ純粋にダメージアップが望めると聞いたので二つにしてみた。
だれから聞いたって?バリーからです。攻略情報を聞かないわけじゃないので。
モーションはVの字斬りにした。うまく当てれば2回ダメージが当たるらしい。
さて、必殺技もできた。試しで使うには消費SPがでかいのでぶっつけ本番になるけどまあ、いい。
そのまま森を進む。
さすがにLv1の迷宮、群れている雑魚はいないので素材のためにも雑魚は倒して進む。
採集も忘れない。
木、草、キノコと各種素材はおいしい獲物だ。無視するなんてもったいない。
そんな風に寄り道はしてもソロ迷宮の狭さ。ボスまでは1時間とかからなかった。
襲ってきているクモがいないか確認していざボス戦へ!
ボスとの戦闘フィールドはワープ地点のように開けているわけではなかった。
今まで進んでいた森ほどではないが木があり、柱がある部屋に近いスペースだった。
木に身を隠しながらマップ上のボスマーカー付近に近づくと、いた。
身長3メートルほどだろうか、でかい熊が二足で立ち上がり周囲を見回している。
ハンティング、というからてっきり姿勢を低くして隠れながら近寄ってくるかと予想していたけど運がよかったのかまだ見つかっていないようだ。
二本の剣を構え、慎重に近づく。
ライトはボスフィールドに入る前に消してあるので足元にも注意する。
あと20メートル・・・あと10メートル・・・今!
ボスが僕とは反対の方向を見たタイミングで飛び出す。
敏捷の恩恵か一気に近づくがボスもこちらに気づいて振り向き腕を振ろうとしている。
かまうものか! 最初の一撃で一気に削ってやる!
「ダブルシュラッシュ!!」
切り札として作成したスキルは狙い通りにボスを2回斬りつける。
溶岩のようなエフェクトを発生したスキル攻撃はボスのHPを7割ほど削った。
しかしSDOの敵は怯まない。
僕のモーションが終わるころボスの爪が僕を切り裂く。
どうせ衝撃はないだろうと左手の剣でバトルスキルを使用しようとしていたのだが、なんとボスの攻撃で僕は吹き飛ばされた。
敵の攻撃は衝撃あるのかよ!?
その勢いで4メートルほど吹き飛ばされ木にぶつかって止まった。
急に筋肉痛になったような痛みに混乱しつつもHPゲージを見ると残り3割ほどになっていた。
やばい。痛みはゲームなので緩和されているがこのHPではもう一回攻撃を受けたらデスペナを受けてしまう。
なるほど、6人いて2人脱落というのはこういうことか。
なんとか立ち直るがボスがすぐ近くにまで迫っている。
回復する余裕を作らねば。
幸いボスフィールドの中央付近。ボスの攻撃を木を盾にして避けつつ、距離を取る。
ただ直線を逃げると雑魚がからんでくるだろうから円を描くようにボスフィールド内で逃げる。
なんとかポーションを使える程度の隙を作り、HPを回復する。
HPが回復すると冷静になれた。デスペナはその危機になるだけでも恐ろしいな。
そのあとはボスの攻撃を回避したところでもう一度ダブルスラッシュを当てて倒した。
ポーションの消費やスキルのSPを考えると完全に赤字だったけどデスペナよりはマシだと喜ぼう。
危機的状況を切り抜け、安心したら気が抜けてしまった。
ドロップの確認も忘れ、僕はその場に座り込んだ。




