19話
夕方になると旅団員が揃い、自己紹介合戦が始まったのです。
「俺が旅団長のバート・メイヤーで職業は大剣士、よろしく」
格好つけているのですが、寝癖のついた髪が台無しにしていました。黒目で黒髪の目鼻立ちのはっきりした端正な顔をしています。
「あら旅団長は格好つけても寝癖が台無しにしてますわ。あたくしはシンディ・ミルトン、風の魔法使いですわ」
気が強そうな感じの女性で髪は茶色の巻き毛で瞳も茶色です。
「あたいは弓士のコーリン・キャムデン。よろしく」
こちらも気が強そうな感じですがどちらかと言うとお転婆な感じで、ひっつめポニーテールで髪の色は黄色で瞳は茶色でした。
「僕はレーン・シスレーと言います。剣士です」
気の良さそうな可愛らしい少年で、茶色の癖毛の髪と黒い瞳をしています。
「ワイの名前はチャス・アボットで、料理人や」
赤茶色の短髪と赤い瞳の、熱血少年っぽい感じがしまいた。
「副旅団長とクララとダグさんはもう知っとるんやよね」
「はい先程、紹介されました」
私はチャスさんの問いかけに笑顔で答えたのです。
「私も自己紹介しますね。私は魔法栽培士のルティア・ルクレールです。属性は緑属性になります」
この際、サクラのことも教えた方が後々楽な気がして来たのでサクラのことを話すことにしました。
「後ですね……、サクラ実体化して皆に挨拶して」
「あたち、サクラ。緑の精霊だよ」
サクラを皆は驚きで見つめ、唖然としています。この沈黙を破ったのもクララさんでした。
「キャー!!私、精霊と会ったのは初めてです」
その後は皆で大騒ぎしてサクラに詰寄り、サクラが脅えて姿を消してしまうアクシデントがありましたが、虹の森旅団の人達とも仲良くなれて普通に話もできるようになりました。
* **
その後は特に生産組のクララさんとチャスさんと仲良くなったのです。二人とも十八歳ですが、呼びつけでいいよと言われたので名前で呼ぶことにしました。
チャスからは何か珍しい食材があれば、優先的に売ってくれと言われたので、ステビアシロップとステビア粉を見せてみたのです。
「どエライ!!売っておくんなはれ」
チャスはステビア粉を一摘み味見すると、真剣な目をして私に言いました。
「1㎏上げるから、たまには何か美味しいもの作って」
私が笑顔で言うとチャスはちょっと嬉しそうに言ったのです。
「そないことでえぇーのやろか」
「いいの、いいの。ルティアが言っているのだから、貰って何か美味しい物でも作って上げなさい。そして、私にも作ってね」
クララがチャスに助言すると、チャスは私からステビア粉を貰い大事そうにバッグに入れました。
「そう言えば皆は、どこの宿に泊まっているの?私はロッドさんの宿屋に泊まっていたけど」
私が聞くとクララは快く笑顔で教えてくれた。
「皆いろいろかな、私は王都に家を買ったけどね」
「ワイは店の二階にすんでまっせ〜」
そうか二人とも生産系だから、あまり冒険には出ないのかなと思いました。チャスはお店を経営しているようでした。
「私は王都の外にも行きたいんだよね。どうしよう……」
「じゃあさ、私とルームシェアしようよ」
私が真剣に一人考えていると、クララがそう私に提案してくれたのです。
「それがえぇー、その方が安心や」
クララとチャスの言葉で、私はクララとルームシェアすることになりました。
* **
クララの家は緑の塔からも近い所にある、赤いレンガ造りの庭付き一軒家でした。
「ごめんね。庭とか雑草だらけで……」
クララは照れながら私に言いました。この家は一階が工房で裏に庭があり二階からが住居になっている三階建てです。最近は工房で裁縫士の仕事が忙しく庭にまで手が回らなかったようです。
「あっ庭は好きにしていいよ。と言うか好きにして貰うってことで手入れしてくれるとありがたい」
これは嬉しい申し出です。もちろん庭を好きにしていいのなら手入れだってしますよ。
「感謝して是非使わせてもらうよ。果物とか野菜やハーブが取れれば食料になるしね」
私が笑いながら言うとクララは「あー、それいいね。美味しい果物や野菜楽しみにしているね」と言われました。
家の中は、彫刻が美しいヴィクトリア風の家具で揃えられています。一言で言うなら豪華な感じの家具と言うことです。レース素材もふんだんに使われています。
「すごい家具だね……豪華……」
私が圧倒されて家の感想を言うと、クララは「でじょう。拘って少しずつ集めたの」と自慢げに言いました。
私がクララから借りる部屋も豪華な感じでした。もう慣れることにしました。この家は一階に工房で二階にキッチンとリビングがあり三階に各自の部屋になっています。もちろん各自の部屋にはトイレとお風呂付きです。
なのに、クララに払う私の家賃は一ヶ月200ガレット、安いと思いませんか。野菜や果物を、私は頑張って栽培してクララに恩返ししますよ。
この日は豪華な部屋で落ち着くことがなく、朝方まで眠れませんでした。