9話
テーブルの上にはメロンが丸ごと1個と、4分の1に切られたメロンが置いてあります。
商人のユーグ・ベッケルさんは洗練された立ち振る舞いの、髪は薄い金色で目は焦茶色の優しそうで端正な顔立ちをした壮年の男性でした。
優しそうだった目も今はメロンを、射抜くように見て値踏みしています。
出されたメロンを半分食べたところで「大変美味しいですね」と言い、ナタリーさんは隣で「そうでしょ。とっても美味しいオリジナルの果物だもの」と笑顔で言っていて、その横ではむずかいし顔をしたユーグさんがいました。
私はむずかいし顔のユーグさんを見て、気が気でない思いです。
ユーグさんはむずかしい顔を、笑顔に変えてひとこと言いました。
「このメロンと言う果物の量は、今どのくらい納品できますか?」
これで断られたらどうしようかと思いましたが、私の気苦労だったようです。でも量が少ないと断られるのかな?昨日作った量は、500個でした。そのうち5個はすでに食べてしまったので、あとは495個になります。なので、少なく見積もって400個でいいですよね……。
腐らないように今はナタリーさんから借りたインフィニットバッグに入れてあります。因にインフィニットバッグとは、袋の中は時間が止まっていて無限に物が入る袋のことです。
「400個なら、すぐにでも渡せます」
私が不安そうに言うとユーグさんは優しい笑顔のまま言いました。
「では400個全部売って頂けるのでしたら、1個30ガレットいや50ガレット出しましょう」
私はこの値段を聞いて飛び跳ねるぐらい驚いた、だって果物1個に50ガレットって日本円になおすとだいたい5000円でしょう。
たしかに5000円のメロンもあるけど、私の作ったメロンは元手ダダですから……。
20000ガレットも儲かるということで、フェニックス模様の白金貨二枚分になります。
「このメロンと言う果物は今までに食べたことのない上品な甘さがあり、とても美味しいので直にでも400個全てが売れてしまうと思うのですよ。400個全て私に売ってくれませんか?」
ユーグさんが力強い言葉で言いました。私は商談の前に売値は自分の好きにしなさいとナタリーさんに言われています。ユーグさんに50ガレットで400個全て売ることにします。
「あの、高値を付けて頂きありがとうございます。1個50ガレットで400個お売りします」
私が言うとユーグさんは満面の笑みで「ありがとう」と言いました。
私はユーグさんがメロンを食べる前に独占契約の出来ないことは話していたのですが、その時に了承したのを今になってユーグさんは悔しがっています。
私は将来的に自分でお店を持つこともあるかもしいとれないと思い、独占契約はしない方向で決めていました。
商談が終わり私はユーグさんと一緒にインフィニットバッグから400個のメロンを取り出して、ユーグさんの持って来たインフィニットバッグへ移し替えたのです。
さすがに400個入れ替えるのは大変で、疲れてしまいました。
私は手元の20000ガレットと、白金貨二枚は確りと握りユーグさんが帰るのを見送ったのでした。
すべてお世話になっていたので、ナタリーさんに20000ガレット渡すと「自分の為に使いなさい」と言われてしまいました。それでも私が困った顔をすると「じゃあ、一ヶ月分の食費として300ガレットだけ貰っておくわ」と言ってくれたのです。私はお世話になった分もっと払いたかったのですがこれ以上は貰ってくれませんでした。
大金を持つことに不安を感じていた私を見たナタリーさんは、小額だけ手元に置き残りはギルドの銀行に預けるよう助言してくれました。
***
そしてその日から8日間、私は果物が一番甘く美味しくなる方法を研究しだしたのです。そして研究の結果、1日に数十分だけ緑魔法をかけて7日目に果物が収穫できるようにするのが一番甘く美味しくなるという結果になりました。7日を過ぎると熟れすぎてしまうのです。
因にこの世界の1週間は8日で、1ヶ月は5週間、1年は10ヶ月なので1年は400日になります。月の読み方は1月〜10月と読んで行きますが、曜日は火曜日・水曜日・地曜日・風曜日・氷曜日・雷曜日・光曜日・闇曜日で1周間になります。
そして属性の曜日に魔法を使うと、いつもより力が増すと言われているのです。
例えば、私だと水曜日に水魔法を使えば、いつもより威力のある魔法が使えます。火・水・地・風・氷・雷・光・闇は基本属性と言われている属性で、これらの属性だけ曜日によって力が増すことができるのです。私のもう一つの属性の緑属性は、特殊属性なのでとくに曜日は関係ありません。特殊属性は希少だけど、なぜか損している気がするのは何故でしょう……。