表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『屁理屈ばかりの勇者は、世界を口論で救う』  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/62

4. 歴史編纂者の困難

王国中央文書院の最奥、

最終編纂室には、外光がほとんど届かない。

積み上げられた年代記と報告書が、

壁のように編纂者を囲んでいる。


歴史編纂者は、年表を整理していた。

破損も欠落もない。

資料は十分すぎるほど揃っている。


問題は、空白ではなかった。

空白が多すぎることだった。


戦争が始まらなかった理由。

決戦が起きなかった経緯。

魔王がどうなったのか。


いずれの項目にも、一次資料は存在する。

報告書、会議録、現地記録、巡察日誌。

だが、どの文書も、

結論を書く直前で筆を止めている。


「発生せず」

「確認されず」

「継続中」


事実は記されている。

判断だけが、どこにもない。


歴史編纂者は気づく。

これは資料不足ではない。

資料が多すぎるのだ。


互いに矛盾しない。

しかし、互いに因果を示さない。


出来事は連続している。

時間は途切れていない。

歴史は断絶していない。


それでも、

「だから何が起きたのか」という一文が、

どうしても書けない。


因果で語るためには、

原因と結果が必要だった。

だがこの時代には、

原因として立てられる語が存在しない。


編纂者は、年表の余白を見つめる。

そこに書かれるべきだったのは、

出来事ではない。


意味だった。


意味を記さずに、

歴史を閉じる方法は、

まだ誰も教えていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ