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Run away! 1

年末

作者: 貴幸

僕、高島時人はこたつに首から下を預け冬休みを過ごす事を誓いたい。


それくらい、今が幸せだ。


冬の寒さをなめていた。

それが故いつの間にかネットショッピングの『これさえあれば独り身のあなたも暖かい家庭を築いているかのような幸せに包まれた正月を過ごせる!』と言う広告をクリックしカートに入れていた。

何故僕が独り身だと言う事を知っているのかは置いておいてとにかく幸せだ。

このぬるいより少し熱い温度といい、テーブルからはみでてその温度を逃がさない毛布の手触りといい完璧だ。

もう餓死するまでここを出たくない。

一つ足りないと言えば人の温もりだが…。


「…別に雪ちゃんに来て欲しいとは言っていない、別に雪ちゃんとくっついてこたつに入りたいとは言っていない!!!」


第一雪ちゃんはおばあちゃんの家に行っているからいない。


つまり僕はぼっちで残り三日間の年と正月を過ごすのだ。


普段通りっす!!!



「あぁ〜…」




やる事がない。









ピンポーン


インターホンが聞こえた。

きっと夜と朝兼用に買ったピザが届いたんだろう。

こたつからでて気づいた。



「あっ…!!!!服を…着ていない…!!!!!」



だから寒いのか…。

パーカーを羽織りジャージを着た。

そして玄関のドアを開けると雪ちゃんがいた。



……ん?



「…おはよう。」



固まった。

もしかしたら本当はピザを持っているおじさんなハズだが幻覚が見えているのかもしれない。


「あ、ピザ何円ですか。」


「ピザなんか持って来てねぇよ。」



うん、雪ちゃんだ。


「雪ちゃん、その、久しぶり。」


久しぶりなせいか、顔をみるのがなんだか恥ずかしい。


「うん、久しぶり。」


沈黙。

話し方を忘れてしまったとでも言うのだろうか。


「その…中、入る?」


「は!?え、や、うん。」


少し戸惑って承諾してくれた。

あれ?もしかして忙しかったのだろうか。


「もしかしてこの後用事…あったかな?」


「いや、無い!ないから…ただ、会いたいなって…。」


心臓を鷲掴みされているかのようにドキドキし始めた。

全身があつくなる。

体温もこたつの中にいた時より二倍三倍に上がっている。


「あっ…その…うん、いや、あ!そうだ、こたつ!こたつ買ったんだ!だから一緒に…」


入ろうと言おうとしてしまったのをなんとか止める。


「外寒かった、良いねこたつがあると。」


雪ちゃんはコートを脱ぐとこたつに早々と入った。


「あったかい…。」


…ど、何処に入れば良いんだ?

入れるポイントは五箇所ある。

雪ちゃんの向かいの席二つ、横二つ、そして雪ちゃんの隣。

隣に入るのが一番最適だ。

しかし向かいも良い。

足が触れる可能性がありしかも向かいだと話しやすい。

しかし横も捨てがたい。

クロスして触れ合うのは素晴らしい。

エロい。

しかしやはり隣が良い。

何より密着する。

ゆ、雪ちゃんと密着……。


「何してんの。」


「うん。」


雪ちゃんは横の床をたたきこっちを見た。


「はやくしてください。」


「あ、はい!!!!」


言われるがまま、隣のスペースへと移動する。

なるべくハジにより身体が当たらないようにした。

ん?予定と違う。

なんかこう…もっとイチャイチャできると…。


「雪ちゃん、そう言えばおばあちゃんの家に行ったんじゃ…。」


雪ちゃんはみかんを剥きながら喋る。


「別に時人といる方が良かった訳ではないから…。」


「えっ?」


雪ちゃんの剥くみかんの手が止まる。


「家族置いてきた…」


「それってつまり…」


「か、帰る!帰るから!!!今日すぐ帰るから!」


つい雪ちゃんの両肩をつかんでしまう。

目があい、数秒たった。


「その…変な事求めないから泊まっていいよ、何泊でも。」


目を背けた雪ちゃんは小さい声で言った。


「変な事って何…」


「求めないって言ってるじゃないですか!?」


つい口走ってしまった事を後悔する。

たくさん考えていると言ったようなものじゃないか。


「それより手…。」


すぐに肩をつかんでいた手を放す。


「ご、ごめん!!!言ったばかりなのに…!!!」


「良いけどさ、時人だし。」


そう言うと雪ちゃんはこたつに深くもぐった。

それは、どうゆう意味なのだろう。

自然と手が繋がれた。

指の感触がなんだかこちょばしい。

あたたかいのはこたつの中だからだろうか。

雪ちゃんといるからだろうか。

どっちもだろうか。

しばらく無言の時間が続いたかと思うと雪ちゃんが口を開いた。


「雪が積もったね。」


「雪は好きだから嬉しいな。」


雪ちゃんは少し顔を染めてみせた。


「か、勘違いする。」


「雪の方が好き。」


そう言って何か言おうとする口を塞いだ。


二人だけの夜を共に過ごそう。

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