【『王道』味噌×とんこつ】
王道(王道とは言っていない)。ここら辺は綱宮の勢いなので気にしないでください。
(よき――眺めです)
騒がしい高校の昼休み、何故かそこには紅茶を片手に、1人静かに優雅なティータイムを楽しむ少女――【綱宮泡】。
「絶対とんこつ!!」
「いいや、絶対に!味噌だ!」
彼女は男子2人の壮絶な争いを隣で聞きながら、その騒音を楽しんでいた。
「「ラーメンのことは絶対譲らねぇ!」」
ラーメンの味付けについて、声を荒げる男子2人にクラスメイトたちははた迷惑だと遠ざかる中。
(とんこつ×味噌――いえ、とんこつ様は全てを包み込む【抱擁の白】受け、味噌様はがつんと攻め込む【怒涛の赤】。)
とんこつと味噌のカップリングを妄想して楽しんでいた。
「綱宮さん大丈夫かしら」
「あの2人綱宮さんの隣なのにいつもああだし……」
「見てみなさい。綱宮さんは全く動じてないわ。紅茶を優雅に嗜んでいる!」
周りの心配も、
「とんこつじゃねーと満足できないだろ!」
「味噌の濃厚さがわからないのかよ!」
2人の薄い味の議論についても、
(でも、時々とんこつ様が主張して「俺の味に惚れたか?」なんて味噌様を攻めて欲しい)
綱宮泡にとっては、丁度いいカップリングのスパイスに過ぎなかった。
「ああもう!なんで分からないかな!」
「こうなったら――」
「「綱宮さんはどっちが好き!?」」
そうして男子2人のいきなりの問いかけに対しても、
「味噌とんこつラーメンというのが、ありますわ」
(味噌×とんこつはかなり王道のカップリング!!)
「2つは争うのではなく調和するもの」
(ああ、なんてよき2人なのでしょう)
「是非、貴方方も食べてみて下さい」
(カップリングを直接味わえるなんて神!)
紅茶を嗜みながらも、華麗に、大胆に、優雅に、推し活を進めるのであった。
「「は、はい……」」
その様子にクラスメイト全員が息を呑み、綱宮泡を静かに見つめた。
「では、皆様。もうすぐ授業の時間ですわ」
(歴史の授業は推しカプが、多い!多すぎる!早く準備をしなくては……)
その言葉に皆頷き、一斉に授業の準備に入った。
「味噌とんこつか、そういうのもあるんだな」
「調べて今度行ってみようぜ」
そうして、推しの布教に成功した綱宮泡は、
(――尊い)
ゆったり、全てに対して微笑むのであった。