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『屁理屈ばかりの勇者は、世界を口論で救う』  作者: 南蛇井


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3. 争いの減少と、物語の欠乏

数値の上では、世界は明らかに安定していた。


国境紛争は年々減少し、

武力衝突は「未発生」のまま報告書から消えていく。

教会の奇跡は稀になったが、

それを必要とする事態自体が少なくなっていたため、

誰も不満を口にしなかった。


危機がない。

それは成果として扱われた。


統計表は整い、

「平穏」という語が頻繁に用いられるようになる。

世界は、確かに壊れていなかった。


だが、人々は次第に、

別の欠如に気づき始める。


語り継がれる英雄譚が、増えない。

新しい悪役を、誰も定義できない。

勝ったとも、負けたとも言える出来事が、

年表にほとんど現れない。


事件は起きる。

事故も失敗も存在する。

しかし、それらは「物語」にならなかった。


誰が中心で、

何を賭け、

何が決着したのか。

そうした要素が、最初から揃わない。


市井の感覚は、静かなものだった。


平和は続いている。

だが、語れる話が減っている。


酒場では、昔話ばかりが繰り返される。

かつての戦争、かつての英雄、

かつての魔王。


語り手たちは気づいている。

それらは、もう終わった話ではない。

いまは、同じ形式では語れない話なのだと。


新しい物語が生まれないのではない。

物語としてまとめる前提が、

静かに失われているだけだった。

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