AIと酒場
おまたせしました。
探索者ギルドに戻るとまずは指輪の再使用コストを支払う。
活動時間が減ってしまうがいざというときに使えないのはやっぱり怖い。
受付の職員に森林迷宮のボスについて聞いてみるけれどギルドではそこまでの情報を管理していないらしい。
RPG的に酒場あたりで聞いてみるか。ネットで調べるのは最終手段にしたい。
その前に市場へ行く。
豊富に取れた素材を買い取ってもらうと手持ちが2000SPになった。うまい。
新しいレシピが欲しくなったけど、そのまえに情報だ。
ボスに必要な装備があるかもしれない。
昨日ギルドで勧められた酒場に行ってみる。
酒場の名前は 妖精の岩屋亭 。西部劇に出てくるような外見をしている。
中から笑い声や怒鳴り声が駄々漏れですごくにぎやかだ。
あれ、そういえば
「そういえばこのゲームって未成年でもプレイできるけどアルコールのエミュレートがあるゲームは未成年プレイ禁止だったよね?」
『登録された戸籍情報、VRシステムのチェックによりアルコールエミュレートは未成年に発生しません。成人には発生しますのでアルコールを楽しむことは可能です。」
なるほど、前のゲームだとそこまではやっていなかった。VRも進化しているんだと実感できる。
一応僕は成人しているけどアルコールは苦手だ。ソフトドリンクあるといいな。
外見は西部劇なのに中身は居酒屋だった。
カウンターにもテーブルにも壁にもメニューが張られている。種類も豊富だ。
一人だしカウンター・・・は埋まっているか、どっか空いているテーブルは・・・
『すみません、今日は席が少なくて。相席でよろしいですか?』
店員さんに声をかけられた。NPCか、ショートのブロンドにちょっと幼い顔立ちがかわいい。
でもなぜかメイド服。どんな店だよ!
「あ、はい。大丈夫です。」
予定では酒場のマスターに聞く、だったがプレイヤーに聞くのもいいか。話やすい人だといいな。
『こちらです。』
案内されたテーブルには3人座っていた。空いているのは1席。よほど繁盛しているようだ。
店員さんに食事とソフトドリンクを頼んで席に着く。
見回してみると酒場の中はほとんどがプレイヤー、座っている3人もプレイヤーだった。
食事中だけど挨拶はしたほうがいいかな。
「こんにちは、相席失礼します。」
「おう、このテーブルはみんな相席だ。気にすんな。」
向かいに座っているドワーフがにやっと笑って返事してくれた。手に持ったビールがとてもよく似合う。
「しかし空腹なんかのシステムがないSDOでこんなに飯食いにくるやつらがいるとはな、そう思わないか?」
「VRの飯はうまいっすからね。リアルの晩飯をカップ麺で済ませたらバーチャルで思いっきり食うっすよ。」
となりに座って大盛りとんこつラーメンを啜っている小柄な男が合いの手をいれた。
どうでもいいけどリアルでもバーチャルでもラーメンってどんだけ好きなんだ。
「それにリアルじゃなかなかこんな肉は食えん。この一皿でリアルだったら何千円になるか。これが月額課金だけで食えるんだからやめられんな。」
対面で厚切りステーキをぱくついてる大柄な男も話に乗ってきた。
湯気を立て、ジュージューと音が鳴るうまそうなステーキだ。たしかにリアルじゃ食えないな。
よくみるとその男、犬のような獣耳だ。
僕は選択できなかったけど獣人も種族選択できるんだな。
「やっぱりVRMMOはご飯が大事ですよね。・・・お、来た来た。」
もう店員さんが運んできてくれた。
僕が頼んだのは居酒屋っぽく厚切りベーコン、でかウィンナー、厚焼き玉子にポテトサラダだ。飲み物はコーラ。
「ん~~~~、うまい。ゲームスタートから二日でこのレベルの食事ができるなんてSDOに生産スキルがなくてよかったと感じるな~」
「ワシもそう思ったよ。前にやってたAWFじゃ料理スキルを上げたやつがでるまでメシがまずくてな。生産メインだったからSDOに生産スキルがなくて気落ちしたが食事に関してだけはスキル制じゃなくてよかったわい。」
ドワーフさんAWFのプレイヤーだったのか!
「僕もやってましたよ。アナザーワールドファンタジー。最初に買える携帯食がぼそぼそでまずくて、料理とって調理した兎肉のうまさは忘れられないな~。それからはソロでいろんな食材求めて戦ってましたね。」
懐かしいな。ドラゴンの肉とベヒーモスの肉で作った合挽きハンバーグはもう言葉で表せないほどうまかった。
「ソロで料理・・・そういえばお前さんの名前聞いてなかったな。」
ん、なんだろう?
「すみません、言ってなかったですね。僕はアキトっていいます。AWFでもアキトでしたよ。」
突然ドワーフさんが立ち上がって僕を指差す。
「お前黒剣士のアキトか!俺だよ、バリーだよ!ギルド黄昏旅団でいっしょだった鍛冶のバリー!!」
「えっ!?バリー!?2年前にAWF引退した??バリーもSDOに来たのか!!」
旧知との、突然の再会だった。
難産でした。会話書くのって難しい。




