5話
木製の机の上には三冊の本が置かれています。
右から、『これを読め!魔法の基礎がわかるぞ!第一巻』『さあ未知の植物を見るがいい!世界の植物大全集』『キミも見習い薬師になれ!初級編』の順番です。
今日はナタリーさんが午前中に薬の調合をすると言うことで、私は自室で勉強のため本を読むことになりました。
渡された本の『これを読め!魔法の基礎がわかるぞ!第一巻』には、魔力についてなど本当に基礎中の基礎がわかりやすく説明されています。
『さあ未知の植物を見るがいい!世界の植物大全集』はこの世界の身近な植物から幻と言われている植物まで、挿絵付きで載っていて地球には無さそうな植物も沢山あるなと思いました。
初歩的な調合の擦り傷に効く薬の調合や、魔力回復剤や石鹸の作り方まで載っている『キミも見習い薬師になれ!初級編』はとても興味深かったです。
本も読み終えたので、先日作った秘密兵器のようすを見てこようと思います。今日あたり出来ているといいのですが……。
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キッチンの窓辺に置いてある瓶のフタを開けるとぶくぶくと泡立っています。
「あとは濾すだけね」
何を作ったかと言うと天然酵母、この間ナタリーさんが大量に林檎を貰って来たからです。今あるパンより美味しいパンが食べたいので天然酵母を作ることにしました。イーストで作るパンにはふわふわ感は負けると思うけど、天然酵母のパンの方がこの世界にあるパンより断然美味しいはずです。
作り方は瓶を煮沸して林檎の皮と芯を入れキッチンの日が当たる窓辺に置き、2〜3日まてば泡立ってきます。そして忘れてはいけないのは1日1回フタを開け空気をいれることです。酵母が完成したら液を濾して、出来上がりすごく簡単でしょう。魔法が使えればもっと簡単に作れると思うのですが……。
今から天然酵母パンを作ってもパンを食べられるのは明日の朝か昼くらいになると思います。その前に食べると酸味がきつすぎて食べられないのです。時間を置くと味が落ち着き奥深い味になります。
新たな林檎の天然酵母も作り、パンも焼き終わりました。もちろん袋に入れたパンは藤の籠に入れフタをして間違えてナタリーさんが食べないように『明日の朝まで食べないで!!』と書いた紙を置いておくことは忘れません。
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お昼はサンドイッチを食べました。そうそう、天然酵母を作ったときに皮と芯をとった林檎が余ったので、アップルパイを作ったのですがナタリーさんに大変高評でした。
そして今、ナタリーさんが小型の脂肪測定器のような魔道具を持って来ました。そです、これこそ魔力量と属性を調べる魔道具なのでした。その名も『魔力測定品』、中央に水晶が付いておりそこが液晶のようなものでココに魔力量の数字と属性の文字が浮いてくるそうです。
「いちおう属性も調べるはね?この測定品を両手で持ってちょうだい」
ナタリーさんは私に測定器を渡しながら言いました。
「わかりました」
私は期待をふくらませながら測定器を受け取ったのですが、何も反応しません。私の魔力がないのかと疑っているとナタリーさんが水晶の横に付いているボタンを押しました。
「じゃ、計るわね。体を楽にして」
水晶を見ていると輝きだして光が収まると、水晶には『18000/緑・水』と数字と文字が浮かんでいます。
「あら、水属性も適正があったのね?ルティアの魔力量は18000で属性は緑と水だわ」
私は自分の魔力量に唖然としながらも、属性が緑と水と聞いて私は水やりが魔法で出来るかもと思ったのでした。
魔力とはマナと言われ世界の全てにあるものと言われてます。魔力量とは簡単に言うと魔力を使うときどのぐらい使えるかということで、体力みたいなものです。そして、この世界では3000あれば魔法使いになれると言われています。それから考えると18000とはルティアの魔力量は6倍で大変多いいということです。だいたい属性は一人に付き1属性か2属性と言われています。
因にナタリーさんの魔力量は8500で、属性は火と風でした。
「緑属性は特殊属性と、言われているのよ。だから書物がすごくすくないから、ルティアに緑の魔法の知識があると言うことは幸運なことなのよ。あとはイメージと魔力のコントロールさえ自在に操ることができれば、すぐにでも魔法が使えるようになるはずよ」
と、ナタリーさんは言ってくれたのですが……。
「でも、どんなことから初めればいいのか?」
不安と期待を込めた目でナタリーさんを見ると、ナタリーさんは「そうね〜」と、少し考え込み答えてくれました。
「まずは蕾の花を魔法で咲かせることから練習してみましょう」
さっそく、庭に出て魔法で花を咲かせる練習をするのでした。
そして、なかなか上手くいかない私にナタリーさんが「イメージが大切よ」と言いながらアドバイスをする姿が数時間続いたことは新たに作られた天然酵母だけがしっていたかも?




