AIと旧友
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「まさかアキトがAWFを止めるとはなぁ。てっきりサービス終了まで続けると思ってたんだが・・・先月あたりに10周年イベントやってただろ?」
「よく知ってるね。僕もAWF以外にVRMMOはないってくらいのめり込んでたわけだし、別のゲームに移るとは思っていなかったんだけどね。うちで育てているAIといっしょに遊びたいなと思ってこのゲームに来たんだ。このゲームってAI用のキャラクターがあるっていうからさ。」
AWF。アナザーワールドファンタジーは面白かった。世界初のVRMMORPGであり、溢れんばかりのやり込み要素、自由度の高い生産システム、広大な世界はまさに異世界といった遊びつくせないボリュームを持ったゲームだった。
でも僕はAIと遊ぶことを選んだ。サポートAIとしてゲーム開始時からついていてくれるアイさんのほかに、家の家電やPCでリアルをサポートしてくれているAI達が待っている。
MMOは人と人がいっしょに遊ぶ世界だけど、このゲームは人と人とAIがいっしょに遊ぶ世界なんだ。
「ほう、アキトはAIブリーダーもしていたのか。知らなかったぜ。そういうことならSDOはうってつけだな。そうか、それでSDOか。」
「うん。そういうバリーこそ、AWFを引退するときもうVRMMOはやらないと言ってたけどなぜこのゲームに?」
「ん・・・まあな。あのときはそう言ったがよ、いろいろあってまたやろうと思ったのさ。さすがにAWFに戻るのはアレだろ?そんで丁度よくオープンしたSDOを始めたのさ。」
理由は教えてくれないか。
まあ濁すようなら無理に聞くこともない。
「そっか。それにしてもAWFじゃ細身だったバリーがマッチョなドワーフとはね~全然気づかなかったよ。AWFじゃ顔もいじっていたの?」
そう、AWFのバリーは長身だけど細身で、とてもハンマーとか振れそうにない外見だった。もっともそこはゲームなのでどでかい鍛冶ハンマーを振るってギルドメンバーたちの武器を鍛えていたものだ。
それがいまじゃ長身にムキムキの筋肉をまとって髭面のドワーフになっている。わかるわけがない。
「顔はいじってねぇ。ドワーフなのは筋力重視にしただけさ。耐久も高くて楽だぞ。そういうアキトこそなんだよその格好。どこの中二病かと思ったぞ?耳は普通だからさすがにエルフにはしてねえか。」
「う゛っ、いろいろあったんだよ・・・」
迷宮にずっといてすっかり忘れていた。
やっぱりそう思われるよな。アイさんめ・・・
「まあそれはいいや。とりあえずフレンド登録しとこうぜ。」
「あぁ、うん。またよろしくね。」
またバリーと遊ぶことになるとはね。こんな偶然もあるのか。
「ところでエルフにしてないってどういうこと?」
ふと気になった。ファンタジーだしエルフも人気なんじゃ?
「ん?アキトはまた攻略サイト見てないのか。魔法がなくて魔力が長所の種族なんざ弱種族だろ。少なくとも今はそういうことだ。筋力優先のドワーフや獣人が強種族でVR初心者が敏捷確保でヒューマン選ぶってのが普通だな。」
「そうなんだ。でも僕、種族選択で獣人出なかったな。なにか条件が?」
「障害物走で魔力が関係する行動取ると出ないらしいな。エルフは逆だ。筋力完全無視するとエルフしかでない。筋力無視の検証してエルフになったやつは草原の兎すら倒せずぼこられてデスペナ食らったらしいぜ。」
それはひどい。バトルスキル1発で倒せるような敵にも勝てないなんてきついな。
「そっか。じゃあもし死んだら次はドワーフ・・・は髭は勘弁だから獣人選ぼうかな。」
「おい!?」
『マスターがムキムキはありえません!』
バリーと、なぜかアイさんからつっこまれた。
アイさんそんなに細身がいいの・・・
そうだ、攻略サイト見てるバリーに森林迷宮のボスについて聞いてみよう。
「バリー。聞きたいことがあるんだけど。」
「なんだ?」
「森林迷宮Lv1のボスについて知らない?」
その言葉に、バリーだけでなく同席していたヒューマンと獣人が反応した。
「もう森林迷宮のボス見つけたっすか!?」
「その装備草原迷宮のものだろう?もう2箇所目とは攻略組みなのか?」
「いや、ボスマーカーを見つけただけだよ。ボス自体見てないから情報をね。あと僕は攻略組みじゃないよ。のんびり遊んでいる程度だよ?」
「アキト基準でののんびりは普通のプレイヤーと違うんだって。AWFのころにも言ったろ?」
バリーからまたつっこまれた。
おかしいなぁ、クリアを焦ってプレイしてないんだけど。
「まあアキトにこれ以上いってもしょうがないな。森林迷宮Lv1はついさっき攻略情報がでたところだ。ボスはハンティングベアって熊らしいぞ。6人PTのVR廃人が2人死に戻って倒したって話だ。攻撃パターンとか弱点はわからんな」
「十分すぎるよ。攻撃パターンまでわかっちゃったら攻略情報見ずにやってる意味がないし。バリーありがとう。」
いい情報が聞けた。隣の二人は呆けている。そんなに変かな?
「アキトに言っても意味はないだろうが、無理してデスペナくらうのだけはやめとけよ?」
「わかってる。それじゃそろそろいくよ。」
バリーに礼を言って席を立つ。
会計は料理が運ばれてきたときにSPが自動で減って済んでいる。
うまい店だった、またこよう。
次は森林迷宮を攻略したときかな。




