表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『屁理屈ばかりの勇者は、世界を口論で救う』  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/62

第7話:勇者の最後の問い

沈黙は、続いていた。

長さを持ち、記録され、

もはや場の性質そのものになっている。


その沈黙の中で、

勇者が、最後に一言だけ置く。


「あなたが答えないことで、

 何かが壊れていますか」


声は低く、淡々としていた。

問いは鋭いが、切断しない。

責める形を取らず、

結論を要求もしない。


魔王は、答えない。


否定も、肯定も、

沈黙のまま置かれる。


だが、その問いは届いていた。


魔王は気づく。

玉座の間にも、城にも、

世界のどこにも、

破壊は生じていない。


秩序は崩れていない。

軍は解体されていない。

信仰も、王権も、存続している。


否定されたものは、何もない。


壊されたものも、何もない。


ただ一つ、

露出しているものがある。


――必要とされていない役割。


それは破壊ではなく、

剥離でもなく、

暴露ですらない。


覆われていた前提が、

そのままの形で

空気に晒されているだけだ。


魔王という存在は、

誰かが必要としたときにのみ、

意味を持つ役割だった。


今、その必要が

誰からも呼び出されていない。


勇者は、それ以上何も言わない。

最後の問いは、

答えを持たないまま

沈黙に沈む。


魔王は、言葉を失ったまま、

理解だけを深めていく。


壊れたのではない。


否定されたのでもない。


役割が、

誰にも必要とされていない状態が、

初めて可視化されただけなのだ。


沈黙は、まだ続く。


そしてこの沈黙こそが、

この世界で最も雄弁な

「何も起きていない」という証明になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ