表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相互異世界譚〜帝都と妖都とその考察〜  作者: なこまる
[妖怪だった]
3/5

妖怪の街




 とりあえず、今日の寝床を確保しないと、と周りを見回す。

「遊郭?」

 それがこの街に対して俺が持った第一印象だ。

 道祖神が在る場所は、大きな建物の横だったので木の塀があった。

 道路を挟んで同じような塀が並んでいる。

 家の裏手っぽいな、と思ったので表側に回ろうと角を曲がり……驚いた。


 木の塀? 枠? が赤い。

 個人宅ではなく、明らかに店っぽい作りで、煌々と灯りが点いているのに、仄暗い雰囲気。

 派手なのに、陰鬱。


 え? 何この気持ち悪い……こう、矛盾だらけの……しっくりくる空間。


 コンクリートのビルが建ち並ぶ整然とした街よりも、この矛盾だらけのおかしな空気感が落ち着く。

 そういえば俺、川越の街とか好きだったわ。

 ここまで派手ではないけど、今と昔が混在する亜空間っぽい雰囲気が妙に好きだった。




「あぁ、そっか。俺、本当に妖怪なんだ」

 ストン、と納得がいった。

 自分を理解してもらえない、世界から浮いている異端な存在。

 小さい頃から感じていた違和感。


 あぁ、ここでは楽に呼吸が出来る。

 不安よりもワクワクとする高揚感の方が強い。


 親族……いや、両親への執着が全くと言って良いほど無かった。

 心が読めてしまい、おそらく親が子供に隠している『鬱陶しい』や『邪魔』という否定的な気持ちも、全て知ってしまった事が原因だった。


 子育てにストレスや、子供への不満など有って当たり前。

 それが理解出来る年齢になる頃には、俺の性格は捻くれており、諦めと共に全てを達観出来るようになっていた。



 なのに、それなのに、いつぶりだろう?

 楽しい。

 謎のおかしな街に、独り放り出されたのに、開放感で俺は走り出していた。

「おぉ! 桜だけじゃなく、金木犀が咲いてる」

 甘い香りがするので匂いの元を探すと、オレンジ色の小花を付けた金木犀だった。

 その横の店には【おめんや】の看板が出ているが、店の中は見えない。


 ここは商店街のようだな。

【ちゆうかりようり】【おもちやや】【きもの】【ようそう】等々……。

 看板の文字が読みにくいのは、ご愛嬌かな。一緒に絵が描いてあるから判るしな。

 それから、俺には読めない文字が有るのは……妖怪文字?

 ミミズがのたくった跡に、子供が悪戯描きしたみたいだ。



「ナニをシテイルの?」

 ん? 話し掛けられた?

「いや、別に。看板を見てて……?」

 後ろを振り返ると……誰も居ない。

「それなら、ドいて」

 声がしたのは下からで……視線を下げる。

「うぉあ!」

 顔の真ん中に目が一つしかない子供が立っていた。


 俺を避けて通るという選択は無いのか? と思いつつも、横にずれて道を譲る。

 一つ目小僧は、真っ直ぐ歩いて行く。

 まるで線の上を歩くように。

 何かに導かれている、のかもしれない。



「入るのかい?」

 避けた先が店先だったので、自動扉が開いていた。

 どう見ても木で出来ている引き戸なのに、センサーも無いのに、自動扉。

「あ、いえ、はい」

 店内を見たら、喫茶店っぽかった。


 店内に一歩足を踏み入れ、声を掛けてきたお婆さんを見て、店内を見て……妖怪だらけ。凄ぇな、リアルお化け屋敷。

 頭の整理もしたいし、喉も乾いた。

 ちょっと何か軽く食べて、コーヒーでも飲むか。


「あ、お金」

 大事な事に気が付いた。

 財布の中身は、服と本を買おうと思って入れておいた万札がある。

 けど、人間のお金が使えるのか?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ