第六話
今回はいつもより短いです。
あと、あらすじの部分にもかきましたがサイトを立ち上げました。
よろしければ、どうぞ。
……くそっ。
撃てども撃てども簡単に弾丸を避ける目の前の奴に腹が立つ。
ただ避けられるだけならまだいいが、こいつはわざとすれすれに避けてスリルを楽しんでいるように見えるから尚更ムカつく。
こっちはこいつの鋭い刃を避けんのでかなりの神経使ってるっつーのに!
「君、中々やるよね。ニンゲンなのに、さ。オレとしては隅っこにいる獣人の方が何だかんだで楽しめるかなーって思ったけど、予想が外れてちょっとラッキー」
「アイツまで回さねえっよ!」
「おおっと、危ない危ない」
ニタニタと笑うムカつく野郎に二、三と弾丸を撃ち込んでいくが、ジャラリとした金属音と共に簡単に避けられて思わず舌打ちをする。
チラリと視線を隅で縮こまっていたクロにやると、アイツは自分の獲物である短槍を構えて微かに怯えが混じった表情で……それでも闘志に満ちた目で俺達を見つめていた。
アイツ、クロウェルとはまだ会ったばかりで俺はアイツのことを何も知らない。
一緒にいる理由だって、俺がアイツの所に押しかけたようなものだったし。
アイツはとある人の願いを叶えたい、だから帝国へ反旗を掲げると言っていた。
獣人への差別をなくして、あの人が目指した人と獣人の共存した世界を作りたいと。
それに俺は便乗したにすぎない。
俺は獣人の差別とかそういうの余り真剣に考えたことはない、アイツには少し悪いと思うけど。
俺はただ、帝国の奴等をぶち殺してあいつ等に殺された弟達の敵を討ちたかった。
それだけだったんだ。
だが、俺もアイツについて行く以上そういうことも考えることがあるわけで。
俺の国でも偶に見かける鎖に繋がられた人に見えて“人じゃないもの”
今までは獣人と関わることなんて全く無かったから、クロと会ってから驚きの連続だ。
偵察に行くクロがカラスの姿に変わったときは心底驚いた。
本当に、人みたいに見えても人じゃないんだなって。
その驚きがそのまま顔に出てたようで、俺の顔を見たクロは苦笑していたけれど目が。
悲しそうに沈んで、どこか諦めたような目をしていた。
クロの顔を見て、俺も獣人を心のどこかで差別していたんだと知って罪悪感が胸の中で一杯になる。
それからだ。
俺の意識が変わったのは。
俺もクロも種族は違えど同じ生きている者同士。
俺は全然獣人のことを知らない。
クロは人のことを知らない。
なら、お互いこれから知っていけばいい。
少しでもアイツに近づこうとまずは呼び名を変えたらペットじゃねえんだからと呆れられたが、それでもも止めろとは言われなかった。
それから一緒に屋敷を探索している内に知ったクロの猫嫌い。
過去に色々あったらしくて、俺が屋敷内で会ってしかもそいつから上着を剥いで来たと言ったらアイツはかなり怖がっていた。
そんなところに、こいつだよ。
「ん、何? そんなに見つめられてもオレ、そっちの気は無いよ?」
「俺もねえからっ。さっさと撃たれろよ、アンタ。ニタニタ笑いやがって」
「だって、楽しいからね。笑っちゃうのは仕方ないよ、君……ってなんかもどかしいか。オレはリト、猫類で型は知らない。雑種だから、オレ。で、君の名前は?」
「何で戦ってる奴相手に自己紹介……まあ、いい。俺は陸だ」
「陸、ね。あっちの子は?」
「別に知らなくていいだろっと!」
「わあ、危ない」
危機感が全然感じられない声を上げながら猫特有の高い跳躍力で攻撃を避けられる。
アイツ……リトが興味津々な視線をクロに送るたびに肩を跳ね上げるクロを見て、出来る限りリトの視線を遮るような位置に立つ。
俺の行動の意味が分かったのか、元々ニタニタと広がっていた口元をアイツはさらに広げた。
ここまで来るとかなり気味が悪い。
「へえ? 結構大事なんだね、あの子」
「仲間だからな……ほんといい加減くたばってくれアンタ。それか、せめてそっちからもなんか仕掛けて来い」
先程から俺の攻撃を避けるばかりで攻撃をしてこないリトに益々苛立ちが募る。
弾切れを狙っているのかと思えば、装弾の間も何もしないで笑いながら俺を観察しているだけだった。
「仲間、ねえ? いいな、それ。羨ましいよ」
「アンタ、一体」
オレには、そんなのいないから。
皮肉気にリトが零した声とアイツが攻撃を避けた時に聞こえた金属音。
そうだ、アイツは装飾品を一つも持っていないのに何で金属音がしたんだ?
しかも単純な音じゃなくて、ジャラリとした……まるで鎖みたいな……
「まさかアンタは――」
「陸! 誰か来る!」
俺がある一つの推測に辿りついたとき、焦ったようなクロの声が広い部屋に響いた。
は、え?
誰か来るって
「この状況にどうしろって言うんだよ……八方塞がりじゃねえか」
「そうだけどさ! 人数は二人くらいだけど今騒ぎを起こすと、計画が全部台無しになっちゃうから、今はとりあえず」
「隠れたほうがいいんじゃないのー? ホラ、こっちだよ」
「え、」
焦る俺達を他所に間延びした言葉で部屋の隅にあったテーブルクロスのかかった机を指し示すリトに思わず二人して固まった。
「アンタ、一体どういうつもりだ」
「どうするつもりもないけど? ただ、同じ獣人を仲間だと言える仲みたいだし、種族のよしみで見逃してあげるよ。別にオレはここの屋敷のニンゲンに忠誠心なんて持ってないからさ」
「……迷ってる暇はないみたいだよ、陸。もうすぐそこまで誰か――臭いからしてニンゲンだと思うけど、来てる」
「分かった」
クロに腕を引かれてテーブルの下に隠れる際に垣間見たリトの顔が、ひどく寂しげに見えたのは……俺の気のせいだったんだろうか。
気付いた方もいるかもしれませんが、今回のお話は視点がクロウェルではなく陸です。
あと、新キャラが登場しました!
…あれ、似たようなキャラ前にも書いた気が←
こういうキャラ大好きです、はい。