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相互異世界譚〜帝都と妖都とその考察〜  作者: なこまる
[妖怪だった]
4/5

妖怪の店




「おやお前さん、人現界の物を随分いっぱい持ってるじゃないかい」

 お婆さんは俺を見て、驚いた後に目を輝かせた。商売人の顔だ。

「どれを売るんだい?」

 喫茶店じゃないんかい! と、口に出しそうになって、慌てて口を塞ぐ。


〈黙り込んで変な娘だね。それに落ちて来た物を拾ったにしちゃ、多過ぎるね。落ち人か? それなら、拾った妖怪のモノだ〉


 いつものように、声が頭に響く。

 これはこのお婆さんが思った事、心の声とでも言うのだろうか。

 超能力だと思っていたけど、妖怪さとりの能力だったわけだよな。

 いや、ある意味超能力?


 それにしても、妖怪の心の声も聞こえるのか。

 そう考えると逆に、あの女の心の声はなぜ聞こえなかったのか……。

 まぁ、今更だな。調べようがない。



「何か困っているなら相談に乗るよ?」

 お婆さんが優しそうに見える笑顔を浮かべ、殊更親切そうに振る舞う。

 心の声が聞こえてなかったら、騙されて……いや、無いか。

 本当の親切でも、絶対に裏があると疑っただろうな。


「これを売りたい」

 俺はポケットの中から、飲み物を買う為に常に入れてある小銭をカウンターに置いた。

 200円。

「んん? なんだい、これは。一本(いっぽん)蹈鞴(だたら)の作った(かね)じゃないね。柄も違うじゃないかい」


〈100と書いてあるが、蹈鞴(たたら)(いん)が無いから(にせ)(がね)だね。いや、もしやこれは人現界の金かい? それなら古物商に持ち込めばイイ金になるね〉


「子供の玩具(おもちゃ)かい? それなら一個10円で買ってやろう」

 お婆さん改めクソババアが、親切ごかして笑顔で人の金を騙し取ろうとしてやがる。

 タタラインって何だ?

 まぁ良い。古物商に行けば良いのか。

 その情報が手に入っただけでも、この店に入った価値はあったな。


「他の店も見てみるよ」

 俺はカウンターの上に置いてあった200円を掴み、(きびす)を返して店を出た。

 後ろからクソババアの声が聞こえてきたが、勿論振り返りはしなかった。




 【古物商】【こぶつしよう】

 商店街の端に、目当ての店はあった。

 ここに来て、初めて漢字を見たな。

 入口扉の上に掲げてあるひらがなの看板の方が大きく、色が()せてて古い感じがする。

 入口横にある漢字の方は、プラスチック製に見えるな。この街の中では、少し浮いている。


 プラスチック製の看板に触れると、ピカッと明かりが灯り、看板が明るく光った。

 センサーライトの応用なのか、無駄に高性能だ。

 街並みに合わせて入口扉が木製の引き戸なので、尚更この看板だけが浮いている。


 そして案の定、触れてもいないのに引き戸が開いた。

「いらっしゃいませ~」

 低いけど妙に明るい声に迎えられ、店内に入る。

 狭い店内は、鍵付きのガラスケースが並べられており、中身は俺には見覚えのある物ばかり。

 シャーペンや消しゴムまで鍵付きのガラスケースの中だ。


 店内を見回した。人? 妖怪? とにかく生物の気配は無い。

 受付兼会計用であろうカウンターのすぐ脇には、昔懐かしの人体模型が置いてあった。都市伝説では夜中に学校内を走り回るアレだ。

 カウンター自体は無人で、あの「いらっしゃいませ」の声の主はどこなのか、とカウンターに近付いた。

 中でしゃがんで作業でもしているのかと思ったからだ。


 カウンターに乗り出すように中を見たが、誰も居ない。

 と、突然首? 肩? に固い物をぶつけられた。

「Hey, bro」

 テンション高く、妙に良い発音で声を掛けられ、声の主へと顔を向ける。


 そこにいたのは、さっきまでカウンター脇に立っていた人体模型だった。




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