2話
森を抜けた所に町があり、その町外れにナタリーさんの家はありました。赤い屋根でレンガ作りの可愛い家、庭には薬草や野菜などが植えられています。
この庭を見ると私の畑がある貸し農園を思い出してチョットだけ寂しくなりました。その時の私の表情は本当に泣き出しそうだったのだと思います。
そんな私にナタリーさんは問いかけてきました。
「大丈夫?泣きそうな顔をしているわよ」
「大丈夫……です。この庭を見たら、私が育てていた畑の野菜や果物どうなるのかなと思って……」
私は話しながら視線は自分の足下を見て……、詰まり顔は俯いている状況なわけです。
「そうだわ。ルティアも私と一緒にこの庭で、何か育ててみる?」
そのような私をナタリーさんは励ますように明るい声で、嬉しい提案をしてくれました。
「いいのですか?」
「もちろん」
「ありがとうごさいます」
これ以上ナタリーさんに心配かけないように、私は精一杯の笑顔で答えたのでした。
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ナタリーさんがアーチ型の木造のドアを開けてくれました。家の中に入ると暖炉があり、暖炉の前にはワインレッドの可愛い安楽椅子がデッンと置かれています。暖炉の左横にもドアがありそこは書斎だそうです。
部屋の真ん中にはダイニングテーブルと4人分の椅子があり、ダイニングテーブルの上には、とても美味しそうな果物が沢山盛られた藤の籠が置いてあります。
右にはキッチン。そして、その横には階段があり2階の右部屋が私の部屋になり、左の部屋はナタリーさんの部屋、なんと各部屋共にトイレとお風呂付きです。専用お風呂があるとは嬉しい誤算でした。
1階はトイレが無いのかと思いナタリーさんに聞いたところ、暖炉の右横のドアを開けるとちゃんとトイレがあったのです。
この家には地下もあり地下には大量の本と資料があり、ナタリーさんが許してくれるなら是非読んでみたいと思いました。
部屋の説明が終わると、私に椅子にすわるように言いナタリーさんはキッチンから花柄のティーポットとティーカップをお盆に乗せて持って来ました。美味しそうな紅茶を入れてティーカップを私の前に置くとナタリーさんは自分の分のティーカップを持って椅子に座り一口紅茶を飲んでから「これからのことを2人で決めていきましょう」と言ったのです。
その後は2人で真面目に話し合いをしました。
例えば書斎には入ってはダメだけど地下の本は読んでもいいとか、料理は当番制にすることや、私が生活に慣れてきたら畑の手入れが私の仕事になることなどです。
話し合いが終わると暗くなってきたので、今日は2人で夕食の準備をしました。
キッチンにはガス台らしきものがあり、名前は火コンロと言うそうです。水を流す台はあるのですが水道は無く、その代わり水瓶がありました。両方とも魔道具で火コンロは、弱火・中火・強火と火力の調節ができる魔道具で、水瓶は蛇口のような物がついていてキレイな水が出てくる魔道具でした。
「まずは、特性野菜スープをつくるわよ。そのオレンジ色の丸い野菜の皮を剥いてくれるかしら?」
「わかりました。この野菜の名前は何ですか?」
「それは、キャロテンって言うのよ」
それキャロットみたいな名前だなと思ったり、夕食で食べたらやっぱりキャロットの味だったのです。
こんな感じで私は料理を手伝いながら一つ一つの物の名前を覚えていきました。ナタリーさんは嫌な顔をせず丁寧に一つ一つの物の名前を教えてくれたのです。そしてナタリーさんは料理が趣味でした。私も料理が趣味だと話すと「それじゃあ、異世界の料理を何か作ってもらおうかしら」と、嬉しそうにお願いされてしまいました。
夕食のパンは固くてパサパサしていたけど、野菜スープとサラダはとっても美味しかったです。発酵パンを作ってナタリーさんを驚かそうと思いました。
あとは夕食の時にこの世界の名がルフォスと言う事や、今いる国はガイールそしてこの町の名はカーリスだと判明したのです。
***
夕食が終わる私がこれから生活する部屋に向かいました。部屋は可愛いカントリー調の家具が置かれており、私はとっても気に入りました。部屋は好きに模様替えとかしても良いと言われたので生活になれてきたら、町で何か小物を買って自分らしい部屋にアレンジ出来ればいいと思ったのです。
その後、疲れていた私はお風呂に入り寝てしまいました。こうして私の異世界での長い一日が終わったのです。