3. 王国・教会・魔王領の同時進行的描写
王国では、統治は滞りなく続いている。
国王は定期的に会議を開き、国境の状況と軍備の状態を確認する。議題は毎回ほとんど変わらない。「現状維持が保たれていること」そのものが、安定の証拠として扱われる。備えがある限り、危機は到来していないと見なされる。決断は先送りされ、だがそれを問題視する者はいない。
教会でも、日々の務めは変わらない。
司祭たちは使命を疑ってはいない。祈りは正しく、教義も揺らいでいない。だが、信徒から「では、何から救われるのですか」と問われると、言葉が詰まる。奇跡は起きていないが、祈りが無意味だと証明されたわけでもない。沈黙の時間が増え、説教は抽象的になっていく。
魔王領では、軍が整然と保たれている。
武器は点検され、城塞は補修され、将たちは配置を確認し続けている。だが、侵攻命令は出ない。理由を問う者もいない。問うための前提が存在しないからだ。準備は目的を失ったまま、慣習として維持されている。
三つの領域は、それぞれに動いている。
だが同時に、何も始めていない。
世界は静かに噛み合い、止まったまま、進行している。




