5-5:独善が抱く憤怒
───嗚呼、そうだ。
私はあの時、思い知ったではないか。
「・・・もういいわ。下がりなさい」
「はっ、失礼します」
そして、強く記憶に残したはずではないのか?
「・・・・・」
自由に与する「虚無」が、どれだけの脅威となりうるか。
この一点において、あの忌まわしき暴君よりも留意すべき事柄はなかったはずだろう?
「───チイッ!!!」
私は大きく舌打ちをしながら、玉座の一部を叩き割る。
やはりこんなもの、この私の思考を狭める要因にしかならんゴミクズだ。
「・・・・・フー」
呼吸が乱れる。
頭が痛い。
気分が悪い。
あの生意気な餓鬼を、今すぐにぶち殺してしまいたい。
「・・・こんなッ」
こんなことが、あってはならない。
私は王だ。
世界を支配し、全てを在るべき姿へと帰す。
それこそ、真なる正義に他ならない。
「・・・・・ッハハハハハハ」
ふざけるな
ふざけるなふざけるなふざけるな
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな
「ふ゛さ゛け゛る゛な゛あ゛ッ゛! ! ! !」
私の右腕を殺した?
転生して一ヶ月ぽっちの餓鬼が?
虚無の名を冠しているだけのくせに?
独善の寵愛を一身に受けたこの私に対して?
こんなクソカス賃貸未満の価値すら怪しい貧国のために?
「ッ゛さ゛け゛ん゛な゛よ゛ク゛ソ゛か゛! ! ! !」
殺す。
ぶっ殺す。
絶対に殺す。
確実に
正確に
的確に
相応に
丹念に
抜かりなく殺す。
私の持てる最強の布陣を以て。
あの餓鬼が守ろうとする全てを破壊して。
あの目障りな正義気取りもついでにぶち殺して。
私こそ、神々の寵愛を受けるに相応しいと。
この世界に、理解させてやる。
「・・・待っていろ。虚無の寵愛者」
私を敵に回したことを、地獄の底で後悔するといい。