ダークラング
旅路は過酷だった。
土の道には盗賊がはびこり、孤独な旅人を呑み込むように待ち構えていた。
シエルは歩き続けた。目は常に周囲を探り、思考はまだ見ぬ未来へと向けられていた。
ついにダークラングが姿を現した。
埃と貧困の中に築かれた都市。
崩れかけた建物、ちらつく看板の光、詐欺師や盗人であふれる市場。
ここでは金が濁った川のように流れ、誰もがその中へ手を突っ込もうとしていた。
シエルの鼓動は高鳴った。
この場所は危険に満ちている。だが同時に、機会も息づいていた。
――新しい遊び場だ。と彼は心の中で呟いた。
煙の立ち込める酒場で、彼は最初の出会いを果たした。
男たちはカードをし、別の者たちは裏の闘技に賭けていた。
シエルは静かに隅の席に腰を下ろした。まだ動く時ではない。まだ。
だがすぐに、しわがれた声が彼を呼び止めた。
――おい、ガキ。ここで隠れられると思ったか?
顔に大きな傷を持つ巨漢が近づいてきた。その背後には二人の手下。
――サンウィから来たんだとよ。モルトを潰したのはお前か?
シエルは表情を崩さず答えた。
――モルトを潰したのはモルト自身だ。
男たちは大笑いした。
――口は達者だな、ガキ。だがここじゃ言葉だけじゃ足りねぇ。ここじゃ、血が流れても立っていられるかを見せてもらうんだ。
巨漢はナイフを卓上に置き、木に突き立てた。
――ダークラングで生きたいなら……生き残れるって証明しろ。
シエルは刃を見下ろした。鼓動は速くなる。だがその思考は澄み切っていた。
――すべては計算だ。恐怖すら……武器になる。