4-2:狡猾
彼の口から出る言葉は、一体どれだけの価値があるだろう。
きっと、それは誰にも計り知れない。
言うなれば、普通、この状況は有り得ない。
彼らが放ったのは、非戦闘状態の人間へ向けた、即着弾型の爆発魔法による執拗な爆撃。
それにより、見事に大広間より上の階は消し飛び、そこに居る人間も全員消し飛ばせるはずだった。
しかし、結果はどうだろう。
全員を殺すために放った攻撃だというのに、攻撃が終わってみれば、そのうちの全員が生きているではないか。
ここまで難なく対処してきたグレイアは言わずもがな、彼らがオマケとして狙っていた合縁の寵愛者達も無傷で生き延び───挙句の果てには、爆発魔法をモロに受けたはずの女が、まさか直立不動で自分たちのことを見ているなど、彼らにとっては本当に信じ難い光景だった。
「・・・・・」
充満していた煙はティアが放出した黄金の魔力が放つ圧力によって消失し、周囲の床は焼け焦げたまま。
加えて、その場には防御魔法を展開した痕跡もなく、爆発魔法が直撃したことはどう見たって明らか。
だが、彼女は平気な顔をして立っている。
立って、彼らを見ている。
「・・・驚いた」
そして、彼は───狡猾の寵愛者は、記憶の中の情報を引っ張り出し、己が抱いた違和感を回収する。
黄金に輝き迸る魔力を見ながら、彼は、気付いたのだ。
先程までは単なる虚無の寵愛者の取り巻きだと思っていた存在が、虚無の寵愛者と同じか、それ以上に厄介な存在だということに。
「まさか、自由の系譜がこんなことろに・・・」
自由の系譜。
かつて最強の転生者として君臨した、自由の寵愛者を源流とする最強の血統。
神に祝福された強さを持ちながら、神に見放された運命を持つ、世界の奔流の中心に位置する存在。
彼らが所属する「善き御心の失楽園」の創設者である独善の寵愛者が滅ぼし損ねた、自由と虚無の眼差しを受ける一族。
(・・・独善の一派)
そして、敵が自分の正体に気がついたことにより、彼女もまた、相対する敵の所属を確実に的中させている。
彼女は自らの視線の先に浮かぶ黒髪の青年、金髪ロングの僧侶、黒髪の鼠獣人、紺髪の狼獣人を見つめながら、どう行動しようかと悩む。
べつに、彼女からしてみれば、相手が先だろうが自分が先だろうが構わない。
どちらにせよ、向こうの攻撃は当たらないのだから。
「・・・まあ、いい。得体は知れないが、抹殺対象であることに変わりは無い。嬢ちゃんには悪いが───」
(・・・?)
取り巻きが左右に避け、その中心に位置する狡猾が、何か適当な台詞を吐き出しながら右手のひらをティアの方へ向けて魔力を溜める。
瞬間、彼女が感じる違和感。
だが、構わないと───彼女が仁王立ちのまま構えた数秒後、魔法は放たれる。
「───死んでもらう!」
狡猾の寵愛者の手のひらを飛び出した白い光弾は、弓矢ほどの速度で射出された後、ティアの眼前へ迫ると───瞬時に首をひねって回避した彼女の背後に着弾。
傍から見れば、この程度で人一人が倒せるかと、そう思うかもしれない。
だが、ここでティアは重要なことに気がつく。
(・・・体が動かせない)
回避はした。
自己証明の力によって、回避することはできた。
だが、自力で動くことはできず───固有武器すら、呼び出すことができない。
ゆえに、動かせない。
体が動かないのではなく、自分の力で動かすことができないのだ。
「・・・おかしいな。直撃するはずだが」
上空で首をかしげる狡猾の寵愛者。
ここで彼女の自動回避に気が付かないのは、果たして鈍感なのか、それともクソほど間抜けというだけなのか。
事実が如何にせよ、直立不動のまま動けない彼女は、その分だけ余ったリソースを思考にまわし、今の自分に何が起こっているのかを思考してみた。
すると存外、答えはすぐ近くにあったのだ。
(ハーピィと同じ、声の攻撃・・・)
彼女の推察は殆ど正解であった。
というのも、この狡猾の寵愛者の自己証明は「特定の言葉を発した際、それを耳にした任意の人間に行動不能を付与する」という代物。
そして、この「特定の言葉」というのは「謝罪の言葉」であり───それ即ち、先程の彼が発した「嬢ちゃんには悪いが───」という台詞を聞いた時点で、彼女は自らの意思では行動ができなくなっていた。
だが、彼女には自動回避ができる自己証明がある。
こんな初見殺しが相手でも、少なくとも負けることは無い。
「どんな手品を使ったのか・・・まあいい。今度こそ、確実な手段で仕留めれば良いというだけだ」
だが、彼らは気付かない。
否、気付くわけがない。
ゆえに、ただ単に安直な手段で、彼女を殺害しようと試みるのみ。
「ルーガとフリートは固有武器を使って女を攻撃、キエルは俺の傍で2人を援護だ。速攻で済ませろ!」
「了解っと」
「了解!」
「分かりました!」
的確な命令と反応、だが遅い。
ティアからしてみれば、何をするにも相手に隙を与えないように動いている自分達と比べて、相手の何もかもが遅すぎる。
・・・とはいえ、グレイアと彼女の連携は、グレイアの的確な状況判断能力および作戦立案能力と、馬鹿みたいな精度の推察能力に加えて、ティア自身の自己証明があるからこそ成り立つ技。
普通にやろうとすれば、それこそ何年どころではないタッグ歴が必要になることだろう。
こればかりは、転生者云々の話ではなく───出会ってからたったの一ヶ月弱で互いの性質をほぼ完璧に理解した二人が、他に類を見ないほど異常なだけである。
「・・・・・なんっ!?」
「まさか、本当に避けてるなんてね・・・!」
しかし、相手とて伊達に転生者の仲間をやっていない。
一般的な視点で見れば、現在進行形でティアに斬りかかっている獣人二人の連携は、非常に洗練されたものだ。
狼の獣人が己の体格を活かしてねじ伏せるような攻撃を行い、それによって生じた隙を、鼠の獣人が細かく刈り取っていく。
距離を離せば司令塔と僧侶からの遠距離攻撃が飛んでくるため、一人では対処が厳しい───はず。
だが、無論、ティアは全ての攻撃を軽々と避け、無表情のまま時間稼ぎに勤しんでいる。
流石にこの状況を放っておく狡猾の寵愛者ではない。
仮にも強者に分類される存在なのだ。
こんな状況、明らかな罠であることは普通に理解できるだろう。
(なんだ? 何を狙っている・・・?)
だが、彼は気付かない。
自らが展開している魔力探知の外側に居るかもしれないと───己の探知の範囲の、更に上に居るかもしれないとさえ、思わない。
そして、彼は頼る。
自らの能力を。
最強の初見殺したる、その能力を。
(・・・いや、いい。これで済むことだ)
言うなれば、これは能力に頼りきったがゆえの怠慢である。
己の身で戦うことをせず、能力に頼り、安直に馬鹿の一つ覚えをし続けていた阿呆の末路。
「すぅー・・・・っ」
一応、彼の自己証明にはオマケの効果がある。
声を張り上げることによって効果範囲が広がることは言わずもがな、彼の能力は、万が一にでも能力への抵抗がある存在が現れた時のための、ちょっとしたオマケ。
それは、謝罪の語気を強めると───能力の効果が増す、というもの。
抵抗への貫通や威圧感の増大など、色々な効果があるオマケ。
(炙り出してやる。貴様の位置を───)
だが、べつに今は関係ない。
なぜなら、彼の探知魔法の範囲外にいたグレイアが、凄まじい速度で拳を構えながら落下してきて───今しがた、彼の前に浮いている僧侶を巻き込んで、大広間の床に着地したからだ。
まさに脳筋、力こそパワー。
反応する間もなく巻き込まれた僧侶は、グレイアが床を貫通しないようにと展開したバリアに衝突し、衝撃によって圧死。
まるで落ちてきた岩に潰されたスイカのように、凄まじい量の肉片を辺りに撒き散らして死亡した。
「───は」
無論、困惑する狡猾の寵愛者。
しかし、そんなことをしている暇はないことに気がつくまで、彼は数秒を要する。
「え・・・がはっ!?」
「フリート!」
瞬間、グレイアの脚が狼の獣人の横腹に突き刺さる。
すると、彼はそのまま重心をぴたりと捉えた一撃で狼の獣人をぶっ飛ばし、ぶっ飛んだ先で放出型の近距離魔法を放つことで、瞬時に一人を無力化。
プスプスと煙を上げて黒くなった狼の獣人を横目に、彼は固有武器を取り出して彼女の首を躊躇無く一突きし、とどめを刺した。
そして、ここでやっと狡猾の寵愛者が動き出す。
「てめえ! 悪いがなあ───」
語気と声量を強め、確実な行動不能を狙った一声。
どんなに抵抗を持っていようと、少なくとも一分は行動不能に陥らせることができる一声。
「フリートの仇ッ!」
そこへ襲いかかる、鼠の獣人。
炎の魔力が付与された鉤爪を振るい、今ここで虚無の寵愛者の身体をズタズタに引き裂いてやると───そう決意した、攻撃。
だが、彼女の攻撃は無惨にも空ぶった。
行動が安直すぎて、普通に瞬間移動で回避されたのだ。
「えっ・・・」
最後に、力が抜けたがゆえに間抜けな声を上げた彼女の首を、グレイアが瞬時に跳ね飛ばす。
「・・・・・」
ゴトンと音を立てて落ち、煤けた床の上をゴロリと転がる鼠の獣人の首。
グレイアはその首を一瞥すると、すぐに視線を狡猾の寵愛者に向けた。
「な・・・あ・・・っ・・・」
固まり、震える狡猾の寵愛者。
今の彼を支配しているのは、果たして恐怖か、憤怒か、それとも、また別の感情か。
しかし、それらを理解する暇も、整理する暇もなく───グレイアからの攻撃は飛んでくる。
「・・・・・」
が、グレイアの飛ばした魔法は狡猾の寵愛者の肉体をすり抜け、空の彼方へと直進していく。
すると、魔法が貫通した狡猾の寵愛者の体はデジタル風に歪み、ビビッと音を立てながら消滅した。
(・・・そこだけは周到なんだな。終わってるわホント)
呆れ、ため息をつくグレイア。
最初から狡猾だった訳でも無く、襲撃の仕掛け方はなんの捻りもない不意打ちで、最後には仲間を残して逃亡。
彼の脳裏に一人の転生者がチラつくが、あちらは神に操られた成れの果てであるため、これ以上の掘り返しはよくないと気持ちを留める。
「・・・ん」
そんなこんなで思考を回しているグレイアの視界に、一つのマークとテキストが現れた。
『狡猾の寵愛者の位置を特定しました。HUDに表示しています』
それは、狡猾の寵愛者の自己証明を無効化するために身体機能を削っていたグレイアのための、ニアによるサポートがもたらした探知の報告。
彼自身が見ている探知の結果と合わせてみると、狡猾の寵愛者は、都からの避難民の中に紛れているのが把握できた。
加えて、対象の位置と魔力の反応さえ把握できていれば、グレイアの射程範囲内である。
「ふう・・・」
短剣を振りかぶり、魔力探知とHUDの情報から概算した位置への瞬間移動を行うと同時に刃を振るう。
探知と転移の位置に間違いはなく、確実に狡猾の寵愛者を捉えることが出来ている・・・はず、だったのだが、流石に狡猾の名は伊達ではなかった。
グレイアが振るった刃は狡猾の寵愛者の肉体を貫通して空を斬り、再び異音を立てて偽りの肉体を消失させる。
(かかったな!)
この体は無論、罠である。
というのも、ここまで彼らがしてきていた妨害とは本来、他でもない虚無の寵愛者を都へ到達させないために行った作戦であった。
しかし、グレイアはそれらを難なく乗り越え、襲撃から一時間足らずで魔物を殲滅し、切り札としていたはずの軍勢の残滓を軽々と破壊。
ここまで来れば、殆ど不可能だと理解していても、自ずと候補へと上がってくるわけである。
虚無の寵愛者が「とてつもない精度の転移魔法を使用できる可能性」が。
「悪いがくたばりやがれ! 虚無ッ!」
幸いにも予想は的中し、不意打ちを仕掛けることが出来たのは良いものの───しかし、拘束を目的とした謝罪の言葉を放つことで、一瞬だけだが猶予を与えてしまったのが悪かった。
残酷にも、彼が右手に込めていた炎の魔力は空振り、グレイアの小さな肉体が懐に入ってくることを許してしまう。
(ッ! しまっ・・・)
ついさっき、謝罪の言葉が効かないのが確認済みであったことを、彼はすっかり忘れていた。
そして、対応しようと身体を動かした瞬間、グレイアの頭突きが彼の顔面に突き刺さる。
「へぶっ!」
間抜けな声を上げて仰け反ったところで、グレイアは固有武器を収納しながら拳を振りかぶって彼の顔面に拳を一発ぶちかまし、人混みから距離を離すために圧力魔法を放ってから瞬間移動魔法を起動。
魔力が籠った拳と圧力魔法が合わさったエネルギーによってぶっ飛んでいく狡猾の寵愛者に、正確すぎるコントロールの瞬間移動で追いつくと、そのまま腹に一発、横腹に一発、みぞおちに一発を入れ、また瞬間移動魔法を起動。
今度は移動する狡猾の寵愛者の軌道上に出現し、間髪入れずに拳を放つ。
「ちいっ・・・まだだあッ!!!」
だが、狡猾の寵愛者とて、やられっぱなしではいられない。
ぶっ飛ばされる際の運動エネルギーを利用し、身体強化が中途半端でも威力が増大するように工夫を行い───瞬時に姿勢を立て直して反転すると、そのまま右の拳に魔力を乗せて前へと突き出す。
それと同じタイミングでグレイアの拳も突き出されることで拳同士は魔力が拮抗した際に生じるスパークを走らせながら、凄まじい音を立てて衝突した。
「うおあああああッ!!!」
「・・・・・」
迸る魔力と、拮抗するエネルギー。
魔力の拮抗が強まることでスパークも力を増し、地面を割る。
さらには互いの魔力が大きく強まることにより、耐えられなくなった地面が抉れ、クレーターを形成していく。
様々な要因から轟音が鳴り響き、相対する全てが光り輝いている。
そんな中、先に動いたのはグレイアの方だった。
「うおわっ!?」
乱れる魔力の奔流に影響されることなく、グレイアは再び瞬間移動で位置を変え、彼の真後ろから攻撃しようと固有武器を取り出す。
だが、ほんの少し、固有武器を取り出す際に生まれた少しの隙。
それを、彼は突いてくる。
「後ろだ───」
しかし、それすらもグレイアの戦術のうちだった。
狡猾の寵愛者が反転しつつ拳を振るったその瞬間、グレイアの脚が彼の腹にめり込む。
膝を曲げ、二段目の蹴りが入ったところで、彼は姿勢を乱されたままの状態で五十メートルほど吹き飛ばされ、姿勢を建て直しきれずに最後はゴロゴロと転がった。
「ごほっ・・・ああクソッ・・・」
ぐらりと立ち上がり、魔力を整えて再び放出したところで、狡猾の寵愛者は信じ難いものを目にする。
「・・・・・ちくしょう」
それは、目測にして約三十メートルはあるであろう巨大な白銀色の光弾であった。
空中に浮かぶグレイアが両手を上げた先に出現している光弾は、まるで至近距離で見た際の太陽のような模様が蠢いており、明らかな魔力の密度を感じさせる。
「消し飛べ。狡猾・・・!」
グレイアが光弾を右手に持ち変え、言葉と共に振り下ろす。
普通に考えて、ここからの生存は絶望的。
だが、彼は諦めなかった。
「ほざくな虚無ッ!」
右手に魔力を集中し、圧縮。
瞬時にバスケットボールほどの大きさの炎の塊を生成した彼は、それを全力で、彼の方へ迫ってくる光弾へと投げつけた。
「ぐ・・・くくっ・・・・・!」
しかし、殆ど焼け石に水。
多少ばかり失速させることはできているものの、依然として光弾が止まることはなく、着実に彼へと迫る。
そこで彼は左手にも魔力を集中し、同じことをすると───ふたたび出現した炎の塊を、やはり光弾へと全力で投げつけていく。
「く・・・あああッ・・・!」
圧力に押しつぶされそうになりながらも、必死に耐える狡猾の寵愛者。
光弾は依然として止まることはないし、エネルギーが分散して小さくなっていく、なんてことも勿論ない。
それでも、彼は負ける訳にはいかない。
この攻撃で死ぬ訳にはいかない。
(まずい・・・! ここで消し飛ばされでもしたら・・・!)
彼のもうひとつの自己証明は、クールダウン付きで死を無効化できるというもの。
だが、デメリットとして一度発動する事に延びていく時間制限があり、効果も「復活」はするものの「再生」はしない。
つまり、今ここでグレイアの光弾をモロにくらって消し飛んだ時点で、彼は死んでしまうわけだ。
(・・・なんだ、これは・・・・・!)
そしてここで、ついにグレイアは痺れを切らした。
すると、同じタイミングで狡猾の寵愛者にかかる圧力がさらに増す。
「ぐあっ・・・がああっ・・・」
一体何が起こったのか、それは単純明快。
グレイアの足りない魔力をニアが補うことによって、無駄に時間をかけることなく、圧倒的な魔力圧力によって押し切る作戦をとったのだ。
「こ・・・・・の・・・・・ッ!」
これにより、今まで辛うじて耐えていた狡猾の寵愛者の魔法は勢いを弱めていき、遂には耐えきれず消失。
苦し紛れに防御魔法も展開するが、長くは持たない。
「や・・・べえ・・・!」
展開されたバリアは、魔力の圧力によってヒビが入る間もなく砕け散り、無慈悲に迫る光弾が彼の腕を飲み込んでいく。
必死に抵抗しようとする彼に構わず、光弾は進んでいき───そのまま、狡猾の寵愛者の肉体すべてを飲み込んだ。
「お・・・・・ああ・・・・・」
あっさりと攻撃をくらい、肉体が消滅していく中で、狡猾の寵愛者は思考を回すことすら許されないまま、ただただ痛みに喘いで消滅していく。
その、永遠とも思える苦痛の時間が終わるのは───魔法を放ったグレイアがようやく見切りをつけ、光弾を起爆させて巨大な爆発を引き起こした瞬間だった。
「・・・・・」
目が眩むほどの輝きをじっと見つめながら、グレイアは纏っていた魔力を解き、身体操作を解除。
完全な臨戦態勢から通常状態へと移行し、爆発が終わるのを待ってから地面へと降下した。
『狡猾の寵愛者の消滅を確認。マスター、お疲れ様でした』
「・・・・・」
最後に、ニアからの報告が届いて、この戦いは終わり。
いつもより派手ではあったが、結局は苦戦せずに勝利した。
「・・・まだ、終わってないだろ」
しかし、グレイアはまだ余韻には浸れない。
座りそうになった所を耐えた彼は、そのまま瞬間移動魔法で都まで転移し、この場を去る。
「─────」
最終的に残ったのは、巨大なクレーターが形成された平原のみ。
戦いを観戦していた民間人達も、結局は何が起こったのか理解できないままだ。
果たして、今朝を皮切りに始まった襲撃は、一体、何を最後に終わるのだろうか。
きっと、それは───誰にも予想ができないことだろう。
駆け足になってしまい、申し訳ないです。
因みに、狡猾の寵愛者である彼の能力には、ちょっとした小ネタというか狡い要素が他にもありまして。
もう殺しちゃったんで供養するのですが、あんまり長すぎるのもアレなので一つだけ。
彼の「謝罪をトリガーにした肉体操作の阻害」が及ぶ範囲は、正確に表記すると「完全に無音の状態で声を発し際に届く距離」であるため、ある程度の喧騒の中では対象に一切気が付かれることなく動きを止めることが可能です。
そして、それを使ったのが「3-5:霧の中」でのワンシーンですね。
まあ、どうしても語気や声量は小さくなってしまうので拘束能力は弱くなってしまいますが、正体を知られたくなかったり、相手に恐怖を効果的に与えることが出来たりと・・・・・そこそこ使い道はある能力です。
てことで、今回の長ったらしい後書きは以上です。
ここまでキッチリ読んでくれた人、本当にありがとうございました。
次回は少し、せっかちに行きます。