3-5:霧の中
「はあっ・・・はあっ・・・・・」
なんだ。なんなんだ。
なんなんだこれは。
「タケ! どこ行ってる・・・・・! クソッ!」
「おい・・・そっちは───」
仲間は何人やられた?
いや、それ以前に俺は本当に五体満足なのか?
目の前にいる魔物共は本物なのか? 実体は?
これは一体、誰の仕業なんだ───
「こンのバカ! 早く目ぇ覚ませ!」
「・・・っ!」
ふと、我に返る。
仲間にビンタをされて、ようやく混乱から目を覚ますことが出来た。
「お前が最後の班長なんだよ! さっさと気ィ取り直せ! これ以上仲間ァ失ってたま───」
「ッ!」
荒々しくも優しい、いつものアキラの手を、急いで取ろうとしたその時、こいつの頭は消し飛んだ。
俺は驚きながらも魔力を解放し、ありったけの身体強化を用いて無理な姿勢から全力で立ち上がり、射線から逃れようと周囲を見回す。
すると、視界の端にちらりと仲間が見えた。
「っ! 班長!」
迫り来る悪寒から、もう既に魔物は背後に迫っていると察した俺は、派手にすっ転ぶのを覚悟で発動した瞬間移動魔法によって、仲間達が集まっている場所へと滑り込む。
どしゃりと荒く着地し、ざっと見回してみると、どうやら俺を含め、仲間は3人だけ生き残っていたらしい。
「散開は命取りだ・・・! あそこの壁に向かって走れ!」
俺は仲間にそう命令しつつ、視界に写った建物の壁に向かって全力で走り出す。
足音から仲間や敵も着いてきていることが把握出来たため、俺は仲間が退避できるスペースを構築するために手前で立ち止まり、翻して刃を構える。
「うおおおおおおッ!!!」
雄叫びを上げながら刃を振るい、群れから出てきた魔物を4,5体ほどなぎ倒したところで、群れの中からひと際すばしっこいヤツが迫ってくるのが見えた俺は刃を構えて迎撃の体制をとった。
両腕が刃のように変形している人型の魔物は俺に向かって一直線で突撃してきたかと思えば、まるで人間のような太刀筋で俺の首を目掛けて横薙ぎを仕掛けてくる。
俺はそれを受け止め、仲間に背中を預け、この強敵に集中しようとした・・・が、認識が甘かったようだ。
「目ぇ・・・覚ませって・・・・・ッ!」
「・・・・・!」
目の前の魔物から、アキラの声がした。
俺の目の前で死んだはずの、アキラの声が。
「くっ・・・があああああああああッ!!!!!」
俺は動揺したが、それ以上に許せなかった。
魔物ごときが、俺の親友の声で、俺の親友を模倣しようなどと───人間を舐め腐っているにも程がある、と。
俺はめいっぱい力を込めた足蹴りを魔物の腹部に決め、群れのど真ん中へとクズ魔物ぶっ飛ばした。
そして、その隙をついて後退し、再び仲間に司令が出せる位置にまで後退する。
「壁に背を付けろ・・・! 屋根の下に行けば、ある程度は持つ!」
仲間にそう指示し、空中からの攻撃を避けるために屋根の下へ移動した後、壁に体重を預けようとした、その時だった。
「は───」
俺の体は壁をするりと抜け、間抜けにも地面に倒れたのだ。
「───???」
多少ばかり背中が痛いが、それ以上に自分が、壁をすりぬけたことに違和感を激しく覚えている。
だが、今は起き上がらなければ───
「・・・っ!?」
起きあがれない。
というよりも、自分のからだを指一本動かすことが出きない。
「っ・・・あっ・・・・・ッ!!!」
動かない。
何ぜだ?
何をされた?
攻撃か?
それとも、あのま物か?
いや、それよりも───
「や・・・っと・・・見つけたぜぇ」
「!」
なんだ!?
この声のあるじは、いまさっき俺のめの前で死んだはず・・・
「タケを殺しやがった・・・クソ魔物がよォ・・・・・!」
いや、その姿すらも視界にうつっている。
いや、それより、俺をころしたとはどういうことだ?
いや、どうしてそれをおれを見ながらいっている?
「くたばり、やがれ・・・!」
まて、こえがでない。
そのけんで、なにを───