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『屁理屈ばかりの勇者は、世界を口論で救う』  作者: 南蛇井


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5. 微細な違和感の提示

どの勢力も、なお「決戦」という語を前提にしていた。

王国の会議でも、教会の説教でも、魔王領の作戦図でも、その語だけは消えていない。だが、いつ始まるのか、何をもって始まったとするのかを記した文書は存在しなかった。


暦には「決戦予定年」という欄が残されている。

空白ではない。削除線も引かれていない。

ただ、年が改まるたびに、その欄は静かに次の年へと書き換えられていく。誰かが延期を宣言することもなく、誰かが誤りを認めることもないままに。


王国軍はそれを前提として予算を組み、教会は祈祷計画を立て、魔王軍は補給線を維持する。すべては「いつか起きるはずの決戦」に備える形を取りながら、その「いつか」を定義しない。


人々も同じだった。

酒場では「決戦が来たら」という言葉が当たり前のように使われる。だが、その後に続く具体的な話は、誰も語らない。語れないのではない。必要を感じていないのだ。


読者だけが気づく。

この世界は、もはや出来事によって前に進んでいるのではない。

かつて物語であった構造が、そのまま惰性として保存され、回転し続けているのだということに。


決戦は前提として存在し続ける。

だがそれは、起きるために待たれているのではない。

起きないままであることを、誰にも否定されずに許されている。

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