12話
只今私は『苺の苗を創るぞ!!大作戦』を決行中です。
何も種から苺を創ることは無いのでは……と、思い立ったのであります。いや、なぜか『苺創る=種を創る』と言う図式になっていたけど、そこは妥協して『苺創る=苗を創る』にしたのです。
なぜかと言うとメロンを創っている時に解ったのですが、手抜きしようとしたわけじゃなくて……。苗から育てたメロンは若干ですが種から育てたメロンより味が落ちていました。
このことから、果物を栽培するには苗からより種から育てた方がより美味しい果物が食べられると言うことです。薬草の場合はどうなるのだろう?今は関係ないので置いとくことにします。
そして、私は苺の種は見たことないので、妥協して苗から創ることにしました。
メロンで実験をして感じたことは種の時は黄金に光輝く粒子から現れ、苗の時は虹色の光輝く粒子から現れたということです。種は比較的簡単に創りだせて、苗は少し難関度が上がったと言うことだと思いました。
私が出来上がりの果物の実だけを創造出来ないのは、技術的にも魔力量的にも私では創造出来ないと知識が告げているからだといます。
なので、地道に種や苗から栽培するしかないですが、まあ種や苗を創造したあとは植物を育てる力で成長させればいいだけなのです。
そして、今とうとう苺の苗を創りだし栽培することに成功しました。少し大きめの苺を一粒口に入れると酸味より甘みが強く、口の中は苺の豊かなで力強い甘みが広がります。
『いちご、苺、苺スウィーツが食べたい』と言うことで、例の物の種も創らなければ私の美味しいスウィーツ人生が開拓されません。
創っちゃいました。何ってスウィーツはこれが無ければ始まらない。バニラビーンズやバニラエッセンスです。
なので、バニラのような実がなるバニラの木の苗をオリジナルで創造してしまいました。
これも私のスウィーツへの情熱のなせる技。
このバニラの木の実を砕いて粉末にするとバニラビーンズの代わりになり、木の実の汁はバニラエッセンスの代わりになるようにオリジナルのバニラの木の苗を創造したのです。
「フッフッフッ、これで『苺のカスタードクリームタルト』が食べられる。フッフッフッ」
私は妖しく笑いながら、籠の中に確りと大量の苺とバニラの実を収穫したのでした。
* **
家に入るとそこには、いつの間にかアラン君がいました。ナタリーさんとアラン君は、視線を合わせると嘘くさい笑みを浮かべています。
「ルティアちゃん、今から魔物退治にいくよ」
嘘くさい笑みをまだ浮かべながらアラン君が言いました。
「あらアランいい考えだわ、ルティアは実戦も経験しておいた方がいいと思うもの」
ナタリーさんは台詞を読んでいるように棒読みで言っています。えっ、何が起こっているのですか。この気味の悪い茶番は何!!
「いっ……きます?」
私は籠を強く抱えこみながら、半歩下がりながら答えたのです。
「わーい、これでボアグーリエの肉が食べられる」
アラン君は私の返事を聞くと、小躍りし出しました。
「良かったわー。ルティアが了承してくれて、私は今から頼まれている薬草を調合しなくてはいけないのよね。じゃ、あとはアランに任せるわ」
ナタリーさんは「あー忙しい、忙しい」と言いながら2階へ消えてしまったのです。
「で、何故ボアグーリエ?」
ボアグーリエとは猪型の魔物で、肉が柔らかく美味しいのでよくシチューにして食べられています。
「ルービスの森にボアグーリエが大繁殖していて、森の浅瀬まで餌を求めに来るらしいと情報を仕入れたんだ」
アラン君は自信満々に笑顔で私に教えてくれているのですが、でも何で今からと思ってしまった私は唖然としていたのでした。
「森の浅瀬に来ているうちに、ボアグーリエを捕獲してしまおうってわけさ」
と言うわけで私はアラン君とルービスの森へ行くことになりました。
* **
「いないね。ボアグーリエ」
私達が森に入って数時間余りボアグーリエは現れません。ボアグーリエは群れで行動するので、見つけることは簡単です。ただ、普段は森のちょっと深い所にいます。
「いや、いるはずだ」
アラン君は意地になっており先程から、帰る素振りもしません。私は疲れてしまったし『苺のカスタードクリームタルト』を、早く作りたくてしょうがないのです。
私が肩を落としてしると、遠くの方から何かが突進して来るのが見えました。それは群れから孤立した比較的大きなボアグーリエでした。
「「あぁーーー、いたぁーーー!!!!」」
私とアラン君は叫びながら、ボアグーリエを捕獲するため攻撃態勢に入りました。
「ルティアちゃん、今だ!!蔓でボアグーリエの動きを止めて!!」
アラン君と森に入る前に立てた作戦は、私がアラン君の指示で蔓を操りボアグーリエの動きを止め、アラン君が止めを刺すと言うことでした。
私は急いで種を袋から取り出し投げると、蔓が成長してボアグーリエに絡み付くイメージをしました。
その直後、蔓が伸びてボアグーリエの足に絡み付いたのです。
そして、ボアグーリエは悔しそうに足を動かそうとしているのですが、さらに蔓の鋭い棘が足に刺さり苦しそうな声をあげ続けています。
「ヤッター!!今止めを刺すから」
アラン君は歓声を上げてからボアグーリエに近づくと、短剣で止めを刺しました。
ボアグーリエからは大量の血が流れています。
私は見ていられませんでした。だけど狩りにもなれないと、この世界ではやって行けません。早く慣れなければと思い、ボアグーリエの血抜き作業を手伝おうといたのですが、アラン君が「ルティアちゃんは初めての狩りだから、今日は僕が一人でやるよ」と言ってくれました。
私は狡いかもしれませんが、手伝わなくていいと言ってくれて安心したのです。
もちろん、今日の夕食はナタリーさん特製ボアグーリエの肉のシチューでした。歯で噛み切ることを必要としないくらい柔らかい肉で、とても美味しかったです。
夜寝る時に私は『苺のカスタードクリームタルト』を、作るのを忘れたと思ったのは内緒にします。だって、今日は美味しいシチューが食べられたのですから……。